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『探偵・日暮旅人の壊れ物/日暮旅人の笑い物』山口幸三郎 

探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)
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山口幸三郎

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探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)
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『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズン第二弾、第三弾。
日暮旅人が経営する探偵事務所に、旅人の学生時代の先輩だという美しい女性・見上美月が現れる。
美月の親しげな態度に陽子は気が気でなく……(『日暮旅人の壊れ物』)

先週の週末に一気読みしてしまった、セカンドシーズンの続き。現時点での最新刊に追いついてしまいました。
特に最新刊の『日暮旅人の笑い物』は、良かった。シリーズの中で一番のお気に入りになり、読み返してはひたっていました。

まず『日暮旅人の壊れ物』から。
前巻の『宝物』から一転、またダークな面が前面に押し出されてきた巻でした。
旅人さん、復讐心からは解放されても、過酷な運命からはそう簡単には逃れられないんだな……。それゆえ愛する女性とあくまで一線を引いて接する姿勢に、読んでいてせつなくなりました。

『傷の奮え』『憧憬の館』
久々に黒い旅人さん全開。え、えぐい……。
朋美さんと旅人さんの交流、結果的に朋美さんはこれで救われて良かったんでしょうけれど、手段がわりとえげつないです。というかこのご両親いやだな……。旅人さんの過去を思えば必要以上に嫌悪してしまうのも仕方ない気もしますが。
憧憬の館がまた読んでいてぞくぞくしてくるお話でした。最初から救いがなくてあまりにやりきれない。
似た立場でそれでもまっとうな精神を保ち続けている雪路の存在が救いといえば救いかもしれませんが。

『竹馬の友』
他の話とは少し毛色の違う、過去の仲良し少女たちの絆の物語。
回想シーンからはじまる志のさんと緑さんとあやめさんの友人三人組が、本当に仲良しさんでお互いを愛する心がよくつたわってきて、せつなく幸せ感でいっぱいになりました。
女の子同士の友情って確かにこういう一面あります。そういうの、悪くは書かれていないのが、良かった。
灯衣ちゃんとの年の離れた友情もまたよし。

『箱の中』『昔日の嘘』
中学生時代、親戚の家を転々としていた頃の旅人と、旅人の先輩で彼になにかと構っていた美月さん、旅人の先生で従兄にもあたる甲斐先生の物語、そして今に続く物語。
中学生時代、刺々しさ全開の旅人の姿が、現在の穏やかで人当たりのいい(一見)姿を知るものからすると、かなり新鮮というか。
まあ、身に降りかかった悲劇を思うと無理ないとはいえ、辛い子ども時代を過ごしてきたんだなあと思うとやりきれなかったです。大杉君へのアドバイスも凄惨な……。
美月さんと先生に見守られてはじめて探偵役をかってでた姿が、それまでと比べるといきいきちょっと楽しそうだったのは、良かったな。
現在に至っての、先生と旅人さんの「会話」には、胸がいっぱいになりました。
開き直った(その方向を深く考えるとまた辛いですが)旅人さんの、唐突なデートのお誘いに、きゅんきゅんしました!
彼の気持ちは、プロローグのお墓参りの場面で、すでに答えは出ていましたよね。
灯衣ちゃんや雪路よりも先に連れてくる時点で。


次『日暮旅人の笑い物』。
「笑い」……、微笑み、愛情表現のひとつ、愛おしいと思う気持ち。(あとがきより。)素敵なタイトルだな。
表紙のイラスト、これまでのシリーズではお話に出てくるモチーフの組み合わせだったのに、今回はなんか、違うなあ。
旅人さんのファッションはまあ、クリスマスの装いなんですが。花束も完全に様になるきざないい男だな……。
よくよく観察してみると、『幸福の王子』とか?深読みすると旅人さんせつない。
そして鏡の中の女性の影が不気味です。
カラー口絵のおめかしした陽子先生、きれいです!初々しいとまどいの表情もすてき!

陽子先生との関係が激しく揺れ動き、そしてひたひたと迫りくる黒い影が。

『家の灯り』
クリスマスデートのラブラブさが素晴らしかったです。陽子さんもだけど、旅人の方もまた緊張して浮かれているのがはっきりつたわってきて、二重にときめきました。あまりに正統派にクリスマスを満喫するカップルなふたりに、読んでいて罠なんじゃないか……なんて思ってしまったり。うん、ある意味正解でした。
智子先生の立場からみれば、旅人が陽子に気があるのなんてバレバレだったそうで、あ、やっぱり……(笑)。
旅人さんは誰にでもおだやかで優しいって、いや、それは陽子先生限定ですって。読者ならではの視点で陽子先生につっこみを(笑)。
頂点までいったからこそ、告白の後の旅人の宣言が、あまりに辛く悲しくやるせなくって。ずるいです。
日暮家のクリスマスパーティー&バースデーパーティーの場面の楽しい雰囲気も良かったです。
亀吉のエピソードにうるっときてしまいました。だんだんテイちゃんといいコンビになってきました。

『組織の礎』『最良の一日』
新年早々因縁浅からぬテロリスト集団のたくらみに巻き込まれ、あろうことか暗躍している旅人さん。いったい何やってるんだ……。
旅人さんと面識があるばっかりに妙な気遣いをさせられてる増子さんと、彼女さんとのデートをつぶされたという気の毒な同僚さんに同情。
テロに身を投じた若者たちひとりひとりのエピソードが、少しずつ理解できるものもあって、なんだかやりきれないなあと複雑な心境になったり。
そして暴力団の幹部とも普通にやりとりしている旅人さん、本当になにやってるんだ。

『微笑みの代償』
『最良の一日』からつながってくる物語。とても好きなお話です。
図書室にての高校生カップルの微笑ましい純愛と、彼らの関係の終焉に泣きました。頼子さんの座右の銘がよい。
進介と頼子の愛の行方の物語と同時進行で、旅人と陽子のふたりの関係の決着も、ふたたび。
自暴自棄になっていた旅人さんに必死にくらいついて笑顔の仮面を引っぺがして本音を引きずり出して抱きしめた陽子さん、本当によくやった!旅人のそばにはなぜ陽子さんでなければならなかったのか、納得でした。
黄昏時に近くなった郊外の地での夢のような風景が思い浮かんだラストでした。

『魔の手』
旅人がついに目の手術の決意を。陽子さん、本当にえらい!(涙)
すっかり甘えん坊になった旅人と、母親のような愛情で彼をくるみこむ陽子のふたりの姿が、それまでとギャップがありすぎて、新鮮で、かなりときめきました。旅人さんかわいいな……。腹をくくった陽子さんの名前通りお日様のような力強い明るさもよいです。
反面、灯衣ちゃんの態度も、それはそれで無理ないです。この子、陽子先生のこと、それでも嫌いじゃないんだよなあ。雪路が理解者であってくれてよかった。
雪路の方にも恋愛っぽい動きがあり、このあたりだけなら、時がたてば、解決することであったでしょうに。
つかの間のこのメンバーの幸福を、ことごとく壊していってしまったラスト一連が、ほんっとうにもう、やりきれない。
意外な人の豹変に、ついていけてません。なんで?彼のことを気遣っていたのは、どこまで嘘だったの?
そしてストーカーの正体、読み返しても分からないです……しくしく。
復讐といっても、これまでの旅人さんがやってきたことを思い返すと、恨んでいそうな人いっぱいいるから絞り込めそうな気がしませんし……。
旅人さん、わかってはいたけれど、本当に黒いヒーローだなあ。苦笑い。
いつの間にか慣れちゃいましたが。この黒さがスパイスできいていてこその、日暮旅人シリーズです。

うわーん、最終巻は、本当にいつ出るんでしょう?待てません。
ハッピーエンドを切望しています。

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 山口幸三郎 

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