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『皇女アナスタシア 〜もう一つの物語〜』一原 みう 

皇女アナスタシア 〜もう一つの物語〜 (コバルト文庫)皇女アナスタシア 〜もう一つの物語〜 (コバルト文庫)
(2014/10/31)
一原 みう

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革命政府に銃殺されたとされるニコライ二世一家の末皇女・アナスタシアが、ベルリンで保護され生きているという情報が。
ロマノフの膨大な遺産をつぐことになる彼女は本物か偽物か?
世間がセンセーションに沸く中で、皇帝一家に仕える医師の息子でアナスタシアの幼馴染だったグレブは、姉ターニャに情報を得てひとりドイツへ向かうことに——。

コバルト文庫の新人作家さん・一原みうさんによる、皇女アナスタシアをメインにしたロシア歴史もの少女小説でした。
デビュー作の『大帝の恋文』も読んでとても好きだったのでこの作品も……と読んでみる。
うわあ、とっても良かった!泣きました!かなりの個人的ヒット少女小説。
今週ずっとこのお話を読み返し続けて世界にひたりきり、何度も涙して。すっかりはまりこんでいました。

ロマノフ朝最後の皇帝一家の末娘・アナスタシアがヒロインの物語。
ロシア史全然まったく詳しくない私なので、史実がどうであったかなどぼんやりとしか知らず、新鮮な感覚で読ませていただきました。

避けられない悲劇へと、少しずつ傾いてゆく皇帝一家の最後のすがたと宮中の陰謀劇、アナスタシアとグレブの幼馴染同士の淡い想いの行方。ぐいぐい最後まで読ませるものがありました。
滅びゆくものの刹那の美とそこに花ひらいたひそやかなロマンス。こういう歴史ものコバルト文庫良いですね。大好きです。

ここからの感想は念のためネタばれご注意ください。


現実を見ようとしない皇后や病気がちの皇太子、身分のないラスプーチンを盲目的に慕う女性たち。
基本優しくていいひとたちなんですが、その姿はながめていてどこかいびつで、暗い予感めいたものが常にただよっている。
皇太子の病の情報をもらさぬよう宮殿に引きこもってひっそり暮らす一家の中で、はねっかえりで冒険好きで生命力あふれるアナスタシアはひとり異質といえば異質。
アレクセイを溺愛するあまりにひとり健康なアナスタシアに憎しみさえ覚えてしまうアレクサンドラ皇后の気持ちも、分からなくはないんだけど……家族のことを思って行動するのに裏目に出てばかりで、つらく当たられるアナスタシアの気持ちが痛々しく胸がふさがりました。大人しくて母親に従順なお姉さまたちも、アナスタシアの味方をしてくれるわけではなく。

そんなアナスタシアのことが、誰より大切で、彼女の困ったときにはいつもいちばんに駆け付けてくれるのが、皇帝付きの医師の息子の少年グレブ。
この幼馴染カップルの絆と年相応の淡い想いがもうとてもとても素敵で、心がほんわり優しくあったかくなりました。
天真爛漫なアナスタシアの笑顔やスキンシップに内心どぎまぎするグレブが可愛いです(笑)。
アナスタシアをひそかに慕いながらも身分の差はきっちりわきまえていて、あくまで騎士役に徹するグレブの姿がせつない。

怪僧ラスプーチンというキャラが、やることなすことうさんくささ全開なんですが、なんだかすごく不思議なんですけど、いいひとなんですよねえ。
庶民で粗野な言葉遣いや食事のマナーも不快なものではなく、病がちな娘をいつも気遣っている姿とか、人間味があり好感を持てました。
でもやっぱり怪しくて、只者ではなかったのですが。
無類の甘いもの好きで、アナスタシアをさそってにこにこブリヌイをほおばるラスプーチン、その真実とは。
アナスタシアとグレブがさんざんやきもきし危険な立場に追い込まれる羽目になった、ふたりの貴人の企て。ラスプーチンの最後にぞくり。
ミーチャのパートナーの真の姿にはぎょっとしましたけどね!
アナスタシアのことを考えているようで目的のためには切り捨てるミーチャにはちょっと憤りを覚えましたが、アナスタシアを絶体絶命のところで救いにかけつけるグレブがまた格好良くてですね!

そしてアナスタシア一家はついに宮殿を追われて流浪の旅へ。
このお話、読み返すたびに涙があふれる山場がふたつあるのですが、そのひとつが、アナスタシアとグレブの別れの場面。
凪かすみさんの挿絵のふたりの表情が絶妙。
ようやくアナスタシアにそっけない母の思いやりをみせたアレクサンドラ皇后にほろりとしつつ。
最後だからこそ、身分差を超えることを許されぬくもりをわかちあえた幼い恋人たちの姿があまりにいとおしくせつなく、ううう、書いているだけで泣けてきます。
あとから思うと、このふたりの姿をひっそりみていたからこそ、一家はこれからの計画を思いついたのかなあ。

そしてそしていったん別行動になった一家、アナスタシアとアレクセイとふたりの姉たちが、両親たちの行き先を追ってまた旅することに。
アレクセイの前に再び姿をあらわしたマトリョーナ。うすうす感じていたふたりの間に流れていた空気に、もしやと。
ラストシーン、もうひとつの山場です。最後の館に入ろうとするアナスタシアへの、家族全員の優しいあまりに優しい拒絶。アナスタシアをとりかこむマトリョーナやアレクセイや姉たちの挿絵がこれまた絶品で、読み返すたびに涙があふれてきます。
オリガお姉さまのひとことが特に泣ける……。

そうしてプロローグからのアナスタシアを探しに来たグレブ、アナスタシアを名乗る女性への再会と、続きます。
かつてのふたりきりの街歩きの思い出、プイーシュキをめぐるやりとりがまた素敵で胸がつまりました。
アナスタシアもグレブも苦労してもこういうところはまるで初々しいままで、やっぱりこの二人大好きだ!
悲劇のものがたりなのですが、悲恋ではないラスト。
アナスタシアに最後に贈られた一家の捨て身の愛情と相まって、切ないけれどもとても幸せな気持ちで頁を閉じられたのでした。

皇太子アレクセイとラスプーチンの娘マトリョーナのふたりの、ほんとうに気配だけ感じる程度の淡い関係も、印象に残りました。マトリョーナの覚悟は、もうあと何年か時間があったとしたら、甘いものに育っていたのかもしれない。想像をかきたてずにいられない(だってあまりに切ない)ところがまた美味しいです。

歴史もの少女小説、切ないロマンスが好きな方にはとてもおすすめ!!
ロシアの揚げ菓子プイーシュキもおいしそうで食べたくなりました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 一原みう 

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