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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『棘公爵の花嫁 賭けをしましょう、旦那様』白川 紺子 




政争に敗れて失脚した父が亡くなり、窮地に陥った伯爵令嬢ジゼル。
商人の愛人になりかかっていた彼女を引き取ったのは、人嫌いで冷酷とうわさされる青年公爵バートラム。
どうやらバートラム、以前ジゼルの父伯爵との賭けに負けてジゼルを娶るとの約束をさせられていたらしい。
伯爵家が失ったものを取り戻すため、そっけないバートラムの心を得て協力してもらおうと決意するジゼルだったが——。

白川紺子さんのコバルト文庫の方の新作。
『下鴨アンティーク』の2巻目のお話がとてもとても好きで、香魚子さんの挿絵にも惹かれ、こちらも読んでみることに。
香魚子さんの表紙がコバルト文庫にしては大人っぽく落ち着いた艶があってすてき。
貴公子にドレス姿の令嬢に、個人的にどうしても『伯爵と妖精』のコミカライズのイメージが重なります(笑)。

前半パート、ヒロインのジゼルの心理描写がていねいで素敵で好感が持てました。
賭けなど持ち出しバートラムを手玉に取ろうとするしたたかさがはじめ前面に出てくるのですが、実のところ十七歳の彼女は精いっぱい心を張りつめさせていて、ふとした折に脆くくずれてしまいそうな不安定さが。アンバランスさに目が離せない。
何もかもひとりで抱え込んでしまうのも若さゆえだよね……周囲の人々目線になってもどかしくもあり。
一度実家に帰ってそつなく伯爵家の領地をおさめていたゲイリーに叩かれ、自分の未熟さを見せつけられしおれるジゼルは、心痛かったです。
なんだかんだ自分を見捨てずに伯爵家の件でも協力を約束してくれたバートラムに少しずつ惹かれはじめ、そうなったら今までの打算を引け目に感じてかえってバートラムに近づけなくなってしまったジゼル、健気で繊細な乙女心が可愛くてきゅんとしました。

バートラムは、人嫌いで干渉を拒絶する態度を貫いていても、実際は年下のジゼルをそこまで邪険にはできず、なんだかんだ甘い。そして少しずつジゼルにほだされてゆく彼の姿も美味しい(笑)。
ジゼルとバートラムは過去に辛い思いをしてひねくれた似た者同士なんですよね、ある意味。
ふたりが、お互いが耐えてきた心の傷を思いやりぎこちなく心通わせていく過程が、とても良かった。

ふたりの関係の転換点になる月夜の場面は挿絵込みでとても盛り上がりました。好きです!
バートラムがジゼルを呼ぶ「あなた」がなんだか好きです。ていねいで少しずついつくしみの情が増していって。

そして後半パートは、年の差新婚夫婦が甘い。とにかく甘い。
ふたりで協力して伯爵家を陥れた敵を追い詰めてゆく戦いもきちんと描かれていてどきどきなのですが、それがかすんでしまうほどに甘い(笑)。
バートラムは相変わらずそっけないままジゼルには甘く、たぶんこれが彼の自然体なんじゃないかなー。どんな甘い台詞もさらっととても自然で全然いやらしさがない……。
そしてジゼルの甘え方の初々しさ可愛らしさもたまらないです。彼女が少女らしくとまどう部分はバートラムが大人の包容力で自然に包み込み、危なげなくリードするのでストッパーがない(笑)。
バートラムの愛情は真摯ですみずみまで思いやりに満ちていて、ジゼルもバートラムの愛情を信じていて、読んでいてとても幸せになれるラブラブっぷりでした。
少女小説、コバルト文庫の甘さはこうでなくっちゃ!とずいぶん久しぶりに思いました。
キスのやりとりも好きですけど、私が特にお気に入りなのはドレスをめぐる186頁あたりのちょっとしたやりとり。
バートラムはどうせさっきまでジゼルが着ていたドレスの色も覚えていないけれど、それはちっとも彼の妻への愛情を損なうものではなく、それをジゼルもよくわかっている、という関係がとても素敵な夫婦のあり方で、胸がきゅんとしました。

王太子レオナルド様がなかなか良い性格をしていてなかなか良いポジション。
バートラム大好きでジゼルと一緒に彼を取り合うって(笑)。ジゼルに渡された指輪の使われ方も粋でした。
あとジゼルとバートラムそれぞれのじいやさんコンビが非常に良い味出してる。
はじめのうちはお互いの主人の結婚相手に不満を抱いて文句ばっかりだったのに、本人同士より少し先に彼らの関係の優しさに気づいて、色々やきもきし行動に出るふたりがとっても和みました。

久しぶりに甘々少女小説を読んで満足したなあ~と良い気分で頁を閉じることができました。
あの月の夜から続くロマンティックな余韻に、読み終えてからもしばらく抜け出せずにぼうっと浸っていました。

できればレオナルド様にも良いお相手が見つかってほしいです。
彼の立場ではなかなか難しいのかもしれませんが……。

レオナルド様といえば、登場人物や舞台がかぶっているということで、こちらの前作も読んでみました。



この兄にしてこの弟ありか!
ヒロインのエリアーヌがふたりの貴公子に構われいじめられ続けていてとにかく不憫でした。
このふたりが幸せに結ばれるまでのお話も気になります。クロードはあれからどれだけ頑張ったことか……。

二作品に共通することですが、白川紺子さんのドレスや装飾品や食べ物の描写はすべてていねいでとっても素敵で、読んでいると幸せな気分にひたれます。
『黄金の淑女』を読んでいたら、バターがじゅわっと焼きたてクロワッサンを食べたくて仕方なくなってきました……。

甘い少女小説を堪能したいときには特におすすめ!でした。
年の差カップルたまらない……ごちそうさまでした。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 白川紺子 

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