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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ』白川 紺子 



京都の下鴨。
高校三年生の着物好き少女鹿乃は、兄のぐうたら古美術商良鷹と、近くの大学の准教授で下宿人の慧と三人暮らし。
亡き祖母からアンティーク着物のコレクションを譲り受け、同時に蔵にある「いわくつき」の着物の管理も引き継ぐことに。
親しい人たちに協力してもらいながら、着物とその持ち主の想いを記憶を紐解いてゆく——。


白川紺子さんの『下鴨アンティーク』待望の続編。やったね!
一巻目を読んでからあまり久しぶりと言う感じがしないのは、Cobalt本誌の方で短編を少し読んでいたからかも。

井上のきあさんの表紙イラスト&各話扉イラストが、やはり秀逸。
淡いピンクと水色の色味が柔らかく優しくて。
すべて読んでから改めて表紙を見ると、一層いとおしさが増す思いです。

一巻目に比べて登場人物も増え主要な人物像が深く掘り下げられ、鹿乃の物語の世界も広がりこなれてきて、一層完成度が増していました。
白川紺子さんの描かれる少女趣味さじ加減が本当に好きです。
アンティーク着物のそれぞれも物珍しく魅力的に描かれているし、各種小道具の描写もさりげなくお上手だし、各話挿入されているほんのりロマンスにはときめきますし!
和のものと西洋のものの組み合わせが斬新でセンス良いです。
鹿乃たちがしゃべる関西弁も慕わしく心に優しい。

『ペルセフォネと秘密の花園』
多分本誌の方で既読。
金髪碧眼のイギリスの美少女プリシラが持ち込んできた大伯母シャーロットの着物についての依頼。
明るく屈託なく生命力にあふれた少女プリシラが本当に「春の女神」のようで、読んでいて気持ちが明るく春めきました。
『秘密の花園』、最近読み返したところでした。あの花園が「装置」というのはなるほどと。そしてあのコリンの主治医は確かに独特。一歩間違えればサスペンスかも(笑)。
着物に蝶がとまり花が咲いてゆく描写が素敵。
日本の春の女神佐保姫の言葉の響きも美しいです。佐保姫と言えば氷室冴子さんの『銀の海 金の大地』が心の中に。
過ぎ去りし日の婚約者との切ない物語も良かったけれど、誓一さんとプリシラの組み合わせもなんだかんだ良い感じです。
春野さんの新聞部の情報網がとても侮れない!
鹿乃と慧さんのふたり食事風景もなごみました。肉詰めピーマンもしょうがのきいた竜田揚げもかぶの味噌汁も家庭料理らしく優しく丁寧な味わいが伝わってきます。慧さん几帳面だな。
最後の慧さんの「秘密の花園」に、ときめき心ぬくもりました。鹿乃がこのささやかな秘密を知るのはどれくらい先のことになるのでしょうか。

『杜若少年の逃亡』
新キャラ加茂さんと良鷹さんと慧さんのかけあいが楽しかった。加茂さんの空気読まなさ加減とどんどん不機嫌になってく良鷹の取り合わせが笑える……。
『伊勢物語』や能やシェイクスピアや、博学な男たちがゲームみたいにテンポよく謎を追って解いていく様もおもしろい。
杜若少年の秘密もオチがなんだかとっても素敵できゅんとしてしまいました。
馨のふふふ、と無邪気なほほえみが余韻に残るような読後感。
そして黒糖のつぶが残ったくまのホットケーキがなんだかとってもおいしそうなんですが!なぜこんな素敵なおやつをさらっと作ってしまえるんでしょう慧さんは(笑)。
妹をいじめた少年に良鷹さんがいったい何をしたのかもちょっと気になる。
良鷹氏のほうれん草とベーコンのチーズパスタも美味しそうでたしかにちょっと悔しい(笑)。

『亡き乙女のためのパヴァーヌ』
パヴァーヌ、という音楽の言葉の響きが私は昔から好きです。重厚で物悲しいイメージ。(私のイメージです)
タイトルの通り音楽がモチーフの着物の謎をめぐる物語。鹿乃の友人のクールビューティー奈緒ちゃんにスポットが当たった物語でもありました。
最初の場面のアンティーク着物でお茶会、楽しそうですね!みやびです。梅雨もこういう楽しみ方ができるって良いですね。
チェリーパイおいしそう。本当に昔の少女小説の世界だなあ。西洋美少女プリシラの存在感もきいている。
過去の身分違いの恋人たちの仲睦まじさがいとおしく、彼らを引き裂いた戦時中の悲劇には胸がしめつけられました。
想いをついに伝えられないままイトさんを喪った倫明さんの苦しみが。
そのあとの鹿乃の夢の中のふたりのしあわせそうな会話にまた涙がにじみました。
鹿乃たちと友人になったときの奈緒ちゃんの回想、協力して着物の謎をといていき、ピアノを弾く女子高生二人の描写も良かったです。
「この先あらゆる苦しみと悲しみが、この子の上を素通りしていきますように」ラストの慧さんの祈りが心に染み入りました。
はぐれたきっかけがお兄ちゃんの好物ベビーカステラというのもまたこのこらしくて。
奈緒ちゃんと加茂さんのふたりも、もしかして。ですね。
なにより慧さんが市で買っていたブローチの白い花、お話の流れからいくともしかして……とか匂わせ方がとてもお上手。
ふたりとも花言葉の意味とかそういうのは考えてないのでしょうが。

『回転木馬とレモンパイ』
雑誌で既読。
鹿乃視点からいったん離れて、鹿乃の兄の古美術商良鷹と、馴染みの骨董店店主の娘真帆さんのコンビが探偵役。老婦人のオルゴールの謎を追ってゆきます。
このお話を読んでいると、良鷹氏がわりとまともなお兄ちゃんやっているように思えてきます(笑)。そして兄妹ふたりそろっておばあちゃんっ子だったんだな!そうですよね!
慧さんと鹿乃ちゃんとはまた全然違うけどこの良鷹氏と真帆さんコンビもなかなか良い味出してる。
良鷹のだいたいぐうたらでときたまきらりと光るハイスペックさがなんかすべて含めて格好良いんですよね。ずるいですね(笑)。
百合子さんとそばにいた少女の過去の出来事はほろ苦くてちょっと切なくて、でもふたりともに確かに幸せに生きたという結末が、読んでいて優しいな。両家で焼かれ続けた絶品レモンパイがきゅんと甘酸っぱくて幸福感の象徴と言う感じがします。
真帆に着物を着せかける良鷹と鹿乃の兄妹も楽しかった。
真帆の過去の回想のふたり兄妹の祖母の葬儀の場面も印象的でした。
良鷹氏と真帆さん、また気になるカップルが一組増えましたよ!

まだ恋と呼ぶには少し早いのか、慧さんと鹿乃の関係がやはりとても気になります。
今回彼ら以外にも初々しいカップル未満が増えたので、彼らのその後もぜひ読みたいです。

井上のきあさんのイラストに不満はまったくないのですが、できれば、雑誌掲載時のイラストもあったらなあ。
みつあみ鹿乃ちゃんに着物でおめかしに困惑顔の真帆さんの挿絵がすごーくかわいらしくて素敵だったのに……。鹿乃のナイトふたりも男前なのに。


この何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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