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『下鴨アンティーク アリスと紫式部』白川 紺子 

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)
(2015/01/20)
白川 紺子

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鹿野は京都に住む高校生の少女。両親を早くに亡くし、祖母の手で育てられた。兄の良鷹と、大学の准教授をしている下宿人の慧と三人で、古びた洋館に暮らしている。
アンティーク着物をこよなく愛する鹿野は、休日はたいてい、祖母ゆずりの着物を自分でコーディネートして着こなしている。
そんなある日鹿野は、「開けてはいけない」と言われていた蔵を開けてしまう。
すると、着物をめぐる不思議なことが次々に起こり——。

オレンジ文庫私の第二弾は、白川紺子さんのアンティークお着物をめぐるミステリータッチのものがたり。
表紙の猫と牡丹と薔薇の絵がため息がもれるほど美しくセンスよく、あらすじも心惹かれるもので、楽しみにしていました。

読んでみて、私はやっぱり、白川さんの描かれる少女趣味の作品世界が、とてもとても好きだなあ!と。
着物好きで、お祖母ちゃんっ子の素直で愛らしい女子高校生(しかもみつあみ!笑)も好みなら、『源氏物語』『建礼門院右京太夫集』等の文学作品のセレクトも好み、鹿野のナイト役の不愛想だけど頼れるふたりの年上男性陣も好み。
お着物やお花や食べ物やひとつひとつのアイテムの細部の描写にいたるまで、どこまでも私の乙女ちっく感性にぴったりしていて、そうそう、こういうのを読みたかったんよ!読んでいて嬉しくて幸せでたまらなかったです。
白川さんというとこれまで英国ヴィクトリアンものを主に読ませていただいていましたが、和ものも良いですね!
そして変わらずアンティークものと親和性が高くていらっしゃる。
ふんわり優しいお話ながら、星月夜や牡丹灯籠、どちらかというと夜の闇のイメージのお話なのも、好きでした。
闇といっても冷たいものではない、人を穏やかに優しく包み込む、そんな感じで。
夜の通勤の読書にも良かったです。ということを、言いたかったのです。

文章も相変わらずやわらかで品があってとても読みやすく、くわえて鹿野がしゃべる日常のことばがまた私にとって実に馴染みがある響きでしたわしく心地よく、古典作品とも合っていて、うん、本当に好きでした。
このあたり、私が白川さんと同郷の人間であることも関係あるのかなと思いました。三重のことばと京都のことばは近いとは言われますが。

『アリスと紫式部』
なんかこう、アリスと紫式部という、取り合わせが斬新で素敵です。鹿野の着物のコーディネートも素敵。
『源氏物語』の、源典侍に特に思い入れて、光源氏に憤ってしまう、という鹿野ちゃんが、いかにもお祖母ちゃんっこなんだなという感じで、好きだなあとほのぼのしました。
敏子さんはなかなか好感を持ちにくい人ではあるけれど、でも安代さんが言うように、潔癖で後妻さんを許せないみたいなお年頃と言うのも分からないではない。後妻さんへのケアも一応あったようなのが、救いでした。
鹿野と慧さんの出会いのエピソードもほんわか優しくちょっとほろ苦く良かったです。いいひとだな、慧さん。

『牡丹と薔薇のソネット』
今度はシェイクスピア。またタイトルの響きが美しいです。
富貴子さんというお名前と、牡丹、薔薇、とりどりのあでやかな花の描写。
そんな花のように艶やかにもえた、でもはかなく散って実らなかった恋。せめて名残をとの思いで残されたいくつかの品の存在が切なくほろ苦く、しんみりとしました。
牡丹灯籠の着物のエピソードは物悲しく、でも恨んでほしい、憎んでほしいと思っている割におどろおどろしいイメージはなく、美しいイメージをまとったままに想いを昇華させた富貴子さんが、切ないけど気高く素敵だな、と。
春野さんは確かになかなか食えなさそうです。植物みたいな人って。物腰やわらかそうなところとか確かに私もときめきましたが!
ものぐさなのに、鹿野を春野さんのところにひとりで行かせないために、さりげなくガードしている良鷹お兄ちゃんと慧さんがナイス。お兄ちゃんの方はものぐさが若干勝っている気もするけど、慧さんがそっちの分まで穴埋めしてくれているので、よけいに美味しい(笑)。
美味しいといえば、オムライスにポテトコロッケに、鹿野が作ろうとしていた料理がおいしそう。
お祖母ちゃんからの「宿題」、お兄ちゃんの分かりづらい妹への優しさに和みました。

『星月夜』
お祖母ちゃんの過去の日記で語られるお祖父ちゃんとのなれそめ、新婚エピソードがたいへん微笑ましくかわいらしく、読んでいて身もだえしました。お祖父ちゃん、曲者だな……。
どちらかというとのんびりおっとりな鹿野と違って勝気なお嬢様だったらしいお祖母ちゃんが、恋して弱弱しく思い悩んだりつれない態度をとってしまったり、そんな姿もたいへん愛らしいです。
日記の文体が昔のものなのがよけいになんというか乙女チックな雰囲気をかもしだしていて、どきどき。
「そんなん、僕はとうに落ちとるよ」、とか、なんて殺し文句……!
「星月夜」の歌の講釈や着物の謎ときは、とてもロマンティックで素敵でした。
というか、一応日本文学も勉強してきたのに、『建礼門院右京太夫集』についてほとんど知らなかった私がちょっと恥ずかしい。
いきなり結婚のことを話題に出し友人たちにからかわれている鹿野ちゃんが可愛らしかったですが、そうか、結婚したお祖母さんと鹿野ちゃんは、今ちょうど同じ年なんだなー。
桜海老のかき揚げにプリンに美味しそうです。相変わらず傍若無人なお兄ちゃんの扱いをある程度心得ている妹ににやりと。

鹿野ちゃんと慧さんの、微妙な関係もとても良くて、彼らの関係の今後が気になります。
ぶっきらぼうで気難しげなのに、鹿野ちゃんの頼みにはたいてい面倒見よく付き合ってあげててそれが結構楽しそうなのが、なんか、微笑ましいですよね。
慧さんの中では、まだ恋愛対象にははっきりなっていないみたいですが、まだ気持ちに名前をつけていないだけ、というような感じもします。
鹿野ちゃんはきっとこれからどんどんきれいにいい女性になっていくと思うので、早いところつかまえておかないと、後悔しますよ!とか、いらぬおせっかいをやいてしまいそうです。
まあ、お兄ちゃんが、慧さん以外の男性を、鹿野ちゃんに安易に近づけさせるとも思えないんですけどね……(笑)。

欲を言えば挿絵とあとがきがほしかった!(笑)
そして買ってあった雑誌cobaltをぱらぱらめくってみたら、この作品の短編を見つけたので、これから読んでみようと思います。
白川さん、コバルト文庫の新刊の方も、気になるんですよね。読んでみようかなあ。


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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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