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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『探偵・日暮旅人の探し物』シリーズ 山口 幸三郎 

探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)
(2010/09/25)
山口 幸三郎

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保育士の山本陽子は、保護者の帰りの遅い百代灯衣の面倒を見たことから、名字の違う不思議な父娘と巡り合う。
父親の日暮旅人は奇妙な能力の持ち主で、探し物専門の探偵事務所を営んでいた。
澄んだ哀しい目をした青年・旅人と、人形のように美しく大人びた娘・灯衣。
彼らに興味を惹かれた陽子は事務所をたびたび訪れるようになり、旅人の目に見えないものが視える能力と、彼にかかわる世界に足を踏み入れることに——。

それは、目には決して見えない「愛」を探し求める探偵・日暮旅人の物語。

『日暮旅人』シリーズ、ファーストシーズン全4巻。
この三連休で読み始めて一巻目ではまり込み、気がついたら四巻目まで全部読んじゃってました。
続き物の本をこんなに一気読みするのひさしぶりだな……すごく充実したときをすごせました。どっぷりひたってしまいました。

ふとしたことからこのシリーズの表紙を目にして、表紙イラストの旅人さんに一目惚れしたのが、読みはじめたきっかけ。
この表紙で美しく洗練されたひとつの世界として存在していて、雰囲気がすごくよい。
特に一冊目の『探し物』と四冊目の『贈り物』が良いですね。
旅人さんの身ごなしが端正で、とくに瞳が秀逸だと思うのです。
灯衣ちゃんの赤いワンピース姿も、可愛いっ!

お話も良かったです。
視覚以外の、音、におい、味、感触、重さ、痛み、それらの感覚がすべて失われていて、その代わりにそのすべてを「視覚」としてとらえる、人には見えない感情も視える、かなり特殊な能力の持ち主・旅人さん。
優しくおだやかでお人好しな旅人さんの特殊能力を生かして、人々の悩み事を解決していくほのぼのミステリー……と最初は思っていたのですが、確かにそれもこの物語の一面だったのですが、全然違った。
読んでいくごとに、旅人さんがふつうの感覚を失った過去にまつわるあれこれは、悲惨で重苦しくて。修羅を潜り抜けてきた旅人さんも、ときどきぞっとするほど黒くて。
それでも彼の近くの人々、血のつながりはなくても「家族」といって差し支えない皆の存在が、闇にかかわる旅人の身を真摯に案じる彼らの存在が、あたたかくて優しくて、きゅっとしました。

黒い面も持ちつつも、困っている人は放っておけない優しい旅人さんが、危ういバランスも相まって、本当に魅力的なんですよね。
あれです。私、澄んだ哀しい瞳の持ち主に弱いんです。きっと。『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』のクリスとか。

お話のヒロイン・若き保育士の陽子さんも、明るく良い意味で普通な女の人で、読んでいくごとに好きでした。
旅人さんと陽子さんの間のもどかしい関係も、読みどころでした。
周りが勘ぐるほど恋愛モードにならない、旅人さんと灯衣ちゃん親子をまっさらな感情で大切に思う陽子さんが好印象。かえって応援したくなりますよね!(笑)

たいへんなおませさんですがパパ大好きで年相応の可愛い面もちゃんと持ってる灯衣ちゃんや、一見ガラが悪いチンピラさんですが旅人さんのことを心身共に案じる頼れる年下パートナー・雪路さん、肝がすわったドクターに増子さんに、皆すごく良かったです!
雪路さんと旅人さんの関係もなんか良い感じ。
パパを取られる!ときゃんきゃん騒いでいる割に、陽子先生に素直じゃないけどなんだかんだなついている灯衣ちゃんも、微笑ましく可愛いのです。

一作目の『日暮旅人の探し物』
陽子先生の探し物とかつて仲良しだったお友達。ここだけでもしみじみした良いお話でしたが、後々ここまでかかわってくるとは。
『地中の詩』の旅人の真意が見えずにちょっとぞっとしました。
一番初めの椅子の話も良かったです。
この巻は思えばまだほのぼの平和でした。ラストの不穏な引き以外は。

二作目『日暮旅人の失くし物』

探偵・日暮旅人の失くし物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の失くし物 (メディアワークス文庫)
(2011/01/25)
山口 幸三郎

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読み終えてから改めて表紙とカラー口絵をまじまじ見ていると、さりげなくグロテスク……。
最初の『老舗の味』があたたかくまろやかな味わいがあって良かったです。おいちゃん、おじさんと甥っ子の絆がほろ苦くて優しい。ハヤシライスを食べたくなりました。
『死体の行方』は旅人さんの黒さにぞぞっ。
『母の顔』、テイちゃんの年相応の顔が見られてほっとしつつも切ない気持ちになりました。
ミアちゃんのお母さんは、母親としてはどうよという感じでしたが、彼女の切実な気持ちもまたわかって、最後に歩み寄れて、本当に良かったです。

三作目『日暮旅人の忘れ物』

探偵・日暮旅人の忘れ物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の忘れ物 (メディアワークス文庫)
(2011/07/23)
山口 幸三郎

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『隣の静寂』と『森の調べ』は、続き物の短編で、どちらもしみじみとても素敵な愛の物語でした。
ストリートミュージシャンの哲と、目立たないOL静香さんのふたりの関係が、読んでいてとても良かったです。幸薄い静香さんの哲への健気な思いにほろりときました。過ちをおかしてやさぐれていた哲を軌道修正させた旅人さん、ナイス。お話の最後の静香さんの幸せそうな様子に心からほっとしました。
『爆弾魔の憂鬱』テロリスト爆弾魔よりもよほど真黒な旅人さんが怖い怖い。テイちゃんもただものじゃないな……。
『雪の道』雪路さんの過去話。雪路の兄の話が切なくて。本当にいいやつだな。雪路。「お兄様」呼びにちょっとびっくり(笑)。
『夢のぬくもり』前の巻とあわせて、旅人さんの過去が悲惨で澄み切った復讐心がしみじみせまってきます。やりきれない。陽子先生、頑張りました。

四巻目『日暮旅人の贈り物』

探偵・日暮旅人の贈り物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の贈り物 (メディアワークス文庫)
(2011/10/25)
山口 幸三郎

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おんなのうででさしのべられた薔薇の花の構図がうつくしい。
最初から最後まで緊迫感漂う展開で一気読みしてしまいました。
かつての誘拐犯のひとりの白石の手で、陽子先生の身にも危険が。
善良な日暮家の人々が過去に巻き込まれた闇は、あまりに暗くて残酷で、読んでいて辛かったです。
山田さんと日暮父の友情は、なんか良かったんですけどねえ。お互い相容れないものを抱えつつ嫌いになれないあたりが、なんか!(笑)
山田さんも白石さんも、「父親」として見せる姿はごくふつうの人間の姿で、そこに救いがあったのが、良かった。
これまでさんざん黒い面を見せてきつつも、最後の最後で救えないお人好しさを発揮する旅人さん、安心しつつもえええ、どうなっちゃうのー!!という場面での、あの電話。とてもとても素敵でした。
ついに、「愛」に触れることができた旅人さん。彼の涙に、私の目もじわっとうるみました。
陽子先生の台詞の続きが気になります。
『愛の旅』後日談的に語られる、灯衣ちゃんの母親の事情。
まさかこんな風につながってくるとは……。絶句してしまいました。
灯衣ちゃんのお父さんが本当によいひとで、愛されて生まれてきた子どもで、そこはとてもほっとできました。
そして旅人さんの目について、意味深な会話が。
いわれてみれば。すごく不安になってきました。
「愛がある限り、この目は世界を映し出しますから」……それが完全に真実なら、確かに、大丈夫なのでしょうが。

たぶん、陽子先生が思っている以上に、旅人さんにとって陽子先生は、唯一無二の愛する人で。
(世間一般の恋愛と完全に同じものではないかもしれませんが)
二巻目のラストで、陽子さんの決意への答えに、娘の灯衣ちゃんを持ち出したのも、確信犯的なものじゃないか?と勘ぐってしまいます(笑)。だってやっぱりロマンスはほしいですもん、私的に。

この四冊を通して、ずっと旅人さんが探してきた愛、抽象的なモチーフは、陽子さん自身、とも取れる。
おひさまみたいに、明るくて影がなくておせっかいで愛情深い、素敵な女性。
暗い因縁と唯一関わりのない存在である陽子先生を大切に思う気持ち、それだけで、旅人さんには救いになっているんだろうなあ。

旅人さんや灯衣ちゃんや、固有名詞も美しく物語の雰囲気にあっています。
あと、冬の雪の白や透明感が似合うお話だな、と。

セカンドシーズンも三冊出ているみたいなので、読みます!!


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 山口幸三郎 

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