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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『夢も定かに』澤田 瞳子 




聖武天皇の治世。
故郷の阿波国から采女として仕えるために上京してきた十八歳の若子。
同室になったのは、しっかり者で賢い笠女、愛らしい容姿で数々の男性と浮き名を流す春世。
器量は十人並みで不器用、みずからに自信もない若子も、宮中で様々な出来事にもまれるうち、次第にたくましさを身に着けてゆく——。

聖武天皇の時代に宮中に仕えた田舎出身の采女三人娘がヒロイン。
ネット上で存在を知り設定に惹かれて手に取ってみました。

日本古代史&女の子の友情ものが大好きな私にはとても美味しい物語でした。
若子と笠女と春世、出身地も性格も特技も全然違う同室三人娘が、足並みが常にそろっているわけでもないのだけれど、協力し合い、陰謀うずまく後宮で生き抜いてゆく姿が、良かった。
深山くのえさんの少女小説シリーズ『かぎろひさやか』の世界だなあ。
宮中でお仕事をしていたごく普通の女の子たちがヒロインのお話ってあまりないので新鮮ですよね。とても楽しかったです!
後ろ盾もごくささやかな下級女官の身の上で、それゆえしがらみもなくある意味気楽なんですよね。彼女たち。
ロマンスは、『かぎろひさやか』よりは大人風味。でもロマンスはけしてメインではないのが良かった。女たちの絆の方がずっとずっと強い。
思っていたより読み心地はライト。天皇に仕える身分でも素は十代の娘たちの行動に、ときどき、ああ、若いなあ……と感じ入ったり(笑)。

はじめはすべてにおいて頼りなくいじけていた若子でしたが(まあ、妹の代わりに出仕した……という彼女の事情を考えれば無理ないな……)、色々な事件や陰謀に巻き込まれ、笠女や春世に助けられつつ、次第に後宮での自分の場所を、それなりに築き上げていく様が、良かった。
同室の娘その一。笠女。出身地が私の住まいと近くてとても親近感を覚えました(笑)。学問好きなのに女だからと正統に評価してもらえず必死に肩ひじ張っていた彼女も、ある心あるひととの出会いにより、道が開けることに。
同室の娘その二。春世。十七歳の少女にして藤原四家の麻呂の愛人で一児の母。すごいな!彼女の独特の優雅でけだるげな口調やしぐさが采女たちの中でもだいぶ異質な雰囲気で、男君たちとの関係についてもさばけていて、なんだか私は彼女が妙に好きでした。離れて暮らす息子の浜足くんに会いに行く話は浜足くん利発な少年だったけれど、ちょっと、切なかった。
この三人が、なんかすべてがばらばらなんですけど、嫌味な上司や同僚とのいさかいや仲間たちの危機に対し、協力し合う姿勢がしだいにしっくり馴染んできて、良いんですよね。

歴史上の有名人物もお話にしっかりからんできてそちらも楽しめました。
お妃様や皇女様達の権力争いはやはりしんどそう……鶯事件の井上内親王が不憫で凛としたものをもっていて好きでした。彼女のこの先の人生をなんとなく知っている身には複雑だなあ……。
麻呂の愛人である春世の姿を普段見ている若子が、ああいう選択をするとは、意外でした。流されただけと言えばそうなのかもですが。
房前氏、確かに冷徹な権力者でありながらものごとの道理をきちんと持っていて、格好良かったです。淡い好意も分かります。

ラスト、のっぴきらならない危機に追い込まれてしまった同僚を、若子が女の絆を優先させきっぱりと守り抜く場面は、良かった。
春世も、最後に安らげる人を見いだせて、あの結末になってしまったのは切ないけれど、春世にはそれを同情するのは似合わない。かなあ。

読了後にネットで検索してみると、若子、笠女、春世、それぞれのその後の人生がほのかに辿れるのも、心憎い演出でした。
年月が経っても、特に若子と笠女あたりはときどき会っては親交を深めていたんじゃないかな。そしてときどきは、春世もお忍びで上京してきてお互いの近況話で盛り上がっていたんじゃないかな。想像してみる。

歴史もの少女小説好きさんには、特に楽しめるお話ではないでしょうか。おすすめです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 澤田瞳子 

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