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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『最後の王妃』白洲 梓 



皇太子妃となるべく育てられたルクレツィアは、15歳でアウガルテン王国皇太子シメオンに嫁ぐ。
しかしシメオンはすでに、マリーという下働きの娘と相思相愛の仲で、ルクレツィアの元を訪れることはなかった。
シメオンの即位後、側室となったマリーが懐妊。
ほどなくして、王国は隣国に攻め込まれてあえなく陥落。ルクレツィアの人生は大きく転換する——。

コバルト文庫の新人さんのお話。
Web上での評判がなかなかよさそうで、あらすじと挿絵も心ひかれるものがあったので、読んでみることに。

割と正統派なコバルト少女小説だったなあと、読み終えての感想。
私好みの路線でお話が進み、たいへん面白かったです!
賢くて謙虚で薄幸のお姫さまルクレツィアは、とても好みで共感度高いヒロイン。
どの場面でも、素直に応援したくなる女の子でした。
こつこつ頑張ってきたヒロインが、最後には報われるお話って、良いですよねえ。

最初に嫁いだ先にはすでに愛人がいて、なんてあらすじでじっとりしたものを想像していたのですが、どちらかというと、さらりとした読み心地。
ストーリーはさくさく進みます。込み入った枝葉にこんがらがることがなく、文章も素直でとても読みやすく、途中でひっかかることもなかった。
ヒロインとヒーローの心根のまっすぐさも、さわやかな読み心地に一役買っていた気が。

ルクレツィアの王妃生活の前半パート。
マリー自身はあくまで善良、というかごくふつうの娘さんなので、かえってルクレツィアには辛いですよね。
ルクレツィアの後見人の叔母さまも、彼女の本当の味方というわけでもなさそうだったし……。
というか、マリーも善良という部分だけは最後まで貫き通してほしかったな、正直。あの裏切りとルクレツィアへの仕打ちはちょっとルクレツィアが辛すぎる。(その後の刺客騒ぎは彼女は知らなかったのかもしれないけれど、でもねえ……。)
最後にシメオンと心中するかたちになったマリーは、どのような心境だったのか、考え込んでしまいました。

メルヴィン父息子との出会いを経て、後半パート、北の小さな村の屋敷に移されたルクレツィア。
医療の知識がある世話係の娘ティアナと出会い、彼女との交流、共に苦難を乗り越えていくうちに、少しずつやわらかい感じになっていくルクレツィアがとても良い感じでした。
年齢とか考えるとちょっとちぐはぐだけど、でもルクレツィアとティアナのまるで姉妹のような仲良さげなところは、読んでいて心が和みました。好きだなあ。
自分に自信が持てず命を粗末に考えてしまうルクレツィア、彼女を説教するティアナの身の上話がものすごく波瀾万丈で、私もびっくりしました。
笑顔はね、本当に大切だと思います。私も日々痛感しています。この点に関しては十代の少女であったころより今の私のほうが実感できる……。

逃避行や敵襲や色々はらはらしましたが、落ち着くべくところに落ち着いて、ほっとしました。
再会時のメルヴィンの微笑ましさとティアナのめげない強さがよかった!ティアナの人間関係はそこにつながっていたのですね。納得。(正直私は最初ティアナが優秀すぎて敵側の人間かと少し疑っていた……逃避行前までですが。)
メルヴィンは、心ののびやかさと影のないところが、読んでいて快いヒーローでした。
謙虚で心映えの美しい貴婦人ルクレツィア、あの凛とした挿絵の場面で彼が恋に落ちて、五年間ひたむきに思い続けてきたのも、言葉での説明はそんなになかったんですが、なんか、心にすとんと納得がいくのでした。
つまり、お似合いです。

ルクレツィアとメルヴィンの、いずれ国が亡びる時がきたら、云々のやりとりの、メルヴィンの返事が、とても良かったです。
これからも色々大変なことはあるでしょうけれど、このふたりなら、協力し合って信頼し合って、どんなことでも、乗り越えてゆけるのでしょう。と、素直に信じられるラスト。

クラウスのことや、孤児院の子どもたちのことや、これまでルクレツィアが成してきたいくつかのことが、いずれはすべて報われる、という展開も、王道パターンながらにとても気持ちがよかったです。

池上左京さんの美麗で甘く可愛らしい挿絵も物語によく合っていました。
ティアナとルクレツィアふたりの楽を奏でる場面の乙女たちの可愛らしさがたまらない……メルヴィンとアルバーンも格好いい……。ドレスも美しいです。
(未だに池上左京さん挿絵、イコール榛名しおりさん少女小説。の図式をひきずっている私は、どこかでルクレツィアとメルヴィンを、マリアとフリードリヒ選帝侯、もしくはエルザとフランツを重ね合わせていたかもしれない。
敵陣に落ちた城で、一人生き残って敵に対応せねばならないという身の上とか。ね。)

ティアナの波瀾万丈人生も面白そうなので、読んでみたいなあ。できればルクレツィアたちのその後のエピソードも込みで!

新人さんのデビュー作、ヒーローの影が若干薄いかもとかあったものの好みのお話でとても良かったです。
今後とも応援しています。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 白洲梓 

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