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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『かまどの嫁 1』紫はなな 




砂糖売りの糖堂家の長女・鹿の子が側室として嫁いだ先は、お稲荷様をまつる、陰陽師家宗家の旦那様。
ところが鹿の子は嫁に必須の霊力が全くなく、役立たずと離れに追われ、得た仕事は、御饌づくり。
ついたあだなは「かまどの嫁」。
そんな己の境遇を恨むことなく、今日も汗だくでかまどにはりつき菓子つくりにいそしむ鹿の子。
彼女が作りだす絶品和菓子の数々が、人とあやかしの心を、優しく溶かしてゆく——。


前々から気になっていたオンライン小説の書籍化。
発売前にネットでみかけた表紙が、あまりにも可愛らしくて一目惚れ。購入を決意。
書店で手に取ってみてもまた本当に素敵でした。
本の手触りも良い感じで、頁を開くとカラー口絵がついています。豪華です。
淡いピンク色と金のふちどりまじりの和風イラストがもう本当に可愛らしくて華やかで、キャラの魅力もよく引き出されていて、表紙を眺めているだけですでにかなりの満足感(笑)。

はんなり和風で風変わりな世界観が、読んでいて楽しい。
文章や話しことばに独特のリズムがあり、雅やかな空気を醸し出しているのも読んでいて楽しい。
人とあやかしがわいわいにぎやかにやってる関係やら鹿の子の和菓子製造法やら挿絵やら、物語を構成するすべてのパーツがそれぞれ上手く作用しあっていて、何とも言えぬこの作品独自の魅力を作りだしていて。
読み進めるごとに、甘く優しい宝物をほこほこ掘り出しているような幸福感が。
私的にはストーリーの流れよりどちらかというと雰囲気にひたりきり楽しむお話でした。

何よりこのお話の主役は、ヒロインの鹿の子が作りだす和菓子の数々。
物語のはじまりからして、お稲荷様の大好物・御饌飴の鹿の子レシピなのですから!
すずし梅のさわやかな水ようかんに、えんどう豆のこぼれ萩、冷やし白玉、お月見団子、こがし醤油の焼き団子。
それぞれの和菓子は、鹿の子が食べてほしい人を想ってこしらえるもので、その想いと作る過程とお菓子を食べてもらっている一連すべてのエピソード込みで、とてもとても魅力的なのです。
和菓子食べたいです。あんこから炊いた和菓子が食べたい。
すべてが浮世離れしたふわふわした物語なのですが、この和菓子への欲求だけは読み手の私が住む現実世界でも持ち越され、全くあらがえない。
素材はよくよく読んでいるとわりとありふれた食材ばかりなのが、よけいに欲求を強めてくれる気が。
とはいえ実際に自分で作るのには、ハードルが高いお菓子が多そうなのですが……(苦笑)。

人間、あやかし、入り混じってのわいわいにぎやかな陰陽師家のキャラたちのやりとりも、可愛らしくて楽しかったです。
鹿の子のあまりの冷遇にはじめは憤りを覚えずにいられないのですが、実は実は……な関係が浮かび上がってきます。
あんまりな待遇にもへこたれずに素直に労働にいそしむ芯の強い鹿の子さんもとても良いヒロインです。
鹿の子、陰陽師家よりは下かもですが良いお家でしっかり育てられたお嬢様なので、まっすぐ素直な育ちの良さを持っています。そのせいか変にひねてしまわないまっすぐさが好もしかった。お菓子にもその明るい素直さが表されてる気がします。
蔵馬の正体は、読んでいってなんとなく察しがついたのですが、雪さんとかびっくりしました。そっちの方か!
玉貴さんの真のお役目とかもびっくりしました。
蔵馬の、まさに「菓子を食わねば会えぬ娘」な、ちょっと切ないとびきり一途な想いが可愛らしい。
かたわらでわいわいがやがや彼の恋路を応援しているあやかしたちも可愛い。
唐かささん本当に健気でかわいいです。

でもなあ。蔵馬も確かにとても良いのだけど、私はやっぱり、あれだけ優秀で容姿端麗で恵まれた立場にいるのにいつも貧乏くじ引いてばっかりのお人よしな旦那様・月明様が大好きで、旦那様一押し!なんですよねえ(笑)。
えんどう豆のこぼれ萩の場面には、どきどきしました。
もう結婚し合っている同士なはずなのに、周囲の邪魔ばかり入ってぎこちなくすれ違ってばかりのふたりがもどかしいよー!!
そして誠実に謙虚に鹿の子を想い続けるラクももちろん大好きなのですが、うむむ、みんなあわせてどうすればよいんだ。まあ蔵馬はある意味別扱いなのかもしれませんが。
芋のおまんじゅうのエピソードすごく好きなんですけどねえ。
でも現状一番手は実は久助さんなんでしょうかね……。

小薪ちゃんや夏海さんや玉貴さんや、個性的な女性陣も良かったです。
これはもう皆鹿の子と旦那様の仲を協力してとりもっていってほしいな……(←個人的願望)
鹿の子ちゃんの想いはどこにあるんでしょう。

小薪ちゃんとクマさんのエピソードがとても初々しくて可愛らしくてよいなあ~。純朴な好青年大好きです。そう、ラクの想いも本当は応援したいんよ……(←複雑な読者心)

月明さんが仕える都の人間関係やら、月明さんの過去とか、鹿の子の身の上の何やら、色々気になる部分も多く、続きが気になります。
ネット上にあるお話を読んでしまおうか書籍のかたちになるのを待っていようか、少し悩み中。
でもこの挿絵が本当に可愛らしいのでたぶん書籍になるまで待っていると思います。

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 紫はなな 

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