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『サクラダリセット』シリーズ 河野 裕 




住民の半数が何らかの特殊能力を持つ街・咲良田。
記憶保持の能力を持つ浅井ケイと、リセット——三日間世界の時間を巻き戻すことができる春埼美空のふたりは、高校では奉仕クラブという、能力に関わる問題を処理しているクラブに所属している。
ケイと春埼はお互いの能力を合わせて「時間を巻き戻し」、さまざまな問題ごとを処理し、咲良田の異能をあつかう組織「管理局」とも深くかかわっていく。
猫を救いたい少女の心のうちは。未来を見る女性「魔女」が待ち焦がれたものは。ケイと春埼の中学時代の同級生であった少女・相麻菫の意図とは。
日常に少し不思議を溶かし込んだ世界でつむがれる、繊細で優しい学園青春ものシリーズ。


異能を持つ人々が繰り広げる日常の延長線上の学園青春ものライトノベル『サクラダリセット』シリーズ全7巻。
ネット上の評判でシリーズを知り、ずっと読んでみたいと思いつつ、何年か積み本になっていました。
ふと一巻、二巻と手に取って読みはじめると、じわじわとこの世界のとりこになり、このたび最終巻まで読み切ることができました。

淡々と、遠くから舞台劇を眺めているかのような、距離感のあるところでつむがれている物語。という印象。
ちょっと独特の世界観と文体で、一気にだだだっと読んでしまうというよりは、何日も少しずつ、時間をかけて、静かにゆっくり味わっていきたい系の物語でした。
ガラスのように透明で繊細で「つくりもの」であることをあえて際立たせているような、咲良田の街の雰囲気が、素敵だな。

時間と記憶の異能の物語って、私、大好きです。
「リセット」の仕組み自体はシンプルなのですが、それを実際にどのように動かして、時を変えてゆくのかがなかなか理解しづらく、何度もの繰り返しに次第に頭の中がごっちゃになってきて、でもとても面白かった!
ケイくんは高校生とはちょっと信じがたいほど老成した態度を持つ男の子で、理屈っぽくて、彼の正義のために、「リセット」を傍らの春埼さんに指示する。
ケイくんと春埼さんのお互い誰より信頼し合い大切に思っている関係が、シリーズが進むごとに背景なども交え伝わってきて、時に遠回りしているふたりの姿がもどかしくていとおしくて仕方なかったです。

ケイとの出会いの時点では淡々と無機質な少女だった春埼さんが、二年を経て少しずつ表情豊かになり、成長してゆき、ケイへの信頼と、それとは少しちがう思いをしだいに育ててゆき揺れ戸惑う姿が、もう本当に可愛らしくて!
私の今までの読書人生の中で振り返っても、(特に初期の)春埼さんはかなりの変わり者だと思いますが、そんな不器用で純粋で優しい春埼さんが大好きです。
ショートヘアも可愛いけれど、昔のなみなみロングヘア姿もものすごーく可愛い。

ケイの方から向ける春埼への想いも、シリーズを読み進めるごとにじわじわきいてきて。
女の子には基本誰にでも優しく紳士的なケイだけど、春埼に関しての台詞は、ときどき驚異的に甘くて一途で、愛に満ちていて、不意打ちにときめいて仕方なかったです。
私はこのシリーズ、ロマンスもありの物語なのか、読みはじめる前、読みはじめてみてもいまいち自信がもてなかったりしたのですが……ふふふ。堪能しました。
(あくまで淡く、精神的なものではあるのですが。時間遡行ものはほんのひとさじのロマンスのエッセンスでやはり最高にときめきます)
ふたりでシュークリームやサンドイッチや、いろんなごはんを食べている場面が、印象的でしたね。
あ、お弁当のやりとりがすごく私お気に入りでした。

「貴方が二人いれば、答えはとても簡単だったのに」
「そんなの、無意味だよ」
決まっている。
——もしも僕が二人いたなら、二人ともが君といたいと願うだけだ。 (7巻358頁)

相麻菫さんという「野良猫みたいな女の子」が謎めいた登場をし、暗躍しているのですが、後半パートを読んでいくにつれ、彼女のシンプルでひたむきな想いに、言葉に表せないものを感じました。胸が痛かった。
限りなく優しくて残酷な言葉をはくケイですが、菫さんのためにどこまでもなんでもやりぬくケイも、また彼らしくて。
トマトとヨーグルトのチキンカレーがつながってゆく流れが良かった。菫さんはこのためにいかほどの労力をかけたのだろう。途方もなく……。

本当はシリーズ一巻一巻について語りたい感想いっぱいあるんですが、終わりそうにない。(シリーズ読み切った後に書く感想は毎回難しい……書きたいことありすぎる!まとまらない!)
他の登場人物では、ケイと普通に友情を築き上げている中野くんの存在が、良かった。野ノ尾さんと春埼さんの友情も良いね。野ノ尾さんの四巻目の月と猫と少年の短編が、すごく好き。
春埼とケイが学園祭で主役をはり劇をするシチュエーションも良かったです。ふたりは普通の学校生活の中では公認カップル扱いなんだろうか……とか想像をふくらませたり。欲を言えばもっと劇のエピソードほしかったかな。
ケイが最終巻で故郷に再会する場面も印象的でじわじわっと涙が。
四巻目のショートショート『ある日の春埼さん』も可愛い春埼さんを堪能できて大好き。お見舞い菓子の躊躇いとその後のメールが本当に微笑ましく。

ケイは本当に高校生であることが信じられない大人びた少年だけど、彼が語る優しさ、正義には、確かに何か青さや若さ、幼さのようなものを感じる。
でもそれがかえって年相応で、彼と関わり協力関係になってゆく少年少女のひとりひとりの結びつきも自然で、青春ものだなあ、若いっていいなあ……(しみじみ)という、うまく言えないですがそういうアンバランスな読み心地も、この作品の魅力なんだろうな。
二巻目の時点ではケイに反発するばかりだった岡絵里さんが、最終話で彼への印象を変化させていたのが、なんか、印象的でした。
管理局の大人側からの物語の視点があったのも、バランス的に良かった。
大人サイドでは、猫屋敷のおじいさんと津島先生が好き。索引さんには共感を覚える。
結局は、悪人がだれ一人いない、優しい人たちが誰かの幸福を願って行動を起こすのがすべての物語で、つくりものの世界はもろくて優しさで包み込まなければすぐ壊れてしまいそうで、だからこそ美しくて。
それがよいのでしょう。

やはり色々努力してみても感想が上手くまとまらないですが、この物語を読むことができて、とても幸せでした。
鉛筆描き風?イラストも素敵で繊細で優しい物語によく合っていて、各巻堪能しました。美しい猫みたいな春埼さんかわいい!
最終巻の表紙のケイと春埼、最後の頁の仲間たちと共に歩むふたりの姿が、仲睦まじく素敵すぎます。




ここ数日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 河野裕 

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