Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『かなりや荘浪漫 星めざす翼』村山 早紀 




『かなりや荘浪漫』シリーズ第二弾。
古い洋館アパートかなりや荘で、編集者の美月や元漫画家の幽霊・玲司に才能を見出され、漫画家の道を目指す茜音。
なかなか思うような漫画が描けずあせる茜音。その一方で、美月が復帰した編集部に、新しい動きがあり。
茜音とかなりや荘の住民たちの日常の物語にくわえ、茜音の母で小説家のましろが主役の番外編も収録。


村山早紀さんのオレンジ文庫シリーズ『かなりや荘浪漫』、第二巻。待ってました!わーい!
オレンジ文庫の中の私のお気に入りベスト三作のひとつです。

今回の表紙も、たそがれ時みたいな淡い光の色加減が、茜音と玲司の表情が、猫たちと漫画のお仕事道具が、素敵ですねえ。
この机、茜がここに座って一心に漫画を描いている様が、自然に想像できる。
そして本を開いての、登場人物紹介の頁の、みんな勢ぞろいでお茶会イラストが、かなりお気に入りです。
お茶のカップのお盆を持つ茜音と、ドーナツのお皿を持つカーレンが向かい合っていて、ふたりの表情やしぐさが楽しそうで可愛らしくてふふふ。テーブルのシュークリームやドーナツもおいしそう。
この場面でも玲司のちょっと物憂げで澄んだ表情が、良いのです。この表情を向けている対象はかたわらの茜音なのかどうなのか、はっきりと判断はできないあたりが、ね。

冒頭の、茜音作ハロウィンのかぼちゃシュークリームが素敵に美味しそうで、ユリカがうらやましい……。かぼちゃとシナモンの組み合わせは最強です。

さてものがたりは、村山早紀さん作品調のやわらかくて優しい救いの物語であると同時に、どうやら私が思っていた以上に、今後はがっつり漫画家お仕事ものになっていく感じ。
村山早紀さんと熱血漫画家お仕事ものの組み合わせって今まで想像したことなかったけれど、なんだかとってもわくわくします!
今回は名前のみ登場の、茜音の将来のライバル娘達が、とっても気になる私。
美月さんやあとがきで村山さんご自身も語っておられましたが、今後よきライバルであると同時に友人として仲良くしている様が、現時点でのほんのすこしの情報のみで、すでにうっすら想像できます。
女の子の友情もの、可愛らしい女の子が仲良くきゃっきゃっしているお話が大好物の私ですので、次の展開がとても楽しみ。

今回のお話でまず私の心に響いたのは、美月さんが復帰した編集部の、新しい雑誌の立ち上げ話、雑誌とネットの関わり合い、ネットの住人と読書の、新しい結びつき。などなど。
私は村山早紀さんご本人を日々Twitterでフォローさせていただいているので、その延長線上のような感覚で、編集長のお話を読ませていただいてました。
村山早紀さん作品の自然と人との関わり合いとか、こういう、今の世の厳しい現実をふまえた上での、それでも未来への希望や愛を感じられるご持論が、私はとても好きです。読んでいると私もまだまだこの世も捨てたもんじゃないなあと明るい気持ちになれる。
私がこうしてネットのすみっこで、愛する本の感想をぼそぼそ書いている行為も、ほんのちっぽけなものかもしれないけれど、「魔法」になれているのかしら。だとしたら、とてもとても嬉しく幸せなことです。なんて。

美月さん、ハードそうな職場ですが、イキイキ働いていらっしゃるなあ。格好いい。
同僚さんも、昔からのライバル編集者絵馬さんも、みんな仕事に一心で、皆さんが語る漫画家さんのお仕事ぶりもやっぱりとてもハードそうで、漫画を愛する私としては、これは一層心して読まないとなあ。とか思ったりしつつ。
美月さんにもなんとなく春の予感が?とか思ったり。(どきどき)
絵馬さんと美月さんの焼き鳥食べつつの語らいの場面も好きでした。同じ男性のことを今は二人笑って語り合えるふたり、いいな。
お仕事ばりばりできる女性ふたり、うう、容赦がなくて格好いいです。
絵馬さんのお身体のことは、ちょっと心配なのですが。

茜音の漫画『スターダスト』も、タイトルと文章でのあらすじから、ぎゅっと心がつかまれました。
確かに茜音が描く漫画なのだなあという。ヒロインが結婚した相手が音楽の教師で、ふたりで聴いたスターダスト、光が散るようなピアノの音、という描写に、惹かれました。
叶うならば、漫画のかたちで現実に茜音の漫画を読んでみたい……。

茜音と幽霊の青年玲司との関係性も、やはりとても好きです。
意外にデリカシーのない発言をする玲司が、茜音に機嫌を損ねられてちょっと途方に暮れている感じなのが、妙に可愛らしい。クールな天才漫画家青年という印象とのギャップが……。
ふたりで飛行船をながめる場面が、好きだなあ。
幽霊であることを悲壮感なくネタにする玲司、玲司を自然に受け止めてる茜音、心通わせ楽し気に会話するふたりが好きで、ほんのりふたりそれぞれ意識しているような描写もあったりして、玲司が幽霊でなければ、お似合いのふたりなのに。ううん。
茜音が悲しい想いをすることには、ならないといいなと思います。
それにしても玲司格好いいです。知的でおだやかな文学青年系ヒーロー大好きなのです……。

強面の男性住人のことだったり、ユリカと人気子役の少年とのささやかな交流だったり、どのエピソードもお気に入りでした。
ユリカと茜音の思い出の味あけび、ユリカが小遣いぎりぎりで買った銀座のお店のお土産シュークリームがまた夢のように美味しそうで。
シュークリーム食べたいです。カスタードクリームと生クリームたっぷりの、ひんやりやわらかな甘くて美味しいシュークリームを。

そして番外編『空から降る言葉』ましろさん主役のお話。
前巻を読んでいる限りでは困ったお母さんだなあ、と思っていたましろさん、その悪印象のいくらかは、ましろさん本人が意図して作っていたものだったのか……ましろさんの思っていた以上の覚悟に、茜音への確かな愛情に、胸がぎゅっとしめつけられました。
池袋の喫茶店、世話になった編集長、西新宿のホテルの人々との再会、そしてあのラストまでたどり着くことができて、本当に良かったです。本当にほっとしました。
村山早紀さんの作品に出てくるホテルって、どこも素敵で憧れてしまいます。
母娘の再会もかなってほしいし、父親の方も、きっかけさえあれば、上手くいくと、私は思うのですけれどね。
生きてさえいれば。玲司のことも思うと、本当に。
雪の化身か妖精さんのような浮世離れしたイメージだったましろさんが、今度は確かな母親の姿で、私の心の中にしっかり印象を残してくれました。良かった。
そしてましろさんの過去の辛いエピソードを読んでいると、今茜音をサポートする編集者が美月さんみたいなひとで、茜音を守ると誓いをたてているひとで、それはとても安心できることだなあ、と。

それにしてもシュークリームが美味しそうなので、やはり作者さんご自身も推奨されているとおり、美味しいシュークリームのご準備を、できれば。
村山早紀さん作品でシュークリームといえば、中学生のころ読んで以来心の隅っこに残っていた『やまんば娘、街へゆく』(『海馬亭通信』→感想)のふくらみそこねたシュークリームに生クリームをふわりと、とも重なり合って、一層魅惑の食べ物ですね、私にとって(笑)。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1512-e79985eb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)