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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『コンビニたそがれ堂 神無月のころ』村山 早紀 




『コンビニたそがれ堂』シリーズ第五弾。
本当にほしいものがある人だけがたどり着ける不思議なコンビニ「たそがれ堂」。
神無月のころ、店長さんが不在のたそがれ堂の店番は、化け猫の少女ねここ。
青年が近所の聞く昔の美しい遊園地の物語、遺産相続で「幽霊屋敷」と噂される洋館をおばからゆずりうけた女性の物語、金木犀の咲くころのささやかであたたかな触れ合いの記憶——。
ちょっと怖くて懐かしくて優しい物語、全五編収録。


『コンビニたそがれ堂』ゆったりペースでのシリーズ第五弾。
今回のたそがれ堂は、「神無月」ということで、いつもの店長さんが不在。
代わりに店を守るのは、なんと、『奇跡の招待状』で登場した、化け猫少女のねここ!
ねここのお話大好きだったので、思いがけない形で再会できて、とても嬉しいです。わーい!

そして今回は表紙のイラストレーターさんもかわられていて。
ハロウィン柄の着物にエプロンをつけたねここが和風モダンでとても可愛らしいです。

今回の表紙に、私が最近ふっと思ったこと。
今までの『コンビニたそがれ堂』の私の中のイメージって、明るく淡い黄金色。でした。冬の昼下がりのひだまりみたいな。
シリーズ一巻目の表紙イラストみたいな感じの。
甘辛いお稲荷さんのお揚げの色、出汁をふくませことこと煮込まれたおでんの大根の色。
でも本当の「たそがれ」時って、もう少し、空は暗く深い色。なんですよね。私の中のイメージの話なんですけれど。
秋は日に日に暗くなるのが早くなってゆくので、帰り道の電車で「たそがれ色」に染まった外をぼうっと眺めながら本を読んでいて、なんとなくいろんなことを考えていました。

そんな風に考えた理由のあとひとつは、今回の『たそがれ堂』のお話の雰囲気。
ねここが店番をしているつながりなのでしょうか、シリーズ二作目の『奇跡の招待状』から直接連続しているような、いつもより闇がくっきり深い、異界にふとつながり連れ去られてしまうような、ちょっと怖い雰囲気が、読んでいて印象的だったのでした。
生者につながり想いを残す幽霊たちは、ひどく、『人魚姫』や『魔法の振り子』(どちらも『奇跡の招待状』収録の短編)をほうふつとさせるもので。
私は個人的にシリーズ既刊の中では『奇跡の招待状』がいちばん好きなので、ひやりとした読み心地も、とても、良かったです。
なかでも一番好きな『魔法の振り子』の薫子さんを見守り続ける薫くんの姿が、『三日月に乾杯』のあのにぎやかな人々の姿にも重なって、読み終えて、じわじわと胸にきました。

ちょっと斜にかまえててでも本来は人に愛されて育った猫、寂しがり屋できまぐれで、でも人間が大好きな女の子。
店にやってくる人たちへの視線がとてもねここらしくて、シリーズ特有のあたたかく優しい雰囲気はそのままで、そういうのも、良かったなあ。

『神無月のころ』
そんな感じで読んでいると、瑞穂ちゃんには、『雪うさぎの旅』を重ね合わせてしまう(笑)。
悲しい別離のお話だけど、淡く優しく可愛らしい小品。
空き地の隣にある小さな会社の若いお姉さんみたいなひとに、少しでも、近づきたい。

『幻の遊園地』
哲也さんと昭子さん、世代も生まれ育ちも全然違うのだけれど、ご近所つながりのふたりの交流が、とても好きだなと思いました。
昭子さんが語る過去の物語がきらきらあたたかくて美しくて夢のように素敵。風早の街は本当に魅力的です、こんな素敵な遊園地の記憶も内包していて。
ふたりの哲也さんつながりも、良い感じです。

『夏の終わりの幽霊屋敷』
廃墟のような古びた洋館を相続することになった翻訳家の女性がヒロイン。
まず「幽霊屋敷」とヒロインの名前の「真昼さん」の取り合わせが、秀逸。今回の本で私がいちばん気に入った部分は、ここかもしれない。
真昼さんという名前のひとを受け入れられるお屋敷は、たとえ廃墟のような幽霊付きであっても、悪いものじゃない。という安心感が、最初から心の中にありました。
怖がりな幽霊たちと遭遇し、自分自身の人生のこととか偉大な先輩でもあった叔母さんのこととか色々考えつつも、お屋敷と共存の道を選ぶ真昼さん。女性として共感して読めたのもあり、とても良かったです。
翻訳家としてのお仕事事情も、興味深く読みました。

『赤い林檎と金の川』
在心堂書店の斎藤さん再登場!
童話のような美しいタイトルではじまるふるさとの懐かしい物語、悲しい事故。
斎藤さんの過去にこんな物語があったとは。
最後のねここと凛子さんのひっそりした触れ合いに、ひやり、と。

『三日月に乾杯』
金木犀の香り漂う、父と娘の絆にほっこり涙する物語。でした。良いですねえ。
最後の方で、幽霊たちがあつまり語らいあう部分が、幽霊たちのあつまりなのに全然ホラーじゃなくて、優しくてあたたかくてとても好きでした。
特にファミレスの店員さんの女の子に想いをつげられないまま逝ってしまった青年のささやかなエピソードが、なんだろう、とても心に残りました。

金木犀の花が咲く頃に、もう一度読み返したい一冊になりました。


ここ連休中にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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