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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『道果ての向こうの光 奇跡を紡ぐ物語』秋月 アスカ 




馬車にひかれて死んだはずの町娘ユーナは、とある事情から聖女シェリアスティーナの身体に入り、一年の期限付きで王宮暮らしをすることに。
残虐なふるまいをしていたシェリアスティーナに向けられる周囲の態度は冷たかったけれど、ユーナのひたむきな頑張りは徐々に受け入れられ、あたたかな時間も過ごせるように。そして聖女の第一騎士アシュートに淡い恋心を抱くもひっそり封印するユーナ。
そして時が来て、ユーナはシェリアスティーナの身体から消えてしまう。
悲嘆にくれるアシュートだが、戻ってきたシェリアスティーナは、今度は自分がユーナを救うのだとアシュートに告げる——。
身代わり聖女と堅物騎士の王宮ファンタジーシリーズ、完結。


「やっと、君に会えた。」
帯のアシュートの台詞が、このシリーズの完結巻を何年も待ち続けた私自身の心のうちにも重なって、胸がいっぱいになりました。
ユーナもアシュートも、おかえりなさい!!!と声をかけてあげたい気持ち。


そんな訳で、『道果ての向こうの光』シリーズ、待望のシリーズ四巻目の完結巻。
もう半ば読むのをあきらめていたので、本当の本当に嬉しいです。
なかなか世知辛い世の中ですが、待ち続けていれば、こうして報われることだって、あるんだなあ。
まさにこの巻自体が「奇跡の物語」と思えてきます。

この巻を読むにあたって、ちょうどいい機会だから……と、実は未読だったWeb版の『道果ての向こうの光』も、先日ラストまで読んだところでした。
(→Libera 様)
しみじみと感動しました。
残酷で理不尽な運命を押し付けられたユーナが、それでもひたむきに前を向いて頑張り続けて、育ててきたあたたかなものが、周りの人たちの心にはいつしかしっかり息づいていて、今度は彼女を救うために、想いがひとつひとつ力になってゆく。という奇跡。
やはり私はこの物語が大好きだと改めて思いました。
Web版と書籍版、少しずつ違う部分もあったので、書籍版のラストはどうなるのか……どきどきでした。
今までWeb版未読だったのも、書籍版とは展開が違う、というのが、受け入れられるかどうか、不安だったというのが大きかったので。

実際読んでみると、物語の流れは大きくはそれでもほぼ同じ。読んでとても幸せな気分になったラストも同じで、ものすごくほっとしました。
この四巻目は、言ってみれば、ユーナ視点で最後まで進んだWeb版ではさらりと流れて語られなかった物語の裏側。
アシュート、そしてシェリアスティーナ側からの、ユーナをもう一度取り戻すまでの、ひたむきな頑張りの軌跡の物語、だったでしょうか。

がちがちに立場に縛られた堅物人間のアシュートが、愛する娘を取り戻すために、いったんすべてを投げ打って、見知らぬ田舎の町で勝手が違いとまどいつつもシンプルに頑張る姿は、胸を打つものがありました。
ユーナのご両親に親戚たち、彼女の血縁なだけあって人が良くあたたかな情を持つ、愛するものを守るためにはためらいなく身をはれる人たちで、読んでいて和みました。
こんなご両親に愛情を注がれ大切に育てられて、あのユーナだったんだなあ。と納得するものがありました。

そして戻ってきたシェリアスティーナの方も。
Web版では触れられた程度だったバルコニーでの長い告白、宣言。
ユーナにとってみれば気にせずにはいられないし辛くやるせない気持ちにもなるでしょうけれど、でも確かに、この道がいちばん彼女には良いんだろうなあ。と納得のゆくものでした。
シェリアスティーナとユーナの過去の友情、あの馬車の事故との因果関係、シェリアスティーナとユーナをつないだ存在のことも、すっきりと語られて、そういうことだったのね。と。
シェリアスティーナの本来の能力をユーナが彼女に思い出させて、今度はシェリアスティーナの方がその力を用いてユーナを救う、という流れが、とても好きだなあと思いました。
塔に走ったユーナが受け取ったティスカラの花の場面が、美しかった。
ユーナとシェリアスティーナの友情は、単純ではない運命も引き寄せてしまったのだけれど、でも、とても尊い。

元の町娘に戻ったユーナへの、アシュートのシンプルでひたむきな求婚の場面も、生真面目なふたりらしくてとても良かったです。
アシュート、いつの間にか吹っ切れてわりと熱い男になったな……(笑)。ジークも安心しているでしょう。
ただ彼の想いを受け入れるだけにとどまらず、実家の薬屋の仕事と関連する仕事を王宮でも頑張りだしたユーナが、とても彼女らしくて、それもいいなと思いました。
ナシャとミズレーさんとのなごやかなおしゃべりの時間も、イーニアスやネイサン、ジーク、ライナス、ロノ、それぞれとの仲も、それぞれのかたちで途切れていなくて、嬉しいな。
イーニアスがやっぱり報われなくて不憫なんですけどねえ……。彼にもいいひとがみつかるといいな。

Web版の方の感想も、この際なので。
ナシャの上司のカーリンさんが、なかなか好きなキャラでした。(書籍版にも登場してましたっけ……記憶違いならごめんなさい!)
カーリン自身の過去のしがらみから、ユーナと一度すれ違ってお互い辛い思いをして、そこから関係を修復した流れが、私、とても好きでした。
年若いナシャをたしなめつつカーリン、ナシャ、シェリアの三人で仲良くお話している図が好きでした。
あと、ユーナが演奏するクラヴィディア。ユーナとアシュートのふたりにとってはとても大事な一場面になっていて、この使われ方も、心憎いものがありました。

今回この本をこうして世に送り出してくださった作者さま以下すべての皆さまに、感謝です。
できればレガロシリーズ自体も復活してくださるととても嬉しいのですが……。

秋月アスカさん、小説家になろうさんの方の連載作品『異世界出戻り奮闘記』の方も、たいへん楽しみに読ませていただいてます。
そろそろ物語は終盤に近付いている感じで、ハルカとノエルの生真面目頑固者カップルの行方から、目が離せません!




『道果ての向こうの光』もなろうさん転載されて、読みやすくなりました。
(そしてこの感想を書いていたタイミングで番外編が!
ナシャと一緒の一日侍女体験、楽しそうでした。生真面目同士の初々しいカップル、いいなあ~。ごちそうさまでした。
ジークもミズレーさんも元気そうで楽しそうで何よりです。)

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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 秋月アスカ 

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