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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『隠れ姫いろがたり 紅紅葉』深山 くのえ 




帝の第一皇女にあたる純子(いとこ)は、三歳のとき何者かにさらわれ、老夫婦にひきとられ庶民として育てられた。
十二年後に素性が判明して都に戻されたものの、庶民の娘として育った純子に宮中の人間は冷たかった。
母女御の実家に移された純子のもとにある日やってきたのが、先々帝の皇子である青年・兵部卿宮・理登(あやなり)。
書や楽器の名人であり純子の教育係としてやってきた理登と純子は、身近に接するうちに少しずつ、心を通わせていく——。


深山くのえさん&あきさんコンビの新作少女小説。今回は平安時代が舞台。
『浪漫邸へようこそ』が早めに完結してしまいちょっと寂しかったのもあり、新刊情報は嬉しかったです。
深山さんは『桜嵐恋絵巻』で平安ものイメージは前々からあったのですが、あきさんの描かれる平安ものってどんなかしらと予測がつかなくて、実はけっこうどきどきしていました。

実際に読んでみて、いやあ、まったく期待を裏切らない安定の深山さん少女小説!あきさんの完成度高い挿絵!
今回も十二分に堪能しました。相変わらず私好みで素晴らしかったです。
年の差カップルもの(八歳)としても何気に美味しい。

今回のヒロイン・純子さん(名前をつい、すみこさん、と読んでしまう……苦笑)は、身分は帝の第一皇女とこの上なく高貴なお姫様ですが、幼いころさらわれてずっと庶民として育ち働いてきた女の子。
素性が知れて都に呼び戻されるのですが、当然、深窓のお姫様らしく振舞えるはずもなく、価値観や考え方も全然違う。
心ない陰口やさげすみの視線に内心傷つきつつも、それでも彼女は反発することもなく、新しい環境に身を置くため、真面目に必死にしきたりや読み書きを身に着けるため頑張ります。
お姫さまにふさわしくなるよう頑張る一方で、持ち前のまっすぐな心の持ちよう、好意や優しさを飾りなく相手に伝えようとする姿勢、そういう美質は、損なわれることなく。
ふたつの姿勢はときに矛盾するのでよけいやり辛そうなのですが、そういう不器用で健気な姿がまるごと、愛おしくてならないヒロインです。

対する理登さんは、堅物で無表情だけど、貴族の価値観を超えて、そんな純子さんの事情をひとつひとつ汲み取って誠実に接してくれる。単に甘く優しいのとは違う、精神の柔軟さとまっすぐさがとても良い。
純子さんへの接し方の安定感も心地よかった。そこは八歳の年の差か。
おだやかで知的でまじめな好青年、深山さんヒーローもやっぱり安定して大好き。
そんなふたりの勉強の時間、お互い少しずつ相手のことを知り心通わせていく様が、読んでいて本当に心ぬくもり良いものでした。

けれど、ふたりは一度、突然に引き離されてしまいます。
理登の優しさを心の支えにしていた純子さんの嘆きが痛々しかった。
と同時に、終始淡々と冷静にふるまっていた理登の方の落胆っぷりにも驚かされ胸をつかれました。
彼はここまで深く純子さんを心にすまわせるようになっていたのか、と。

が、理登さん、ここで予想外に大胆な行動に出てくれました。まさか彼みたいな堅物な人が、宮中の女人たちも巻き込みこんな大がかりな根回しをするとはびっくり。格好良かったです。
心通わぬ母と兄宮からようやく離れられた純子さんの元に、再びたどり着くことができた理登さん。
淡々とストレートな彼の愛のことばがものすごくときめきました。
「恋をする覚悟ができた」、なんて、なかなか言えない台詞です。なんかこれが理登さんのキャラのイメージによく合っているんですよ!格好いいんですよ!
素直で心から相手を信じる純子さんのかえしもとても良い。
ふたりの仲が思ったより早く進んだのにどきどきしました。いいですねえ。幸せ。
別れ際の理登さんの気配り、後朝の歌のことまであまりにこのふたりらしくって、ああ、生真面目同士のカップルって大好き(笑)。

ただ今恋が成就しても、どうも物事はそうすんなりまとまらなさそうで、先が気になりますね。
純子さんをさらった犯人のこと、何かにつけ純子さんに冷たい態度の母親の思惑もよくわからないし、宮中の勢力争いも不穏だし、理登さんの方の悪い噂も、本人は気にしてなくてもこれからどうかかわってくるのか。

純子さんのそばに常に頼れる味方でいてくれた老女房の高倉。彼女の存在は心の支えでした。格好良かったです。
(しかし高倉が直輔ともつながりがありそうとか単純な人間関係じゃないのがやや気がかり)
花野や彼女の上司の女官たち、純子さんが宮を移る際についてきてくれた女房たちと、純子さんを慕ってくれてる女性たちもしだいに増えてきて、仲良さげなやりとりにこちらも嬉しくなってきました。やっぱり深山さん作品はこうでなくては。

理登さんの方の友人の直輔さん。有能で変に飾ったりしないよいひとですね。
高倉への文のこともあったし、もしかしてそれ以外にもこのひと、麗景殿でふたりが出会えるように、意図的に会話で誘導したのかしら。とか勘ぐったり。食えない人です。
とてもよい友人さんだと思うのですが、お家の事情を考えると、完全に理登たちの味方でい続けてくれるとはかぎらない……のかもしれないなあ。なるべく辛い展開にはならないといいのですが。

そんなこんなで、続きが楽しみな少女小説シリーズがまたひとつできて、とても嬉しいです!!
純子さんが縫い物上手という設定がまだほんの少ししか生かされていない気がするので、次巻以降で期待しています。
理登さんは和歌も普通にさらりと詠めそうだし純子さんもお勉強頑張っているので、和歌関係のエピソードもあると、嬉しいな。後朝の歌の補足もちょっとほしい(笑)。
宮中の働く女官たちに光があたるお話って、そういえば『嘘つきは姫君のはじまり』もそうだったし、『かぎろひさやか』や最近読んだ『夢も定かに』や、わりと色々読めるんですね。お姫さまとはまた違った女性たちの姿は読んでいて楽しいです。
もちろん主役の純子さんがいちばん気になるのですが。

そうそう、あきさんが描かれる平安貴族の挿絵もまた素敵で良かったです。比較的やわらかくやさしいタッチの挿絵になっているなと感じました。
純子さんの愛らしさにやられてしまいました。理登の無表情美青年っぷりも良かった。花野ちゃんもかわいい。でもいちばんはまっていたのは華やかな貴公子っぷりを発揮していた直輔さんかも(笑)。
109頁のふたり向かい合う横顔の挿絵がいちばん好きです。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

この記事に対するコメント

ゆりさま。はじめまして。

以前からブログを拝見していて、いつかお礼を言いたいと思って、今回コメントすることにしました。私は、昔からラノベやミステリは読んできましたが、少女小説は手を出してきませんでした。ですが、こちらにたどり着き、少女小説の魅力を知り、少女小説、少女マンガを読むきっかけになりました。ありがとうございます。村山早紀さん、深山くのえさん、白川紺子さん、一原みうさんなど、いろんな方の少女小説を集め読むようになりました。イラストのあきさんを好きになるきっかけにもなりました。シンデレラ伯爵も楽しみです。

ゆりさまのおかげで、食べ物や衣服の描き方にも注目するようになり、私も、より綺麗なもの、美しいものにあこがれを持つようになりました。私自身は甘いものは好まないのですが、ブログでお菓子を紹介されると自分も物語の世界を体感できるようで嬉しいです。これからも素敵なブログを楽しみにしています。

最近、私は「薬屋のひとりごと」にはまり、巻を重ねるごとに面白くて繰り返し読んでいます。主人公の猫猫はかわいいし、周りも個性的で4巻が待ち遠しいです。食べ物もちょくちょく登場してそそられます。興味がありましたら、ぜひおススメしたい作品です。

ではまた。長文失礼しました。

URL | ねね #-
2015/09/01 12:17 * 編集 *

Re: タイトルなし

>ねねさん
コメントありがとうございます。

こちらこそ、どうも、はじめまして!
このたびはネットの隅にうずもれているこんなブログを見つけていただいて、読んでいただけて、こうしてコメントまでいただけて、とてもありがたくうれしい気持ちでいっぱいです。
そしてこのたびの、ねねさまのすみずみまでお心のこもった丁寧なコメント、読ませていただいて、あまりのありがたさに思わず涙ぐんでしまいました。
こんな風におっしゃっていただける方がおひとりでもいらっしゃるならば、ブログを今まで細々書き続けてきた甲斐があるというものだなあ、本当。としみじみしてしまいました。

少女小説、この年になっても、なぜかずっと大好きです。(昔は学校を卒業したら少女小説なんて読まなくなるんだろうなーと思いこんでいたのですが……)
ねねさんが挙げてくださった白川紺子さんや深山くのえさん、村山早紀さん、一原みうさん、皆さま私の一押し作家さんです。
お気に召していただいたようで本当に良かった!
あきさんの挿絵も本当に大好きで、あきさんの挿絵につられて読んだ少女小説数知れずです。

そして私は食べ物や衣装や自然や背景の描写を楽しむのもとても好きなので、ブログの感想のそのような部分に目を留めてくださったことも、とても嬉しく思います。
自分の大好きなものをいかに美しい言葉で分かりやすく伝えられえるかは私の目指す高みのひとつなので、今後も精進してゆきたいです。
(まあ、あまり深く考えずにてきとうに書いている方が多いんですが……実際のところ)

『薬屋のひとりごと』、今のところ一巻のみですが、私も読みました!
猫猫可愛いし周りも面白い人ばっかりですよね。いつの間に、四巻まで出ていたんですね!読まなければ。
おススメいただきありがとうございます~♪

長文コメントありがとうございます!読むのも書くのも大好物です(笑)。
今後も、お時間あるときにでもたまに遊びに来ていただけますと、たいへん幸いです。


URL | ゆり #SvKcs0as
2015/09/05 22:53 * 編集 *

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