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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『紅霞後宮物語』雪村 花菜 




三十三歳の女軍人・関小玉は、かつての相棒にして今は皇帝となった男に頼まれ、なぜか後宮入り。そして一年後、なぜか皇后になってしまう。
いきなり夫婦になってしまった文林との関係に戸惑い、皇后としての地位に自らの価値をいまいち見いだせない小玉だが、持ち前の前向きさとおおらかさで、型破りな後宮暮らしをはじめる——。


富士見L文庫の新人さんのお話。中華風後宮もの。
かつくらで興味を持ちネットで色々評判を読んでいても面白そうで、ここのところずっと読んでみたかったのです。

少女小説風に華やかながら、線が鋭く甘さがさほどない表紙イラストが、このお話の雰囲気をとても良くあらわしてる。
特に女性よりむしろ男性に好かれるという皇帝の色気ある美貌が……(笑)。

小玉のざっくばらんな語り口がなかなか読みやすいなとぱらぱらめくり、しだいに面白くなってきて一気に読んでしまいました。
若干文章のあらは感じましたが、ほとんど気にならないほどにストーリーとキャラに勢いがあり引っ張っていかれました。
なんといっても小玉という女性が、とても魅力的なキャラクターなのです。
ざっくりとおおらかで快活で情にあつく、破天荒に行動しているようで実は賢く色々わきまえている。軍人としては天才。
年齢にふさわしい落ち着きも兼ね備えた小玉、格好良すぎる!

彼女のなんちゃって(?)後宮ライフは、後宮らしい陰湿な嫌がらせもさしてダメージにならない、というかそもそも嫌がらせとして認識もされない、あっけらかんとコミカルな感じで、読んでてとても痛快で楽しい。
女らしさが全くないかと言えばそんなこともなく、皇帝の三男を心をこめ世話し育て上げている様がこれまた素敵。赤子にも好かれるよいひとなんですよねえ。
年若いお嬢さんたちがぱたぱた小玉のファンになっていくのも納得の展開なのでした。
高飛車でやり手の皇女様とのエピソードが小玉らしすぎる。あの抱擁の場面がしんみり良かった。確かにこれは皇后にならなければ得られなかった再会ですね。親戚になってるしね(笑)。そして贈り物選びの心の行き届きようが素晴らしくて彼女の実力を痛感したのでした。
寵愛の謎を探りにきた李才人もあっさり陥落。彼女は確かにいい味方になってくれそうです。

けれども彼女はけして好きで後宮に来たわけではなく。文林の事情があるのだろうと後宮にい続けてはいるけれど、肝心の彼の説明は、歯切れが悪く。
文林という皇帝が、なんだかものすごくよくわからない人なんですよねえ!(話の筋には直接関係なさそうですが、彼が皇帝に即位した経緯もそもそもよくわからない。)
小玉への情だけは分かりやすく透けてみえるので、そこは可愛げあります。文林視点での語りを読んでいると、このままでは彼がちょっと不憫だな~。なんかだいたいは文林の方が良くないんじゃないかという気もするのですが……。
我が子や後宮の他の妃たちへの執着の薄さと、小玉への想いの温度差が、ここまで極端なひとも、珍しいんじゃないですかね。
小玉は小玉で、彼の想いに気づいていないわけではなく、ただ彼女自身今は気持ちを持っていないというし。
大人のこじらせた関係は難しいな!
小玉はそれでもそうなったらほだされるんじゃないですかね、という清喜の意見を、信じたいのですが、どうなんでしょう。
まあ、「皇帝」であるのだから。確かに、これは、重い。
そのあたりの悩みを、梅花の助言を経て、自分なりに答えをだして後宮で勤め上げていく決意をする小玉のくだりが、良かったです。割り切りすぎだよ小玉。彼女らしいけれど!
最後までまるで甘い展開にはなりませんでしたが、こういう大人のしがらみありのあれこれも、ふとしたところでときめいたり、面白かったです。
三十代過ぎの女性として人生を色々思い悩む小玉の姿は、年の近い私には特になかなか共感を得られるものでした。基本前向きな小玉、そこまで深刻には悩まないので湿っぽくはなりませんでしたしね。

小玉の弟分?で宦官になってしまった清喜に、小玉と文林の腹心の女官・梅花のふたりが、小玉と文林のことをそれぞれの立場でよく理解していて、たいへん良い仕事をしてくれていました。
その他脇役キャラも癖がつよい人が多くて面白い。馬屋のご老人が好きでした。
どこであっても覚悟を持ち凛と生きるひとは格好良いなと思いました。

私が今まで読んできた中華風小説の中では(本格的なものはほとんど読んでないけど)、一番、かの『後宮小説』に近い感じのお話だったなあと、読み終えて思いました。
このお話、どうやら続編も出るらしいと聞いたので、楽しみです。
文林、報われるといいんだけどな。


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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 雪村花菜 

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