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『夢見るレシピ ゲストハウスわすれな荘』有間 カオル 

夢見るレシピ ゲストハウスわすれな荘 (ハルキ文庫 あ 25-1)夢見るレシピ ゲストハウスわすれな荘 (ハルキ文庫 あ 25-1)
(2014/12/13)
有間 カオル

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東京の下町、かつてドヤ街であった山谷。
家族と折り合いが上手くいかずに故郷の秋田を飛び出してきた千花。たどり着いたのは、マイペースでぐうたらな橋島オーナーとしっかり者の翔太が経営するゲストハウス「わすれな荘」。
外国人留学生、長期滞在の旅行者、個性豊かな住人たちとのにぎやかな日常に、千花はとまどいながらも少しずつ馴染んでいく。


東京の下町を舞台に、仕事も家族関係も恋も上手くいかず自信をなくしていた二十六歳の千花が、わすれな荘の共同生活者たちの気取りないあたたかさと美味しい料理にふれ、一員として受け入れられていくと同時に、自分自身の職の道を見つけていく物語。自分と他人との異文化コミュニケーションの物語でもある。
読んでから少々時間が過ぎてしまいましたが、最近いくつか読んできた美味しいもの系小説、漫画の中でも、この作品は特にお気に入りな一冊なので、やはり感想にまとめておきたくて。

ゲストハウスわすれな荘、そして東京の下町、山谷、浅草、物語の「場」の空気が、まずとてもいいなあと思うお話でした。
お洒落ではないけど誰もが背伸びせずに自然体でいられて、人情味あふれていて、ほんわかあったかくて。
外国人や旅行者や、その他色々事情をかかえていても、他人との違いなんてあんまり気にならない、そんなゆるい懐深さが読んでいて心地よくて。この辺は確かに地方では味わえない空気だな。
浅草は、中学の修学旅行、あと数年前にも行きましたが、確かに、こういう街だったなと思いました。
私はだいたい東京のことを、荻原規子さんの『RDG』の一巻目、修学旅行にやってきた山の学校の生徒たちと、未だにそう変わらぬイメージを抱いている人間なんですが(笑)、そういう感覚にも、合っていました。
後半に出てくる浅草のお土産屋さんの描写も、観光スポットなんだけど型にはまらない人情味があって、好きだな。

主人公の千花、そして彼女が出会う人たちも、皆いいひとたちで読んでいてほんわかしました。
千花は、東京に出てきた動機はやや幼い気もするし世間知らずだし最初のうちは読んでいてちょっともどかしいんですが、大人しさの中に優しさや素直さや礼儀正しさや、人としての大切なものをぶれずに持っている女性で、こういうひとが頑張る姿は自然に応援したくなりますね!
人の話を素直に聞けるって、本当、才能だと思います。
歌穂ちゃんとか、大人びたいいこだけど、まだ大学生でおしゃれ好きでわがままな年下の女の子なのに、彼女の素敵なところをくもりなく尊敬しアドバイスをすうっと受け入れられるところが、すごいな。
彼女がわすれな荘にスムーズに受け入れられたのも、彼女の持つ善良さが、皆にとって心地よかったから、なんだろうな。

むかえるわすれな荘のメンバーたちも、個性豊かでにぎやかでいいひとたちばかり。
翔太さんとクオンが特にお気に入りでした。優しくて面倒見のいい男性に惹かれるんだな(笑)。でもみんな好きです!
橋島オーナーと翔太さんの力関係が逆転したやりとりに、日本語勉強中のクオンの悪気ないひとことが絶妙な角度でぐさぐさつきささるのが、面白くて。
オーナーはぐうたらで色々問題はあるひとですけれど、憎めないし、千花みたいな真面目でくよくよ落ち込みやすい人間にとってみたら、こういうひとの存在が救いになることだって、あるんだろうな、とか思いました。
まあ、翔太さんが現在の立ち位置にいればという条件ではありますが。彼の面倒見の良さは、職業を聞いて納得でした。
千花の名前を千の花、花園、フラワーガーデンと皆に紹介するクオンが、彼の人柄を感じさせて素敵でした。
歌穂ちゃんも好きですよう。お洒落な神戸っこで、反骨精神を持っていて、わすれな荘を愛していて。千花ともう少し友情を深めるところを見たかったなあ。惜しい。
クオンと同じ留学生チームでもスディールの方は、打ち解けるまでに誤解も続いて辛い思いもしましたが、馴染むごとに、繊細ないいひとだなと思えました。ソウルフードのおにぎりを千花に作ってくれる場面にはほろりときました。
ちょっとした登場でしたがビックマムの懐深い愛情も素敵でした!

クオンやスディール、そしてドイツ人旅行者のオリバーにヤン、外国人たちとの異文化交流や彼らの事情だったりも、読みどころのひとつでした。
特に外国人留学生の生活の実情、苦労話は身に沁みました。こんな条件下でそれでもがんばっている彼ら、ひたすらすごいな。と。

ブイヤベースにじゃがいも団子のお鍋、バインミーサンドイッチ、クラムチャウダーにきりたんぽ、料理上手のクオンや千花が主に作っている美味しい料理の数々も、良かったです。
お料理も特に気取っていない家庭料理ばかりなのが肩の力が抜けて良いですね。作り手が外国人だったりするので見慣れない料理はお洒落に見えますが、本人たちからすれば、普通感覚だし。
あと焼きたての人形焼!すごく美味しそうで、たべたい!

おうちの方では古い価値観をもつ親にしばられ色々窮屈な生き方をしてきた千花が、自分の好きなものからもう一度再出発せんというラストの下りも、好感が持てるものでした。
ちゃきちゃきの下町人間・源治郎さんが千花のために用意する亡き妻の着物が、粋だなあ。

なんか、とにかくほのぼの優しい物語で、キャラクターもみんな善人で、現実を考えるとやっぱりファンタジーなんだろうな……とは思うんですけれど、不思議とそういうのが鼻につかない、素直に心地よい、そんなお話でした。
やっぱりこの「場」の空気のマジックなのかな。
あとやはり、山谷の地元っ子、橋島オーナーの存在もきいていると思います。
魅力的な男性陣がそろっている中で、ロマンス要素ほぼなしなのも、なごやかに読めて、この物語の場合はよいのかも。
(でももし続きが読めるなら、ロマンスもあっても良いと思うんですけどね!笑)


昨日記事に拍手くださった方、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 有間カオル 

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