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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『スープのささやき ゲストハウスわすれな荘』有間 カオル 




東京山谷のゲストハウス「わすれな荘」で、千花が暮らすようになって半年。
わすれな荘に新しくやってきたスペイン人の娘バネッサ。千花は初対面の彼女になぜか敵意を感じてとまどうのだが……。
初恋の苦い記憶、故郷への想い、それぞれ胸に抱えるものを持ち、今日もわすれな荘のメンバーは食卓をかこむ。

『ゲストハウスわすれな荘』、続編が出ました!
本屋さんで見つけた時うれしくて思わず微笑みました。
最近の美味しいもの小説の中で、個人的に、かなり、お気に入りの作品なのです。
読みやすい文章でつむがれる日常ほのぼの優しい系ストーリー、ひとつひとつの物語のなにげないパーツが、今の私に、ぴたりぴたりと、実にうまくはまるのです。
そこからじわじわと物語が染み入ってくる。

二巻目では、お話の語り手が千花以外にも広がって、色々な視点から「わすれな荘」の日常を眺めることができたのが、良かった。
今回の前半パートの主役は、スペインからの留学生娘・バネッサ。
かなり強烈な登場をしてはじめは千花に敵意すら向けていて、どうしたどうした……と千花視点で不安になったのですが、彼女の気持ちは、あまりにも分かりやすくあっけらかんとしていて。
自分の燃え上がる恋心そのままに押せ押せモード、まっすぐすぎていっそ心地よい。
ひとまず、千花とは初期段階で誤解がとけて仲良くなれた感じだったので、良かった(笑)。
翔太さん立場だとものすごく疲れそうだと思いましたが(苦笑)。
「男の内臓をわしづかみ!」作戦の下バネッサが作った白いガスパチョや本場のカルボナーラや、目にしたことはあるメニューながらちょっと物珍しくて楽しかったです。
からまわってたりもどかしさにうなってたり、それでも大好きな人に美味しいものを食べてもらいたい、バネッサの恋心のスパイスも効いていて。

同時進行で千花の方も、ままならない片思いを持てあましていました。
彼女の場合、思いの対象は、イラストの世界、だったのですが。
千花は千花で今回も清々しく恋愛モードにならないので、これはこれでかえって好印象ですね。
バネッサとはかなわぬ想いに悩む娘同士で共感めいたものも持ってたりして、そういうのも良かった。
千花の場合は、やっぱり今回の流れみたいに、日々のこつこつ地道な積み重ねの延長線上に……、そういうのがいちばん似合うなあと思いました。千花は真面目に頑張れるのが一番の強みだと思う。
バネッサの熱血や千花の真面目さを、適度にクールダウンしてくれるのが、ぐうたら橋島オーナーの、それでもきらりと光るアドバイスだったり。
翔太さんの面倒見のよさにも本当に頭が下がりますね。相変わらず翔太さんと橋島オーナー、たまに留学生クオンの突っ込みのバランスが面白い。
ビックマムの悩める二人へのアドバイスも、素敵でした。

続く四話目からは、千花から物語が少し離れて、まずは留学生スディールとクオンのふたりが、成り行きで一日子守り体験をすることになってしまったお話。
赤ん坊のお世話でだんだん透けて見えてきたスディールとクオンの性格の違いがおもしろかった。
クオン、意外と適当で調子がいいひとだったんだな……前巻からちょっとイメージ変わっちゃった(笑)。
そして真面目に手を抜かないスディールの株がかなり上がりました。
江美さんが最後にタッパーにつめてきてくれた故郷の味、あったかくて優しくて読んでいても心温もりました。
確かにここに、お国を超えて、人のつながりができあがったんだなあ。

最後の五話目は、今までとまた趣をかえて、橋島オーナーの、山谷での少年時代の物語。
白玉団子の初恋の記憶。
読んでいて、なんともやるせなくて切なく苦い気持ちでいっぱいになりました。今の日本、私自身の境遇とも重ね合わせずにはいられずに。
最後に残された『赤毛のアン』一冊の重みが、ほんとうにほんとうに、じわじわときました。
そして視点は現在の橋島オーナーに戻り、「風の民」を見守り続けるかつての少年の姿に、ほうっと息をつき、読了。
翔太さんも、旅に生きる人なんだな。
翔太さんは、いつまでわすれな荘にとどまっていてくれるんだろう。彼との別れは、たまらなく寂しいだろうなあ。

お国柄漂う美味しいお料理、あたたかい、押しつけがましくはない優しさ、山谷の街の描写、留学生たちの日常、色々なものがゆったり溶け合ってひとつの物語になっている様は、確かに表紙イラストのように美味しいスープの一皿のようだなあと、読み終えて感じました。
一巻目みたいな登場人物勢ぞろい!のイラストもよかったけれど、こちらのイラストも、この物語らしいな。

また続編が出てくれると嬉しいです。千花のお仕事奮闘記も、もっと見守っていたい。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 有間カオル 

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