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『さまよえる本に結末を ウィルブック・ハンターあるいは甘い憂鬱』秋杜 フユ 

さまよえる本に結末を ウィルブック・ハンターあるいは甘い憂鬱 (コバルト文庫 あ 25-1)さまよえる本に結末を ウィルブック・ハンターあるいは甘い憂鬱 (コバルト文庫 あ 25-1)
(2014/10/31)
秋杜 フユ

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村娘エステルの心の影に忍び込むのは、美しい青年の姿をとったウィルブックの影。
ウィルブック——未完の本のなれの果て。物語を完結させるべく、生身の人間であるエステルは狙われたのだ。
そんなエステルを救うのは、ウィルブック・ハンターを名乗る旅の青年ふたり、ベルナールとジャック。
悲しみの過去の果てに待ち受けるものは——。未完の物語が動き出す、旅立ちの物語。


コバルト文庫の新人さんの作品。
タイトルの響きとあらすじとあきさんのイラストにつられて、手に取ってみました。
コバルト文庫の表紙カバーがリニューアルされて、白くなりました。他の少女小説レーベルと見分けがつきにくくなったな……まあそれはこの作品自体には関係ないんですが。あきさんの表紙イラストは白によく映えてやはり麗しいです。

未完の本が結末をもとめて人間を取り込もうと狙い、そんなウィルブックから人間を救う、ウィルブック・ハンターという人々が存在する世界。
ちょっと今まで読んだことがない設定のおとぎ話風味少女小説。新鮮で楽しめました。
ウィルブックの青年の救済と、閉鎖的な村で少女が足掻き自分の道を見出す過程が、お話の軸、かな。
ウィルブックの中の物語以前に、エステルとベルナールたちが実際にいる世界も読んでいる私にとってはファンタジーな異世界で、本の中の世界が思っていたほど特別なものにはうつらなかったかな。
それはそれで物語としてちょうどバランスが取れてて良かったと思います。

エステルがはじめ印象がいまいち定まらないヒロインだったのですが、読み進めるごとに、彼女の心の揺れ動きが丁寧につづられていて、気が付けば愛おしい子になっていました。
この閉鎖的な環境で親のこともあり窮屈に育ってきて、自分の母親の人生も見てきているからこその悩み。こういう異世界ものにしてはささやかな悩みかもしれない、けれど現実的で共感しやすかったです。

そんなエステルの前に突然現れた、ウィルブック・ハンターを名乗る貴族的な青年ふたり。
ベルナールとジャックのコンビのかけあいが上手くはまっていて面白かったです。ノーブルで基本自分がやりたいように動いているベルナールと、冷静沈着なお目付け役に見えてたまに自分の世界に夢中になって帰ってこなかったりするジャック、なんだかんだいって持ちつ持たれつのコンビのようで。
あきさんの挿絵がふたりそれぞれの容姿や雰囲気を完璧にあらわしていてすごすぎる……!
エステルとベルナールとジャックの野外ピクニックは楽しそうでした。

エステルとベルナールが、生まれ育ちも性格も全然違うのに、お互いを気遣い幸せを願う姿が、読んでいて優しくて、好きでした。
ベルナールがはじめからエステルに特別な想いを抱いていたのはなぜなのか、彼の優美で洗練された物腰はどこでつちかわれたものなのか、彼がまとう哀しみの情はどこに由来するものなのか、終わりの方で明かされて、ああ、そういうことだったのか、とね。
少女小説らしい心の通い合わせとただよう甘い雰囲気、楽しめました。

ウィルブックのシャルルもまた存在自体が切なくて心に残るキャラでした。
エステルを取り込もうとしている張本人でありながら、それゆえに、エステルの心の傷の最大の理解者でもあり。
リリアン、笑顔が素敵ないいこでした。本当に良かった。

エステルのご両親のロマンスのエピソードやエステルの父親の現在のエピソードなども、ちょっと具体的に読んでみたいです。
マリオンの気持ちも分かるだけに、仲たがいの場面は心につきささりました。でもエステルをきちんと愛していて、そこはゆるがなくて、安心しました。

ベルナールの抱えるものが予想外にシリアスで、エステルもまた、一行に加えられて、旅することに。
ベルナールのあまりに淡い口づけにきゅんとしました。
旅立ちの場面のエステルの表情がとても良いです!

出てくる登場人物皆美貌の持ち主ですが、あきさん挿絵の少女小説だから、どんとこいです(笑)。
村の自然や花の描写がほどよくていねいで良かったです。

そしてこちらの作者さん、私の地元出身、在住の方のようで、ぐっと親近感がわきました。

デビュー作にしてはとても好印象。
続きが出る前提の終わり方な気がするので、きっと読めると信じます。楽しみです!
ウィルブックやウィルブック・ハンターのあれこれをもっと深く読んでみたい。せっかく面白い設定なので。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 秋杜フユ 

この記事に対するコメント

「ひきこもり」シリーズはいかがでしょうか

はじめまして。いつも本の感想を楽しく読んでいます。この本と同じ作者、秋杜フユ先生は今「ひきこもり」シリーズを執筆しています。このシリーズ、ギャグとシリアスの差がとても激しくて、1巻がとても軽いギャグだったのに、2巻は突然シリアスになったりと一定しないのですが、シリアスパートはとても素晴らしいです。(ギャグも面白いのですが)特に、最新の6巻「虚弱王女と口下手な薬師」は全編シリアスでまるで「最後の王妃」や榛名しおり先生の作品の様な面白さでした。とてもおすすめです。

URL | KOR #-
2017/02/13 00:56 * 編集 *

Re: 「ひきこもり」シリーズはいかがでしょうか

>KORさん
コメントありがとうございます。

こんばんは~。こちらこそ、どうも、はじめまして♪
こんな適当な感想をいつも読んでいただけているとのこと、たいへんうれしく幸せです。
ありがとうございます!!

秋杜フユ先生の新作シリーズものですよね。
私もずっと気になりつつ未読……状態です。
あらすじを読んでいると軽いノリのラブコメなのかな?とも思っていたのですが、シリアスパートもしっかり書かれているのですね。伺っていると俄然興味が出てきました!
今度書店でチェックしてみます。
おすすめいただきありがとうございました♪

URL | ゆり #SvKcs0as
2017/02/18 21:00 * 編集 *

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