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『水光舎四季』石野晶 

水光舎四季 (徳間文庫 い 65-1)水光舎四季 (徳間文庫 い 65-1)
(2014/10/03)
石野晶

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植物の声が聞けたり、絵に命を宿らすことができたり、風変わりな才能を持つ生徒たちを、季節ごとに受け入れ力を伸ばしてくれる、寄宿舎水光舎。
水光舎で学ぶ生徒たちの期限付きの交流が、春夏秋冬四つの季節に区切って語られる。
きらめく青春のふれあいの物語。

今年最初の読書は、色々な方から良い評判を聞いていた、こちらの本にしてみました。
表紙の女の子とお花の淡く優しいイラストが、とても素敵で、思わず手に取ってしまいました。

作品の舞台になる寄宿舎水光舎は、独特のシステムで運営されています。
「庭師」「画家」「陶芸家」「料理人」「飼育員」……等、それぞれの特殊な能力を持つ子どもたちを、四つの季節ごとに四人選んで、春、夏、秋、冬、それぞれ三か月間だけ、受け入れて共同生活を営ませる。生徒たちはそれぞれの課題をこなすことで、自らの能力を伸ばすことができます。
一つの季節に同じ仕事はひとりだけ。春夏秋冬の四人は、班を組んで、水光舎にいない時期でもインターネットの日誌を通じて常に交流を取り合っています。
同じ仕事の四人同士は、一年中深くつながっていても、お互いの顔や名前は知ることなく。それぞれの季節(春)(夏)(秋)(冬)みたいに呼び合っています。
……なんて説明は、私が長々とするよりも、実際に本を読んでいく方が、ずっとずっとよく理解できるので、読み飛ばしちゃってください。
春夏秋冬四つの物語、どの季節でもこの約束事が守られたうえ営まれていくので、読んでいくうちに、ややこしく考えることなく自然と受け入れられるようになるはずです。

お話は、表紙のイメージまさにぴったりの、うつくしく繊細できらきらまばゆい、とてもすてきな青春もの小説でした。
寄宿舎ものはもともと好きな私ですが、くわえて水行舎の風変わりなシステムが物語にうまく作用していて、出会いと別れ、期間限定の友情に淡い恋、生徒たちのドラマがより引き立っていました。
生徒たちの特別な能力は、わりとささやかなもので、読んでいてシリアスさはあまりなく。誰かを助けるためにほんの少しでも役に立てばいい、そんなスタンスで、気負いなく読めました。
雪深い山奥での春夏秋冬の自然描写が、丁寧で素晴らしく、これも魅力的。
雪国っぽい描写がすてきだな……と思っていたら、作者さんはやはり、岩手の方でした。

『スプリング・スクール』
「庭師」の力を持ち十三歳ではじめて水光舎の共同生活に入っていくことになった、ちょっと気の弱い男の子・潤也くんの物語。
はじめてやってきた新入生視点で教えてもらえる水光舎のシステムが興味深く。
人見知りする潤也は、新生活や班員のやりとりになかなか馴染めずに、庭の手入れという「課題」も上手くこなせず、しんどい日々を送ります。この辺は人見知りで新生活に馴染むのが苦手な私自身もとても共感できる。
顔も知らず、ただその仕事ぶりを引き継いだ仲間を、信じ抜くことができるのか。壁にぶつかり苦しみながらも、仲間のあたたかな助けをもらって、ふんばって仕事をこなし、ひと皮むけた彼の姿が、春の生命力満ちあふれた庭の描写とあいまって、清々しくよいものでした。
ルームメイトの陶芸家くんもゆるぎなくきりりとした先輩で、いい味出してる。
ホーム・シック時の、おかあさんのポテトコロッケと鶏ごはんが、色々な人の優しさを溶かし込んでいて、あったかでとてもいいなと思いました。

『サマー・スクール』
恋した(夏)の相手に確かめたいことを胸に、季節が変わってもかくれて寄宿舎にいのこることにした、画家の真澄さんの物語。
恋愛話で盛り上がり共犯者として協力し合う、女の子たちの絆が甘酸っぱく楽しそう。全員がどれだけ親身にかかわっているのかはともかく、部屋にかくまってくれた苑子さんと一葉さんは、どちらもいいこたちです。デザイナーの一葉さんがワンピースにほどこしてくれた花の刺繍がすてき!
相手の顔も知らなかった彼女の恋は、せつない結末をむかえてしまいましたが、真摯に恋していた真澄さんの絵の力で確かに和解し救いをえたふたりのラスト、最後までおだやかに茶目っ気も交えて微笑んでいた彼、たしかな再会の約束。うん、素敵なお話でした。
女の子の友情っていいな!というお話でもありました。最後の一葉さんへの贈り物に、思わず頬がゆるみました。

『オータム・スクール』
今年度で水光舎を卒業する霊能者・ひょうひょうとした少年・涼示くんの物語。
男女問わず誰とも垣根を作らず上手くやってて、水光舎のシステムや生活にもうしっくり馴染んで卒業を惜しむ彼、潤也くんの姿とまた対照的な……と思いつつ読みはじめる。
「霊能者」なんてほかより繊細な心や命を扱う特殊な仕事ゆえでしょうか、水光舎の秘められた過去も明かされ、いちばん心の奥に触れてきたお話でした。
涼示自身の現実世界での影のあるエピソードもあいまって、切なくて。
渚さんとの夜のダンスの場面と、四人の「霊能者」全員が協力してのお別れの場面には、泣いてしまいました。
(秋)の庭師の彼がさりげなく登場して協力している様も良かったです。

『ウインター・スクール』
飼育員の女の子・歩さんが、春夏秋の飼育員から世話を受け継いできたコガミたちと心通わせあう物語。
スプリング・スクールで丹精込めた庭に悪戯をしかけてくれたコガミたち、冬にはすっかりたくましく成長してました。
犬そり!厳しく雪に閉ざされた冬にこれを持ってくるなんて、お上手ですねえ。
年末年始の特別な雰囲気や冬ごもりの食料や、冬ならではの過ごし方の楽しみもあって、わくわく。
歩さんと麻帆さんの親友同士の気心知れた楽しい雰囲気や、きょうだいで個性が全然違うコガミたちとの触れ合い、そりすべりのわくわく感も相まって、基本明るく楽しいお話でした。
難しいお年頃ゆえに、親友をめぐる恋のぎくしゃくにやきもきしつつも。
個人的には歩さんにも恋のエピソードがかけらでもほしかったですが、まあ、この娘の心はコガミたちにすべて持って行かれているからな……(笑)。
ラストで親友を救うために吹雪の中犬ぞりを走らせる歩さんにははらはらどきどきでした。
レモネードやココア、あったかい飲み物がじわじわおいしそう。

すべて読み終えて、表紙のイラストの女の子は、潤也が春に見た真澄さんのようであり、涼示の姉のようであり、渚さんのようであり、または麻帆さんのようであり。
このお話に出てくる何人もの魅力的な女の子たちのイメージが、重なり合わさっているのかなあ、そんな風に私は思いました。
それぞれのお話は独立しているけれど、水光舎のシステムを思うと当然のこと、登場する生徒たちがゆるやかにつながっている部分もあり、読んでいてそういうつながりを見つけるのも楽しかったです。

寄宿舎の管理人の水越夫妻に講師たちに、生徒たちと大人たちの関係も、なんだか独特でした。
優しく温かく、少し離れたところから見守っていてくれる存在。冷たく突き放してくるわけじゃないんだけど、なんか、ぎりぎりのラインだな。
秋のお話で、過去の生徒たちへの水越夫人の思いに触れられて、じんわり優しい気持ちになれました。
水越氏が作るごはんが、家庭料理より気持ちお洒落で、生徒への想いも感じられて、おいしそうでした。

新年からとても良いお話を読めました。出会いに感謝。
このお話、続けようと思えば続けられそうな感じなので、もう少し色々な生徒たちのエピソードを読んでみたいな。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 石野晶 

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