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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『風呂ソムリエ 天天コーポレーション入浴剤開発室』青木 祐子 




天天コーポレーション研究所の受付嬢・砂川ゆいみは大の風呂好き。
同じ会社の入浴剤開発員の同年代の女性・鏡美月と、営業部の「御曹司」円城格馬と知り合ったことから、入浴剤モニターに抜擢されることに。
ゆいみと美月、格馬、風呂を愛する三人は、それぞれ理想のお風呂にたどり着くことができるのか——?


青木祐子先生のオレンジ文庫の新作。
現代日本の働く社会人が主人公の、日常お仕事ストーリー&ラブコメでした。
青木先生の読みやすく落ち着いた文章と厚すぎないボリュームで、さくさくっと読了。

お風呂のお話?ラブコメ?……読む前は疑問がぐるぐるしていたのですが。
まず表紙のイラストが、淡くやさしいパステルカラーで、主役をはるにはかなり異色なバスタブも可愛らしくて品があって、主張しすぎることも目立たないこともなく。
眺めているとふんにゃり和み、良かったです。
特にこのレモン色というのか、良いですね。なんとなく元気になれそうな色です。

お話本体もだいたい表紙のイメージそのままで。
電車の中でさくさくっと読み進めて、風呂馬鹿たちが繰り広げるラブコメにくすりと笑ったりきゅんとしたり、さあ今日も頑張ったからあったかいお風呂にゆっくりつかって、また明日頑張るかな……と、ゆるーく自然に前向きな気分になれる、そんな素敵なお話でした。

ゆいみと美月、同じ年頃で同じ会社で働いている若い女性ふたりが、価値観も性格もお仕事ぶりも何もかも全然違うんだけど、「お風呂大好き!」という情熱ですべてを乗り越えて結びついて、共に入浴剤開発に携わり友情をはぐくんでゆくさまが、読んでいていちばん好きでした。
ほどよく力をぬいて楽しんで生きてるけど、お仕事はきちんと頑張る、ゆいみのぱりっとした線引きが、好感を持てます。
美月さんみたいに情熱をすべて費やして仕事する姿も、また違ってますが格好良くて素敵。
どちらがいいとか、単純に比べられるものじゃないよな、と今の私はそう思えます。
ゆいみも美月も可愛いし同性として魅力的です。大事。
美月さんはなかなか個性的な方ではじめはゆいみと共に戸惑いましたが、だんだん彼女の不器用な可愛さ、融通の利かない生真面目さ、もろもろの魅力にやられてきました。
なんていとしいひとなんだ、美月さん。そりゃひそかに惚れられて何年も引きずられるのも無理はない……。
まったく自覚なしに恋している(たぶん)姿もそりゃもう本当にかわいらしいです。

ゆいみと美月のふたり以外にも言えることですが、各登場人物の心理描写がリアルでところどころ微妙にずれがあり、そのずれは特に修復されるものでもなく、それでも仲の良いことには変わりないというのが、とても青木先生らしいなと思いました。
だって別々の人間ですから。完全に分かりあえるって無理だ。
もっともずれまくってて、そのずれ幅が大きすぎて笑ってしまうというか本人同士の真剣さにだんだん気の毒になってきて応援の気持ちがしだいにわいてくるのが、美月と格馬氏のふたりでしょうか。

御曹司格馬氏は、ゆいみへの態度がはじめかなり失礼だな……とふーんと思ってた程度だったのですが(笑)、読んでいくごとにびっくりするほどの純情っぷり、不器用っぷり。
確かに格好いいけどもてないよな……。まあずっとひとりの女性しか見えてないみたいだからいいんだろうけど……。
幻の温泉での出会い、現代日本人としてはかなり珍しいシチュエーション。ぎりぎりコミカル。でも美しいです。
ふたりそれぞれ、とても純粋に恋に落ちたんですね。はじめはそうは思えなかったんですが。

ゆいみの元彼・高志君が、登場してくると意外とかなりいいひとで、正直格馬氏を軽く乗り越えてこの本の中の男性キャラで一番好きです(笑)。
いったん関係が壊れても、また歩み寄るための努力をできるって、すごい大切なんだなと思いました。というかここまでできる男の人ってそうそういないんじゃ。
ゆいみも高志もこだわりがすごくてそこがしっかりしていて、だからこそふたり惹かれたし、お互いのこだわりへのずれが、許せなかったのかな。
いざというときにゆいみをかばった高志君格好良かったです。パンもおいしそうです。正直私はパンの美味しさにいちばん惹かれる(笑)。

ゆいみの派遣同僚の由香さんや、秘書課の有本さんや、ゆいみの親友の春菜さんや、女の駆け引きも普通にありそれが特に否定されてるわけじゃないのも良かった。青木先生らしいなと思いました。いい意味で。
春菜さんも、きっといいひとなんでしょうけれど、このお話の中ではそのいいところがほとんど出てきてなくて好感度の薄いキャラになってしまってるのがかわいそうだったかなあ。

お風呂の入浴剤開発のお仕事の裏側がのぞきみられたのも興味深く面白かったです。
仕事中の入浴ってすごいな……なかなか具体的に想像つかないです。
理系なお仕事だなあ!調香師の芹沢さんとかすごくキャラが立ってました。
フルーツの湯開発ひとつでも世代や性別や価値観の差で感覚がずれてて意識のすり合わせが必要で、大変なんだなあと思いました。
あと薔薇園、特にデビュタントという語に、某少女小説シリーズを思い出さずにはいられませんでした。

さえこさん。顔だし程度の登場でしたが印象深い方だったので、もっと御曹司サイドからのお話も読みたかったな。
芹沢さんとか由香さんとかのお話ももっと色々読んでみたいです。

読み終えて、自宅の洗面所の棚を開いて、ずっと前にもらってきていた入浴剤の試供品で、その日はハーブのお湯に入りました。気持ちよく温まりました。

正統派ラブコメから、ふにゃりと力を抜いた感じのこの空気。変てこなんだけどロマンティック。上手く言えない(苦笑)。
格馬さんのちょっと外してしまってる感ありの残念な貴公子っぷりには、某ヒーローを思い出したりも。でも本物の貴公子なのでそれでもやっぱり格好いいところとか本当に!
少女小説を読む人にも読まない人にも行けるお話だと思います。


ここ何日かにそれぞれ拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 青木祐子 

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