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『かなりや荘浪漫 廃園の鳥たち』 村山 早紀 

かなりや荘浪漫 廃園の鳥たち (集英社オレンジ文庫)かなりや荘浪漫 廃園の鳥たち (集英社オレンジ文庫)
(2015/03/20)
村山 早紀

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雪のクリスマスイブ、職と家を失いケーキを手に寒空に放り出された茜音は、天使のような少女の導きで古い洋館アパート「かなりや荘」に迎え入れられる。
心に悲しみを抱え、けれども茜音に優しく接してくれるかなりや荘の住人たち、そして天才漫画家であった青年の幽霊・玲司。漫画の敏腕編集者であった美月。
彼らとの出会いを通して、茜音に新しい人生の道が開かれることに——。


村山先生のオレンジ文庫からの新作です。
村山早紀さんとオレンジ文庫(プラス、心の中でコバルト文庫とつけたす)の取り合わせ、思いがけませんでしたが、これは読むしかないです。
オレンジ文庫創刊の広告にタイトルのみ載っていたころからずっとずっと楽しみに待っていました。

表紙の楽園のように美しい花園と美しいタイトルに、実際に本を手にしてうっとり見惚れてしまいました。
あまりにくもりなく明るい平和な花園で、どこかあの世にもつながっていても不思議でないような。3月に青空の美しい花園に出会うと、やはり、あの出来事を思い出さずにはいられないです。
うたを忘れたかなりやたちの花園、サブタイトルの「廃園の鳥たち」、きれいで物悲しいひびき。
登場人物たちの表情が可愛らしくて優しい感じでこれも気に入りました。ヒーロー君男前でとても格好良い。
そして、オレンジ文庫ではじめて登場人物紹介の頁をみつけて嬉しい!あとがきも嬉しい(笑)

お話の中身は、ひとつひとつのパーツがすべて愛おしく、ゆっくりひたってを繰り返して読み進めるため、頁の割に読了までかなりの時間が(笑)。だって心地よすぎて読み終えるのももったいなかったんですもの。
老夫婦の菓子屋で丁寧に作られたバタークリームのクリスマスケーキに、笑顔が素敵なサンタの勤労少女、きらりとひかる雪の結晶、ガラスハートの美貌の女流小説家。最初からこんなに素敵なものばっかり出てくる物語!

苦労性でお人好しで、お絵かきと漫画が大好きな茜音は、素直に応援できるたいへん好もしいヒロイン。
人間が好きで、いつも笑顔で、周りのひとを幸せにできる。こうありたいと素直に思える。
漫画の才能をひめた天才少女が、訳あって正体を隠していた敏腕編集者に見出され……なんて書きだしてみると王道チックなストーリーですが、村山先生テイストの王道ストーリー、わくわくどきどきもありとても好きでした。

辛い挫折を経てかなりや荘でやさぐれていた漫画編集者の神宮寺美月さん。準ヒロインでしょうか。
彼女が茜音のスケッチブックに目を落として、茜音の才能を見出した場面が、この作品の中でいちばん印象に残った場面でした。ぞくぞくしました。
まるで『はるかな空の東』でサーヤの導きで紋章の光が溢れ出してきた場面のような印象。
あれですよね、村山早紀さんの描かれる、ヒロインの数歳年上の頼れる強いお姉さま的ポジションの女性は、やっぱりいいなあ~格好いいな~ということで。ハヤミさんに惚れたころから変わらぬ個人的楽しみどころです。

天才漫画家の学生さんで若くして亡くなった紅林玲司さんも、魅力的なヒーローでした。
気難しく人間嫌いなワーカホリック……なんてイメージとはちょっと違って、本当の姿は年相応の気さくで親しみやすいお兄さんで、こちらもたいへん好もしい。黒づくめの服の真実とか、ちょっと微笑ましいエピソード。
死んでしまった玲司の分、漫画家への道を歩もう、そして玲司は茜音の伴走者になろう……。そんな茜音と玲司のふたりの新しい関係が、素敵だな。
茜音と玲司の人徳と前向きさのおかげか、今のところ玲司の立場には悲しさは不思議とうすくて、心地よく眺めています。
美月さんの救済のエピソードもあり。東北弁での幼馴染との会話が優しくて切なくて。

美月さんと玲司くんサイドで語られる、漫画家のお仕事や才能のお話、編集者のお仕事、編集者の才能を見る目など、業界の裏事情あれこれもとても興味深く読みました。

そして茜音の母親、寡作の小説家のましろさん。
茜音を放って消えてしまった序盤では、なんて無責任な……と怒りを覚えてしまいましたが、困ったお母さんですが、確かに美月さんが後々語ったように、それでも自分の筆ひとつで娘をなんとかここまで育ててこれたのは、すごいことだとも思いました。
親戚のたらいまわしで辛い思いをしていた幼い茜音を迎えに来た真っ白なコートのましろさんの場面、胸がきゅうっとしました。ましろさんだって本当は分かってるんだよ、色々。
茜音さんの父親の方のエピソードも意味深で気になる。
『あわゆきひめ』、繊細でロマンティックで素敵なお話だな。
美しくて儚い雪女のような、存在そのものがおとぎ話めいたお方といいますか。

かなりや荘の他の住人、カーレンや楡崎氏やマダムや、今回は顔見せ的な登場でしたが、垣間見えるそれぞれの悲しみと茜音への優しい笑顔。
今後のお話でまた見えてくる事情がきっとあるのでしょう。楽しみです。
皆のお父さんみたいな楡崎さん格好いいな。
お父さんがいる風景が好きな茜音が私も好きです。
茜音の親友ユリカも出番少な目ながらも親友を手段選ばず守る姿が良かったです。

ところで、作中で玲司君が食べていた三日月パン屋のメロンパンが、すっごく美味しそうで。食べたい!
より正確に言うと、夜焼きたてのメロンパンを買ってきて、朝ごはんにするため袋を部屋において、ほのかな甘い香りにつつまれて眠りにつきたいです。私も朝ごはん用に美味しいパンを買ってきた夜にパンの香りをかいだり袋の口を少しあけてのぞいてみたりものすごく満ち足りた気分になるので、玲司の気持ちがとてもよくわかる。
そして三日月パン屋って、『コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状』収録『魔法の振り子』に出てくる美味しい焼きそばパンの店だと分かって、いっそう美味しそう。
いいお肉を使った薫くんと薫子さんの焼きそばパン本当に美味しそうで好きなエピソードでした。
このお話を読み終えた後で『魔法の振り子』読み返して、また泣いて、そしてチョコプラリネクロワッサンもおいしそう。食べたいです。

エピローグにはじめて玲司視点の語りが出てきて、茜音への玲司の感情が思いがけず甘く優しくて。
もしかして淡い想いのはじまりなのかしら。
個人的にはロマンス大歓迎ですが、先行きのことを考えると、甘美であると同時にものすごく辛く切ない展開になりかねないので、うむむ。複雑!!
いや、先のことは分かりませんけどね。いろいろ。
実は美月さんのことを少々苦手にしていたらしい玲司にちょっと笑いました。

鳥がいろいろな場面で象徴的に使われていて、そういうのも『はるかな空の東』に私の中でつながっているのかもしれないな。小鳥のオルゴール。

続き物のお話ということで、楽しみが増えました。
茜音の成長にとても期待しています。
かなりや荘の住人たちそれぞれの深いエピソードも読んでみたい。

『コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状』

コンビニたそがれ堂―奇跡の招待状 (ポプラ文庫ピュアフル)コンビニたそがれ堂―奇跡の招待状 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2010/01)
村山 早紀

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魔法の振り子のあまりに悲しく愛おしい恋のお話が大好きです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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