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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌』柴田 よしき 

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌風のベーコンサンド 高原カフェ日誌
(2014/12/10)
柴田 よしき

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東京の家族と仕事から離れ、百合が原高原でひとりカフェをはじめた奈穂。
百合が原高原はややさびれた別荘地だけど、美しく澄んだ自然に抱かれ、地元の牧場の新鮮な乳製品に天然酵母のパン、有機野菜、美味しい食べ物がたくさん手に入る、恵みの土地だった。試行錯誤しながらメニューを考えやりくりし、食材を提供してくれる地元の人たちと交流を深め、馴染んでゆく奈穂。
東京を離れる原因になった深い傷から、少しずつ、立ち直りはじめ——。


自然豊かな高原で、料理の美味しいカフェをはじめた女性、奈穂さんの物語。
以前読んだ『和菓子のアンソロジー』に収録されていた一編がこの作品の一部であることを聞き、そしておいしそうなタイトルとあらすじにも惹かれ、ずっと気になっていたお話でした。
実際に読みはじめてみたら、作品舞台がゆりの花咲く「百合が原高原」で、自分自身の名前的にも親しみを覚え(笑)、お話もとても読みやすくて心地よく、すっかり気に入ってしまいました。

高原の澄んだ心地よい空気と、自然の恵みと生産者の真心やこだわりが存分につまった食材、そして食材のよさを生かすため工夫をこらしてていねいに作り上げる奈穂さんのお料理。
奈穂さんのカフェをたずねてくる地元のお客さんたち。
夢中になってぐいぐい読んでしまうというよりは、少しずつ、また少しずつゆっくりとていねいに読んで味わいたい、そんなお話でした。

ただふわっとお洒落なカフェの話と言うだけではない、奈穂さんたち何人もの女性の心と生き方にていねいに寄り添い、苦しみや喜びが切実に私の心に迫ってくるところが、さすが柴田よしきさんだなと。
家族と家業をひたむきに愛して一心に働くひよこ牧場の南さん、農家の嫁で心に抱えるものある小枝さん、喪失の悲しみとパン作りへの姿勢に悩むあおぞらベーカリーの雅美さん、そしていわゆる「モラハラ」夫との生活に疲れ果てて心の充電を静かに続ける奈穂さん自身。
奈穂さんと村の女性たちが、奈穂さんのカフェで奈穂さん心づくしのメニューを食べながら、お話をしている場面が、どれもすごく好きだったのでした。特に小枝さんの現状の苦しい気持ちを思いやってのロールケーキや栗ごはんには涙しました……。分かり合える存在のありがたさ。

男性陣も良かったのですよ。
奈穂さんの夫の滋さんも、こんな性格になってしまった理由があるといえばあり、読んでいくごとにそこまで嫌いなひとではなかったかな。というところまで。いや、奈穂さんをここまで追い詰めた事実は消せないですけどね。
そして謎の田中さん。途中からなんとなく正体の予測はついていましたが。
『秘密の花園』とからめたごくシンプルなベーコンサンドは、このお話の中で特に魅力的な食べ物でした。
いつでも仕事熱心で自然体に奈穂さんを助け寄り添ってくれる村岡さんも、素晴らしい。
恋愛色はほんとうに淡くお互い仕事ひとすじなのですが、この話の澄んだ空気にはこれくらいの淡さが良いです。
ラストのリリーフィールドホテルでのお食事の場面、本当に楽しそうに料理の分析をする奈穂さんと、彼女の話に耳をかたむけより料理を深く味わえると笑う彼、素敵でした。

ひよこ牧場のクロテッドクリームをたっぷりそえたスコーン、ベリーのソーダ水、野生の百合根のポタージュ、鶏の豆乳クリームシチューとバターライスの取り合わせ、きのこのオムレツ。
全部食べたい……特に美味しいバターのバターライスとあえて豆乳で作るシチューとの取り合わせにはうなりました。
パン好きなものであおぞらベーカリーのパンも本当に食べたい。

ちなみにアンソロジーの方で読んでいた『融雪』、比較的ストレートなつくりのある男女の物語。
男前な口どけって、格好いいです!
淡雪寒も牛乳寒も食べたいです。

リリーフィールドホテルのことも、奈穂さんの単純なライバル、敵かと思えば読んでいるとそういうわけでもなく、奈穂さんそしてこの村の懐深さというのか、そういうのも良いなあと思いました。
たしかにホテルにはない奈穂さんのぎこちなさも、言うならば、魅力なのです。
カフェの経営のことや冬越しの大変さもさらりとですが書かれていて、興味深かったです。


美味しいベーコンを買ってきて秘密の花園のベーコンサンドを作ろうかな。
心が洗われる、美味しい物語でした。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 柴田よしき 

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