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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『悪辣執事のなげやり人生』他 江本 マシメサ 

小説家になろうさんで、同じ作者さんの作品を連続して四作読みましたので、ひとまとめにして感想メモを。
江本マシメサさんという方の作品です。

どれもとても好きなのですが、なかでもいちばん私好みだった作品から。

悪辣執事のなげやり人生
とある伯爵家で、女性でありながら執事として働くことになった、(一応)貴族令嬢・アルベルタ・フラン・ド・キャスティーヌ。
軍帰りの眉目秀麗だが気難しい旦那様、腹黒大奥様、気位の高いお嬢様、使用人たちもクセがある者ばかりの伯爵家で、ぽんと執事役を任されてしまったアルベルタ。
それなりに人生で苦労してきた彼女は、愛想の良さと勤勉さとあつかましさと諸々を武器にして、今日も伯爵家をかきまわしてゆく—。

ヒロインのアルベルタがいい性格してます。
二十代後半の男装執事です。無駄に?色気があり愛想のよい女性です。酒好きです。
苦労性で生真面目で有能でいい感じに空気を読まず、底抜けに優しくお人好し。
格好良すぎる。大好きです。読んでいてめちゃくちゃ応援してしまいました。
ヒーローの伯爵様も、最初は冷え冷えとした怖い人でしたが、極端なほど真面目で一途で、アルベルタの一挙一動に気の毒なほど振り回され続けている姿が、か、かわいい……。
初恋をこじらせていい年になってしまった主人公たちのもどかしすぎるロマンスの行方が、とっても美味しかった!
アルベルタのやんわりがっちりしたガードとあと一歩を踏み込めないヴィクターのふたりに何度もうなりつつも、それ以上進めない大人の事情というものがあるので、本当にもう……いやでも本当にヴィクター頑張ってくれ……。
あまりに分かりやすすぎる恋心に伯爵家の皆がもう生あたたかく見守っている空気も良かったです。
百貨店で妹へのプレゼントをふたり選んでいる場面と避暑地でのデート、お姫さまと魔法使いの伏線がラストで回収された流れとか、お気に入りです。

あと複雑な立場で育ちツンとしていたイザドラお嬢様が、アルベルタの空気を読まないおおらかな優しさに触れ、次第にアルベルタに懐き、兄との恋を応援するようになっていくのも、とても良かったです。
アルベルタとイザドラお嬢様の組み合わせが好きすぎる。ふたりで甘いものを食べに出かけたり、本当に可愛らしい。
コーデリア大奥様も典型的な貴族の大奥様でイザドラやアルベルタに辛くあたったりもするのだけど実は優しい方だったのでした。
あったかい家族の物語としても絶品。
ラザレスも適当な人間だけど伯爵家でもまれるうちに気配り上手の頼れる従僕にいつの間にか成長していたし、イザドラの侍女になったアビゲイルも可愛らしい少女だし、終盤で出てきた伯父様もなんだかんだ憎めない人だったし。

人生ちょっとなげやりだったアルベルタが、愛を素直に受け入れて美しく微笑むことができるようになった姿には、なんだか胸がいっぱいになり幸福感が半端なかったです。
アラベラおばあさまもようやく安心でしょうか。

あとこのお話、ときどき魅惑的なお菓子モードにふいにスイッチが切りかわるのが、すっごく楽しくて!
イザドラお嬢様のティータイム甘々バナナとクリームたっぷりバノフィーパイも、クリスマスにみんなで作ったアルベルタの故郷の味木苺とクリームをはさんだブッシュドノエルも、避暑地にてのクロワッサンとパン・オ・ショコラの朝ごはんも、あつあつアップルパイにアイスクリームも、皆美味しそうで読んでいて目がきらきらときめいてしまいました。
アルベルタを追って異国の地にやってきたヴィクターが異国の飲み物が全然口に合わず閉口している様もおかしかった。

自信がおありで、世渡りに長けていらっしゃる旦那様
『悪辣執事のなげやり人生』の前日譚。
まさかのあの悪役おじさまがヒーローだった!
尊大であまり人に好かれないフローリアン氏ながら、読んでいくごとにあれ、そんなに悪い人じゃないなー、とじわじわわかってくるのが、良かったです。
コゼットがまた健気で芯の強い女性で良いヒロインでした。
まさか姪っ子にそんなに初期から思い入れがおありだったとは……。

没落貴族令嬢の異国間結婚奮闘実録
西洋風の国の貧乏貴族令嬢が、中華風の言葉も風習も全然違う国に旅立ちお嫁入りすることになり、彼女が異国の生活と家族となった人々と次第に馴染み絆を深めていく物語。
金髪のちんまりした若奥様リェン・ファが可愛すぎる。頑張り屋さんで明るくて楽天家で優しくて。
なんというか、そういう人としての本質って、どんなに文化風習が異なるところにいったとしても、いっとうに差し出せるものなんだな。
ザン家の使用人たちがぱたぱた陥落していくのも必然。そしてがちがちに頑なだった若旦那様と、気難しい義母様の懐にも、すっと入り込んでしまいます。
ラン・フォン義母様のつんでれっぷりが本当に可愛らしかったです。
奥さんのことを好きすぎるシン・ユーも多少どころじゃなく怖い人間でしたが、奥さんにはメロメロだし良いヒーローでした。
結婚式で、名前のことについて語り合うふたりの場面が、好きです。
物語の最後で息子夫婦について語る義母様の場面も。
異国間の異文化交流的なエピソードがふんだんに描かれているのもすごく楽しかったです。
義母様特製のちまきとか朝ごはんの絶品おかゆとかなぜか抹茶かき氷とか、こちらのお話に出てくる食べ物もめくるめく魅惑の世界でした。

公爵様と仲良くなるだけの簡単なお仕事
貧乏貴族令嬢のユードラと、彼女が世話係としてお仕えすることになった、対人スキルが恐ろしく低い公爵様。
常識の斜め上行動をおこすふたりのゆるゆる日常コミュニケーション物語。
公爵様があまりにもあんまりで、でも私もかつてはそんな彼のことを笑えない程度に対人スキル低い子どもだったので共感も覚えつつ、まったり気楽に読めるラブコメディでした。
庶民クッキーとか貴族クッキーとか各登場人物のささやかな?こだわりが笑えました。
登場人物の一部が他作品ともつながりがあるようで、気になります。
このお話もまた皆一癖も二癖もあるひとばっかりで、むしろヒロインとヒーローは皆におびえて縮こまってるような……。
ヒロインを守るためには毅然と立ち上がるレグルスさんがよかった。ツンとしつつもお兄様を案じる妹さんもよかった。

どのお話にも共通して、ラブコメと家族愛の融合がとても素晴らしく読み心地がよいこと、グルメものではないのだけれどときおり挿入される食べ物の描写が魅力的すぎること、良かったですー。
特にヒロインのお姑さん的立場の女性の描かれ方が素敵!

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カテゴリ: オンライン小説

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