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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『箱入り王女の災難 魔術と騎士と黒猫の序曲』三川 みり 




「エーデルクライン王国の宝石」と称される王女フレデリカは、王の一人娘で唯一の王位継承者・天使のような美少女。
しかしフレデリカは十六歳のある日、落馬事故にあう。不幸にも命を落としてしまう——。
そのはずだったのだが、気づいたときフレデリカは、召使の少女・グレーテルの体に乗り移っていた。
王女の死で混乱と悲しみに包まれる中で、フレデリカは「地獄の番犬」と名高い騎士イザークの助けを借りて元の体に戻ろうとするのだが……。

三川みりさん&あきさんコンビの待望の新作少女小説!
美しく善良な王女さまに侍女の女の子との入れ替わり……あらすじに私好みの要素が色々入っていてこれはおもしろそう!しかもあきさんの描かれる美少女!絶対拝まねば!と読む前からとても楽しみにしていました。

素直で気弱で芯はつよい(ただ趣味はちょっと変)王女様が、召使の少女の体に入り込んでしまい……災難や周囲の癖だらけの人々に振り回されながら頑張る物語。
「だいたい死んでる王女の冒険」……あとがきにあったタイトル案、た、確かに(笑)。
人の生死、負の感情にがっつり関わるシリアス寄りのお話だったのですが、『シュガーアップル』に比べてなんだろう、わいわいにぎやかで軽く読めるお話、という感じがしました。ドタバタ劇といいますか。

一度読み終えたばかりのときよりも、読み終えてしばらくしてから心にじわじわ響いてくる、私にとってはそんなお話でした。
三川みりさん作品のひたむきに頑張る女の子は読んでいて本当に私の背筋まで伸びる思いです。
最近私何だかだらけてるなー。フレデリカのひたむきさに今一度触れてしゃきっとしないとなー。
なんて自分を叱咤するために、ちょっと時間があいてしまいましたが感想をこうして書いております。

ヒロインのフレデリカの身に降りかかった災難が本当に半端なく……それまでの豪奢だけど寂しい生活ともあいまって、とても不憫な印象を持つ娘でした。
人に言われるまま完璧な王女様を演じ続けてきたフレデリカ、足りない部分は確かにあるけど、そんなのフレデリカのせいじゃない!とか私は思いながら読んでましたが。16歳のこんな育てられ方をした少女にそれ以上求めるのは酷でしょう。
彼女がこんな状態になって、無力さを痛感しながらも、愚直なまでに頑張り善良さを貫き通す姿に、だんだん真の味方がついてゆく。という王道な過程が良かったです。

ヒーローのイザークさんは怖い印象ばりばりでしたが、このお話の中ではむしろ一番の常識人でそっけないけど優しく頼れるお兄さんだった気がします。
最初王族貴族に悪意を抱いていたからよけいに印象が怖かったんだな……。
天真爛漫王子様に見えて実は……なユリウスも相当でしたが、このお話の中で一番食えないキャラは、一番無力な存在であるはずの台所番侍女の娘・グレーテルでした。
グレーテルはいったいどこまで知りえていてどこまで話の流れの糸をあやつっているんだろう……最後まで読んでちょっとぞくりとしました。底知れない闇をまといつかせているからこそ、最後の黒猫の語りがあんなに厳しくも心にあたたかく響いたのかもしれません。

イザークが取りあえず彼とグレーテルの故郷の村にフレデリカ(体はグレーテル)を連れ帰って、この村の人々がちょっと挙動不審なグレーテルに接するときのあたたかな愛情が、読んでいてなんだかとても素敵で、心和みました。
グレーテルの両親の娘への明るくおおらかな愛情が好きです。こんな家庭で育ち今もそんな両親が健在のグレーテルの過去にいったい何があったんだ……。
パン屋の主人とフレデリカとの会話場面も好きでした。鶏と少年のやりとりも。
グレーテルの小悪魔っぷりも輝いてました。ちょっとやりすぎじゃないかとも思いましたが、最後まで読むと、彼女もちゃんと考えてたんだな。

フレデリカとイザークとユリウスのなんだかとてもちぐはぐな三人が、それでもだんだん協力し合う姿勢がそろってきて、フレデリカとグレーテルの入れ違い修正のため無茶をごり押しして頑張っている後半展開も、良かったです。
フレデリカとイザークがようやく得た信頼のきずなが尊くじんわりと……。
ユリウスが明後日の方向に飛んでってしまわないかはらはらし通しでした(笑)。
ようやく元の姿に、と言う場面の、フレデリカの美しいドレス姿とぽかんとした表情のギャップがなんだかすてき(笑)。

あと私が好きだったのは、生き返ったフレデリカと両親の対面場面。
ようやく目に見える形で娘への愛情をしめしてくれた王妃様にちょっと私も泣きそうになりました。
ふだんからもうちょっと分かりやすく娘をかまってやっていればよかったのに……とも思いましたが(苦笑)。

グレーテルには色々思うところありましたが、確かに馬の事故の際に体をはって止めようとしてくれた彼女の行動にこそ、真実があるのでしょう。
グレーテルとイザークの過去に何があったのかも気になる。好きになってはいけない人ってどういうことだろう。
フレデリカとイザークのまだ恋と呼ぶには早すぎるあたたかなきずなも見守っていきたいけれど、グレーテルのことも、気になってしまいます。
とか気にしつつ、グレーテル本人は自分のことを心配されても鼻で笑ってそうな感じもしますが。

あきさんの挿絵がやはり期待以上の麗しさ。
正直ビジュアル的には素朴な黒髪美少女のグレーテルの方が好みな私(笑)。でも(本来の)フレデリカのゆるゆるロングヘアと華のある美少女っぷりもとても素敵!最後の黒猫さんとの会話シーンのフレデリカが特に好きです。ドレスもすてき。
イザークもユリウスもそれぞれの怖い魅力たっぷりの男前で良いですねえ。
ほんの少しあった甘い感じの場面の挿絵にはどきどきしました。

お話はまだ序章部分、これからが本番……という感じがするので、続きを楽しみに待ちたいと思います。

全然関係のないつぶやき
フレデリカ・アップフェルバウムに、ユリウス・グロスハイム、名前の響きでどうも、ユーハイムのバウムクーヘンを思い浮かべてしまい、お菓子が食べたくなって仕方なかったです……。グレーテルもあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルですし。笑。


ここのところそれぞれの記事に拍手くださっていた方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 三川みり 

この記事に対するコメント

こんばんは、「箱入り王女」買いましたよ!!
私、こういう入れ替わりものや異世界ものが好きで、ゆりさんのレビューに触発されて本屋へGO!GO!してきました。
まだ、死神に事情を尋ねて、お馬鹿ユリウスに寝室を覗かれソラマメさん愛好家であることがバレていた真実に驚愕するところまでしか読んでないのですが、これは面白いですね。
これからがフレデリカ王女の本当の冒険活劇みたいなところですかね。フレデリカだけに、ふれ~ふれ~デ・リ・カ!!と応援したくなる気持ちを抑えて・・・
他にも、過去の記事を拝見させていただきまして、螺旋時空のラビリンスとアナスタシアさんの本を合わせて買いました。革命ものやタイムトラベル系も好物です。

そうそう、昨日ネットを駆け巡った嬉しいニュースがあるんです。
これも異世界物と言えば異世界物で、主人公は男ですけど「ゼロの使い魔」ご存知でしょうか?
著者のヤマグチノボル先生は2年前に癌で亡くなられてしまい、未完の作品となってしまったのですが、遺稿として結末までのプロットとエンディングが編集に伝えられていたため、完結まで続編を出版することが決まったようなんです!!
もう未完の作品と割り切るしかないかと半ば諦めがあったのですが、完結に向けて動き出したので、すごい今ハイテンションです(笑)
興奮のあまり、つい長々と書いてしまいました(~_~;

URL | Sentimiento #CwgFBB8Y
2015/06/26 23:40 * 編集 *

Re: タイトルなし

>Sentimientoさん
コメントありがとうございます。

こんばんは!またまたいらしてくださってコメント残していただいて嬉しいです♪どうもありがとうございます。
『箱入り王女の災難』買われたのですね!
フレデリカは本当に愛すべき応援したくなるヒロインですよね♪
フレデリカだけに、ふれ~ふれ~デ・リ・カ!!……お上手です(笑)。
現時点ではもうラストまで読まれたところでしょうか、どうでしょうか。
最後の黒猫の語りがとても好きだったなと思います。

そして私の過去記事も読んでいただいて、ご興味も持っていただけたようで、とてもとても嬉しいです。
『螺旋時空のラビリンス』『皇女アナスタシア』どちらも2015年上半期の中で私的ベスト本なので、ぜひぜひぜひ、楽しまれてくださいませ。
三川みりさんの前作シリーズ『シュガーアップル・フェアリーテイル』シリーズも、フレデリカの頑張りがお気に召したならおすすめです。砂糖菓子職人の少女アンのひたむきな頑張りには心打たれるばかりです。
タイムトラベルものや革命ものなどがお好きならば、オンライン小説『Unnamed Memory』もおすすめですよ。とかこそっと私の好みをつけたしてみます。最新記事にもあるように番外編同人誌をもとめて東京まで行ってしまったくらいにはまってるオンライン小説です。

『ゼロの使い魔』、タイトルを知っているのみで未読なのですが、なんだか心にぐっとくる経緯ですね。
物語がかたちになり読み手に届くまで、商業小説、オンライン小説、どの物語にもそれぞれの道があって、果てしない心地にときどきなります。

長々コメント大歓迎です~ありがとうございました♪

URL | ゆり #SvKcs0as
2015/06/27 22:44 * 編集 *

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