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『黒猫の約束あるいは遡行未来』森 晶麿 

黒猫の約束あるいは遡行未来黒猫の約束あるいは遡行未来
(2014/09/25)
森 晶麿

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『黒猫』シリーズ本編第4弾。
フランス滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの依頼で、イタリアの「遡行する塔」の調査に向かう。
一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先でなぜか突然映画への出演を打診される。
異国の地、離れ離れの状態で、ふたりの新しい物語がはじまる——。

『黒猫』シリーズの本編の続きが出ました!
本当は私、文庫化するまで買うのは見送ろうかなあ……と思っていたのですが、ネット上の皆さまの評判がとても良く気になって気になって、結局単行本で買ってしまったのでした。
丹地陽子さんの表紙イラストが相変わらず秀逸。
すれ違い歩く黒猫と付き人の構図が良いです。付き人の歩く姿勢はリズミカルで見ていて気持ちがいいなあ!鮮やかなレモン色もアクセント。

そして本編もやっぱりとても良かったです♪
静かで上品で少しひんやりしていて理屈っぽくて、読んでいると不思議と心安らぎます。(美学の講義部分は理解するのに頭使いますが……。)
遡行する塔と映画にまつわる謎もロマンティックでひやりとした狂気もはらんでいてすべてふくめて魅力的だったし、異国で偶然再会した黒猫と付き人のふたりの関係にも、進展が!
後半部分のふたりのやりとりにはきゅんきゅんし続けてました。

お話の語り手は、前半パートはラテスト教授の孫娘・マチルドが再び登場で、後半パートは付き人ちゃん。
黒猫とマチルドがイタリアの奇妙な塔に調査に乗り込むところからのスタートです。
相変わらずマチルドは黒猫好きだな……私は付き人派(?)なのでちょっとはらはら。身内思いの良い子なのに、ごめん、マチルド。
相変わらずパフェを愛好している黒猫の姿にくすりと。キャラメルジェラートパフェ?おいしそう……!
ヒヌマ邸の人々の様子はかなり不審な感じで。
そして衝撃の再会の場面。盛り上がります!

そしてその場面にいたるまで少し時間が戻って、付き人視点からの物語。
唐草教授とエドワード教授とのやりとりの中で、付き人の成長を感じました。目を見張るようです。
そして突然映画にスカウトされてしまった付き人の運命やいかに。トッレさんの思惑が分かるようで分からなくてどきどき。
ふたりの再会は、心ふるえました。

マチルドと付き人が直接顔を合わせて、どうなることやら……とちょっとはらはらしていたのですが、あれ、意外と気が合っている(笑)。ふたりで黒猫に挑戦して一緒にやり込められている感じで、ふたり共感めいたものも覚えているようで、なんだか良かったです。マチルドが本当に素直でよいこでした。
マチルド視点から、付き人の魅力がはじめて客観的な言葉で表されて、今までのストーリーを振り返って彼女の人物像にすごく納得できて気持ちが良かったです。

見ていて気持ちのいい人だった。大人しいし、少しおっとりしてもいるけれど、潮風のようなきりりとしたところがある。芯の強さと透明感。 (272頁)

再会したふたりの一夜は、すべてのやりとりが意味をはらんでいて濃密でした。
「タコは泳いでいる間はアボカドのことなんか知りもしないのに」云々のやりとりがおかしくて視点がこのふたりらしくてお気に入り。
戸影君のこと、さりげなく聞き出している黒猫と、まるで無自覚な付き人のかみ合わなさも、おかしかった。彼も彼で頑張ってるようです。それは黒猫もあせるでしょう。
そしてこれまでのシリーズ史上でもっとも糖度の高いやりとり。もどかしさとのバランスがまたこのふたりらしくて、くうっとうなってしまいました。しかし甘いです。最高です。
普段化粧っ気がない付き人だからこその口紅の使われ方がお上手でした。特に翌朝のやりとりが、たまらない。

またそんなそっけない別れ方を……と後ろ髪ひかれる帰り道で、まさかの再会もあり。
遡行する塔に主役としてかかわった人々のドラマは、そう簡単に白黒つけられないけれど、なんだかとても鮮やかなものが私の心の中に残りました。表紙のくっきりしたレモン色とドレスの赤。

そしてエピローグの再びマチルド視点、あああ、そういうことだったのかーー!!心の中で叫びました。
怪しさ全開だったマルタさんたちが、ふふふっと種明かしの茶目っ気ある笑顔を浮かべたような錯覚が。
そしてマチルドの目に映った、黒猫の想いの真実。
黒猫と付き人の約束を想うマチルドが健気でひりひりとせつなかったです。
マチルドにとっては、憧れ半分の恋だったのかもしれないけれど、それでも。

映画をみるときには、日常を置き去りにする、という感覚、よくわかるなあと思いました。
遡行して崩壊する塔、恋人同士のドラマも内包していて、ロマンティックでした。建築学なんて全然専門外ですが、分からないなりに感じるものもありました。

美学ミステリーというか、ほとんどラブロマンスとして楽しんでいる私。
学があり理屈っぽいふたりだからこそ、あれこれ考えすぎて結果遠回りし続けざるをえないのかなあ、とかちょっと考えたり。(『黒猫の薔薇~』の過去の恋人たちもそんな感じだった気がするので……いかん、がんばれ、黒猫!)


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

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