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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『嘘つきたちの輪舞』一原 みう 




憂鬱な毎日を送るアンナに届いたのは、かつての腹心の侍女であったリリヤからの手紙。
10年前、名家の子息とアンナとの結婚時におこった不可解な事件。真相のひとかけらが今明かされる……。(『嘘つきたちの輪舞』)
薔薇園で3年前出会った名も知らない少女への淡い思慕からはじまる物語(『妖精の庭』)、毎年八月に一日だけアリシアの前にあらわれる不思議な幽霊の正体は……?(『八月の幽霊』)、三編収録の短編集。

『皇女アナスタシア』『大帝の恋文』でファンになった一原みうさんの新作コバルト文庫。
雑誌掲載作あり書きおろしありの短編集でした。
各話イラストレーターさんが違っていて、それぞれの物語によく合った美しいイラストが楽しめて、眼福!お得感いっぱいでした(笑)。
今回の短編集は、華やかな貴族社会のロマンスでありながら、どれも切なさほろ苦さといった要素が強いお話だったので、きらきらしたイラストで甘さが補われててちょうどよい感じ。

特に表題作はやるせない気持ちになるお話でしたが、こういうのが読めるのも短編集ならではですね~。

各話ごとに感想など。
『妖精の庭』
凪かすみさんイラストで、ちょっと『皇女アナスタシア』から世界が連続しているようなイメージで読みはじめる。
公爵様の妖精への願い事と、クリスティーナとの最後のダンスが優しくて切なくていとおしくて。
誰に何と噂されようとも、クリスティーナがオレグに向けた美しい微笑みがすべてなのでしょう。
雨上がりの薔薇の園、ほろ苦さやるせなさといった感情も、ふわっと甘く優しい夢の中にくるみこまれたかのような、うまく言えませんがそんな読了感でした。
オレグの方も、どうか、幸せな人生を歩んでほしい。マリアナが彼のことを愛しているのもまた確かなのでしょうから。

『夏の夜の夢』
扉絵の雲屋ゆきおさんのイラストが秀逸。
今回の短編集の中でいちばんお気に入りでした。
両親を亡くし寂しさでいっぱいだった少女アリシアの前に、年に一度現れる幽霊。
幽霊のからくりはなかなかややこしかったですが、こういう設定大好きです。ロマンティック!
はじめはつんけんしていたクラーク卿が、アリシアを理解者として心を許してからの姿が、なんだかとても無邪気で可愛らしくて好きでした(笑)。
アリシア、彼女の両親、祖母、ハドソン教授、そしてクラーク卿と、過去の事件に関して少しずつずれがあって皆がそれぞれ心を痛めていて、読んでいて切ない気持ちになりました。
アリシアと祖母が最後には心を通じ合わせることができたのが、とても良かったです。
アリシアとクラーク卿、幽霊の理解者としての結びつきからやがてそれ以上の仲になったふたり。幸せだったふたりを待ち受けていた運命にまた涙しましたが、最後まで読むと、きっとそういうことなんですよね。
最後まで読んでから改めて扉絵をながめると、アリシアとクラーク卿の仲睦まじい姿があまりに美しくて儚くていとおしくて、闇に沈むお花もドレスも美しくて、読み終えてしばしこのお話の世界にひたっていました。

『嘘つきたちの輪舞』
表題作。
アンナとリリヤ、キリルとエドゥアルド、四人の若者たちがメインになってつむがれる物語。
皆が皆、心を偽って、絵にかいたような平穏を守ろうと必死になっている様が、痛々しい。表面上はくもりない幸せな結婚式の準備期間なのでなおさら。
キリルは確かにあやしいなあと思っていましたが、案の定。
アンナとエドゥアルドが運命のいたずらのように出会い、次第に逢瀬を重ねるようになるのも、幸せながらに不安感がむくむくと。エドゥアルドの真面目さ謙虚さが、ね。
いくつかの不幸なピースが重なってのあの結末は辛かったです。確かに、皆が幸せになれるような結末もあったはずなのに。
信頼していた相手に少しずつ疑いの心が芽生えていく様がリアル。
特にエドゥアルドとアンナのふたりの終焉はやりきれない気持ちになりました。
優秀で主思いの侍女リリヤも心に激しいものをかかえていたんだなとあとになって思いました。

読み終えた後に心に余韻がじわじわと残るお話ばかりでとても良かったです。
一原みうさん、次はどんなお話を書いてくださるのか、とても楽しみ。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 一原みう 

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