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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『魔女は月曜日に嘘をつく』太田 紫織 




北海道は江別市。ハーブ園「フクロウの丘」には、人嫌いの魔女が住んでいた。
仕事と恋人を病気で失った青年犬居克衛は、「魔女」卯月杠葉が営む農園で手伝いとして働きはじめる。
不愛想でとげとげしい杠葉には、人の感情や嘘を見抜く不思議な能力があって——。

はじめて読みの作者さん。
おすすめをいただいて興味を持ち、かつくらの春号の太田紫織さん特集が心に留まってたのもあり、手に取ってみました。
最近とても魔女が素材のお話に弱いです。

心のざわざわした不安が、この本を読んでいるとすうっと静まっていくような、不思議な読み心地でした。
ヒロインの杠葉の性格はけして癒し系ではなくむしろとげとげしいし、人の心の闇もさらりと書かれているのに(特に第一話)、なんでなんだろう。
がつんと癖のある味と香りなのに清涼感あり飲むと身体がすっきりするハーブティーみたいな、うまく言えないけどなんかそんなイメージ。

杠葉の「魔女」としての生き方が、現代の北海道の農場でしっかり確立しているのが、読んでいて面白かったです。
限りなくファンタジー寄りででも実は地に足付いた日常生活の物語。という構造がなかなか素敵。
私の中の現実世界のヨーロッパでの「魔女」の知識って、どこから出てきたんだっけ……村山早紀さんの『風の丘のルルー』シリーズとか。梨木果歩さんの『西の魔女が死んだ』とか。過去読んだお話が色々混じったふわっとしたイメージ。
私がかつてハーブの本や赤毛のアンシリーズや色々な本で想像したハーブの花咲く農園での自給自足ライフに限りなく近くて、ちょっと憧れてしまいます。
とはいえあまりに世間知らずなのも事実で、でも彼女のそういう足りない部分は、ヒーローの犬居氏が常に上手にフォローしていってくれていたので、読んでいて安心でした。

農場を切り盛りしていくのは完璧でも人付き合いがとことん苦手な杠葉さんと、人当たりよく小器用に生きてゆける克衛さん。
ふたりが不器用に距離を縮めていきパートナーと言っても良い関係に少しずつ変化してゆく様が、読んでいて良いなあと思いました。
杠葉さんは確かにきつい部分が目立つけれど、彼女に常に悪気はなく、本当は心優しい娘であることがわりと初期の段階で分かったのが、良かったんだと思います。彼女のかたくなさや犬居さんへの攻撃的な言葉や態度にめげそうになりつつも彼女に自然な好意を持って読み進められました。
杠葉さんの人の感情や嘘を読み解ける力は、けして魔法というものではなく。
なんか、彼女の人嫌いの性格でこんな他人の感情の機微を読み解けるのって、幸運なのかそれとも一層辛いことなのか。それともこんな特技があるからこそ人嫌いに輪がかかっているのか。
犬居さんも良いですね。有能で取り澄ましたサラリーマンかと思えば意外と(失礼)純朴で柔らかい人で。年下娘の杠葉さんの風変わり、ある意味時代錯誤なやり方にとまどいつつも、彼女をけして否定せず従える姿勢が素敵。
病気を経ての人生の挫折がさらっと書かれているのが共感を呼びます。

『魔女は月曜日に嘘をつく』
表題作はなかなかシビアな人間関係のお話でした。でも最後の魔女の涙がすべてを浄化していったような。
ドクダミの災難は、お疲れ様でした……。
凪早さんの真意が分からないうちはちょっと不気味で怖かったのですが、凪早さんの舞子さんへの友情にちょっと泣きそうになりました。
メアリースイートのココナッツクリームパイがとてもとても美味しそうです。

『金曜日のカモミール』
幸治さんと美輝さんのふたりの様子を眺めていると、人と人とがコミュニケーションを取り合い仲良く暮らすって繊細で難しいことなんだな。と思いました。
幸暉くんの両親を想う本音には胸をつかれました。
『太陽と月のホットケーキ』のまんまるホットケーキととろとろ黄色いカスタードクリームの組み合わせが絵本ですがとても美味しそう……。
カモミールで仲直り、のしめが良かったです。

『日曜日の白鳥』
アンデルセンのチョッキのとげとげのイラクサがハーブのネトルだったとは……びっくり。
普通に仲良しになっている四人に和みつつ。特に幸治さんと犬居さんの男の友情が好きだ(笑)。確かにはたから見れば夫婦であるのが自然なんだろうな……。
髪飾りの件ではやきもきしましたが、ささいな二人の勘違いの行き違いと真犯人に、思わずほっと一息。
映画に行くことになった犬居さんと杠葉さんのふたりがふつうにデートっぽくちょっとときめきました。
杠葉さんが時々見せるごく普通の女の子らしいかわいらしさがギャップでどきっとしますね。
犬居さんが話していたフィンランドのもちもちパンケーキが美味しそう。

おやつのとうもろこしや食後のデザートの南瓜だんごや数の子ぷちぷち入りサンドイッチや、とにかく書ききれない北海道の食べ物の数々が美味しそうで、読んでいてとてもうらやましかったです!
大家さんの東さんや若奥さんの寧々さん、出番はあまりなかったけど存在感ばりばり。
いったいどのような経緯を経て夫婦になったんだろう。
星の名前がつけられたフクロウの丘の動物たちもいい味出してました。

最初に思っていたよりずっと好きなお話でした。満足。
このお話、最近二巻目が出ているので、さっそく読んでみようと思っているところです。
作者さんの別シリーズも読んでみたい。

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 太田紫織 

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