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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

私の好きな美味しい物語5 薄紅色の花の砂糖菓子(『夢の上1』多崎礼) 

バレンタインですね。こんばんは。
バレンタイン用の記事をあれこれ考えたもののぴったりのものがなかなか思いつかず、そういえばこの記事シリーズをまた放置しっぱなしだったことを思い出し、そうだ、このシリーズでお菓子関係の記事で書けばいいじゃん!という、今回も行き当たりばったりな感じで。
自分で最初に思っていた以上に全然進みませんね、このシリーズ。ネタはたくさんあるはずなんだけどな……。

次にこの美味しい物語の記事を書くならこれだよねという作品は、それでも一応は決めていました。

薄紅色の睡蓮の花の砂糖菓子(『夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶』多崎礼)

夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶 (C★NOVELSファンタジア)夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶 (C★NOVELSファンタジア)
(2012/12/21)
多崎礼

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ひとつの物語を味わうという楽しみを存分に堪能できる『夢の上』シリーズ。
私はやはり第一作目のこの巻がいちばん好きで、さらに後半のアーディンのお話が、何より好きで、読み返し頻度も高いです。
飄々とうさんくさい笑顔で騎士として最強で人当たりも顔もよく、そんな彼がイズガータに生涯ささげる忠誠と、けしておもてに出さない秘めた想いがたまらない。
何度読んでもアーディン格好いい!せつない!(涙)

そんなアーディンとイズガータがまだ出会ったばかりの子ども時代。平和だったケナファのお城での、日常のひとこま。
馬丁の少年だったアーディンのもとに、お城を抜け出してきたはねっかえりのイズガータお嬢さまが、お土産に持ってきたのが、睡蓮のお花のかたちをした、可愛らしい砂糖菓子だったんですよね。
印象的だったのは、カラー口絵がまさにこの場面だったから、というのが大きい。

美しく魅力的なお菓子を、ふたりは目で楽しみ口で存分に堪能するのですが、ちょっと違う味わい方をしていました。
ちょっと崩れてしまった方をいったんアーディンに譲りつつ、惜しそうな顔をしてしまったイズガータ。
この一連のやり取りの場面が、ほのぼのかわゆらしくて、色々な楽しみ方ができて、私、大好きなんです。
つたない私の文章ではなかなかうまく紹介できないのですが。ちょっと引用まじりで。

「でも、そっちの崩れている方でいいです」
「余計なことは言わなくていいのッ!」
彼女は俺の手に、崩れていない方の砂糖菓子を押し付けた。そして自分はふくれっ面のまま、砕けた花片を口に運ぶ。
「お腹に入っちゃえば形なんて関係ないもん」
そして、少しずつ砂糖菓子を齧っては、
「甘~い、おいし~い」
うっとりと眼を細める。  (188頁)

対するアーディンは、イズガータとは対照的に、まったくそのまま、崩れてないお菓子をぽいっと口の中へ。
イズガータは絶叫していましたが(笑)、私も内心びっくりしました。
私はイズガータと同じく、食べるのがもったいないお菓子は、少しずつ、ほんのすこしずつ折り取って、ゆっくり食べていくスタイルなので。

「もっと大切に食べなさいよ!」
「らって、くるひらっらもっらいないれひょう」
「なんて言ってるか、わかんない!」
俺は右手で口を押え、ちょっと待てと左手を突き出した。そして時間をかけてゆっくりと砂糖菓子を舌の上でとろかして、その甘味を堪能した後、改めて口を開く。
「だって、崩しちゃったらもったいないでしょう?」
「——あきれた」  (189頁)

そうか、かたちが美しくて壊すのがもったいないお菓子だからこそ、まるっと食べるのか!それこそがかたちを愛でるやり方なのか!
アーディンの主張に、ちょっと新しい世界をみた心地になりました(笑)。言われてみればこれはこれで納得なんです。
アーディンもまた、本当に砂糖菓子をゆっくりと大切に味わっているのが伝わってくる描写なのも、良いな~と思います。

幼い日の平和で甘く優しいやりとり。ふたりともまだ全然すれてなくて無邪気で。
いつまでも、ふたりがふたり、いちばん近い存在でいられた時代が続けば良かったのに……。懐かしまずにはいられないです。
そんな象徴の花の砂糖菓子。な、お話でした。

この作品だとあとは、最初のお話の、アイナが故郷の地で丹精込めて作っていたトゥーバって、いったいどんな味わいの食べ物なんだろう……というのも、ずっと気になっています。
きっととても滋味に満ちた味わいなんだろうなと想像しています。

バレンタインの可愛らしく繊細なかたちをしたチョコレートを、少しずつ齧って食べるか、一思いに口の中にぽんと入れてじわじわ味わうか、今度食べる機会に、このふたりのやりとりをちょっと思い出してみようかな。
と言いつつ、自分用にそんなチョコ買ってないけど……。また機会があったら。うん。
あ、なんとなく、記事もそれっぽくまとまりました?

いつになるかわかりませんが、また次回!


この一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪
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カテゴリ: 私の好きな美味しい物語

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