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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『下鴨アンティーク 祖母の恋文』白川 紺子 




亡き祖母から、蔵にある「いわくつき」の着物や帯の管理を引き継いだ、高校生の鹿乃。
ある日、祖母が懇意にしていた骨董店の店主から、祖母が祖父に充てて書いたという「恋文」を渡されて……?
京都の地で、着物、アンティークに込められた女たちの想いに寄り添い、鹿乃と周囲の人々は不思議を解いてゆく。

白川紺子さんの『下鴨アンティーク』シリーズの三巻目。
井上のきあさんの表紙が今回も美しくはなやいでいてうっとりため息。
オレンジ文庫のフェア対象本で、私も早速マスキングテープを書店でいただいてきました。
なんて可愛らしい!高校生のころコバルト文庫のフェア本を買ってハートのテディベアをもらった昔をちょっと思い出してしまいました。

こちらのシリーズ、巻が進むごとに、文章や小物の配置、キャラクターなどがしっくり馴染んでいってて、どんどん物語の完成度が増していってる気がします。
今回の三巻目、すべてがもう本当に素敵でいとおしくて、読み進めてはちょっと休憩して作品世界にうっとりひたり、そしてまた読み進め……を繰り返していました。時間はかかりましたがとても心満たされる読書でした。

白川紺子さんの書かれる、すみずみまでていねいにゆきとどいた少女趣味ロマンティック小説の魅力も、小説としての完成度も上がっていて。文庫本を抱きしめたくなるほどいとおしいです。
まさに私が読みたかった、ちょっと大人向けの落ち着きと品のある少女小説。(もちろんときめきも満載)
鹿乃ちゃんはじめ登場人物ひとりひとりが魅力的で愛さずにはいられないし、不思議なアンティーク着物の描写、古典文学や人間ドラマとの絡め方も絶品だし、みんながしゃべっている関西ことばがすんなり心地よくてずっとひたっていたい。
あと作中にお菓子や家庭料理、お土産菓子などの描写がふんだんに出てきてどれも魅力的なのも私的ポイント高いです。

特に、少しずつ本物の恋に育ちつつある鹿乃と慧のふたりがなんかもう、たまらない!!ほんの少し慧視点の描写があるのがぐっとくるのですよ!
このふたりの現在の関係がどうにかなるにはまだ当分時間がかかりそうですが。でもそれもこのふたりらしいです。
妹を可愛がり、慧との仲もちょっと面白がりつつ見守っている良鷹お兄ちゃんの立ち位置も良いです。

『金魚が空を飛ぶ頃に』
こちらは雑誌の方で既読。
雑誌掲載時から読み終えたときの幸せ感が半端なかったお話。繰り返し読んでもやっぱり大好き!
鹿乃のもうひとりの親友、梨々子ちゃんと彼女のおじいさんにスポットが当たった物語。
鹿乃ちゃんと梨々子ちゃんの中学時代から続く友情がとても素敵で尊くて、奈緒ちゃんも含めての今の仲良し三人組の絆に、ぐっとくるものがありました。自分の母にあれこれ言われても、自分の感じたものを見失わず鹿乃ちゃんへの友情を貫ける中学生の梨々子ちゃんも、なかなかできることじゃないと思う。
祖母や兄たちに愛されておっとり素直に優しく育った鹿乃ちゃんではあるけれど、「普通」になれない孤独感、寂しさみたいなのをかかえてもいて、胸がきゅっと痛みました。梨々子ちゃんナイス。
梨々子の祖父とのちょっとぎくしゃくしていたのが今回解消されて、良かったなとしみじみ。
たまごとバターの香る海老ピラフがとても美味しそうでした。
満寿さんと鞠江さんの過去の恋のお話と、金魚の羽衣のお着物のエピソードも、余韻まで素敵でした。
青の金魚の真の意味や、羽衣を天に帰すため鹿乃がとった手段や、心にくいです。叶わなかった恋だけれど、鞠江さんの想いがあざやかに浮かび上がってきて。切ないけれど幸せな恋だったんだな。
仲良し三人の奈良へのお出かけも楽しそう。三人の友情をのっそり見守っている良鷹お兄ちゃんもなんかいいんですよね。お紅茶の差し入れとか!
お兄ちゃんに文句を言いつつちゃんとお土産ドーナツを買っていく鹿乃ちゃんもやはりかわいいなあ。

そしてそして、この物語で最後に最大級のときめきを残してくれたのが、ラストで不機嫌そうにお菓子の家を作成している慧さんの姿。
鹿乃に頼られなくてもやもやとした気持ちに名前がつけられず、おそろしく凝った「お菓子の家の作成」で晴らそうとする慧さんが、なんかもう、慧さんらしくて可愛すぎて……。読んでいて頬がゆるんで仕方がなかったです。
そんな慧さんを見守り、妹の笑顔とその笑顔にすべてが報われる慧の姿を想像する良鷹お兄ちゃんの図も、また良いです。
メリー・ポピンズのジャムのケーキやくまのホットケーキや、鹿乃と慧のふたりの、甘いお菓子に彩られた昔からの思い出の積み重ねが、本当に好きだなあと思ったのでした。

『祖母の恋文』
意地っ張りで勝気な若奥様だったころの鹿乃たちの祖母、そんな彼女の一歩上をいっていたような祖父の、若かりし日のエピソード。
やはりこの夫婦のやりとりはときめきますね……!お酒に弱くて若干隙が出てきてしまうおじいちゃんの意外な弱点が可愛かった。そしていつの間にか恋文を書かされることになっているおばあちゃん。この敗北感!(笑)
帯の謎解きは面白かったです。遊び心があって面白いなあ。画面もはなやか。
そして鹿乃が過去にもらった「ラブレター」に、即座に食いつく良鷹と慧のふたりがあまりに予想通りの反応で、おかしかった~。ふふふ。
レモンシロップの寒天とレモンのお酒(どちらも自家製というところが心にくい)のしゅわっとはじける甘酸っぱさと、恋文に秘められた甘い想いが合わさって、また何ともいえない良い余韻が。
確かに古風な鹿乃ならば、普通に告白されるよりも、書きなれなくても丁寧な恋文で想いを告げられる方がじわじわ効きそうで、そういうところにも想いが至ってもだもだしている慧さんが、とても美味しかったのでした。
この物語で「星月夜」のお着物を着る鹿乃ちゃんというのが、良いです。

『山滴る』
鹿乃ちゃんが慧や兄の助けを借りずにひとりで着物の謎ときに挑む。成長してきてますね!
春秋柄の着物と燕、万葉集の三山歌、今回の着物に秘められた謎もまた、悲しい中にあたたかで優しい想いも込められていて、読んでいて胸に染み入りとても良かったです。
悲しくやりきれない物語に触れた後で、山を眺めて美しいと思う鹿乃ちゃんの感性が、とても共感できて好きでした。山眠るに山笑う、私も学生時代に習って素敵な表現だと思ったなあ。
春野さんと鹿乃の、雨宿りから続く一連のやりとりに、どきどきしました。
淡く可憐なピンクの薔薇よりも、芯の強い白の薔薇が好きだという春野さんが、今回鹿乃ちゃんと言葉を交わして何か心境の変化があったのか。
植物の静かなイメージと、食えない感じが同居していてなんか不思議な魅力がある男性です。春野さん。何を仕掛けてくるのか分からない(笑)。
一見ふわふわおっとりした鹿乃ちゃんの中にある、一途できっぱりした想いの強さには、私もあらためてどきりとしましたが。
ノートにイラストを描かれて文句を言いに乗り込んできた割に、消そうとされて即座に引っ込める慧さんが、今回も可愛かった(笑)。
うわあ、春野さんと鹿乃ちゃんと慧さんの今後の関係が非常に気になる。
気になるといえば田村教授と慧さんのことも気になります。そこにはどんな事情があるんだろう。
そういえば、鹿乃と良鷹の父のこともちらりと話に出てきて、このふたりのご両親のことも、今後は語られていくのかしら。

『真夜中のカンパニュラ』
良鷹と真帆コンビが主役のお話。またこのふたりのお話が読めてうれしいな!
最初の場面で真帆さんが食べていたぶどうとくるみのパンが美味しそうでした。
このお話は、これまでのこのシリーズの物語としてはちょっと異色というか、昔語りの中の琴子さんが受けた仕打ちはただただ凄惨で、どこまでも救いがなくて。夜遅くひとりで読書していると、真剣に背筋が寒く凍りました。
風鈴草の中たたずむ琴子さんの見つめる先にあるものに、言葉を失ってしまいました。
彼女の想い人は、どちらの選択をしたら、より救われたのか。詮無いことも考えてしまいました。
底のない暗いものを掘り起こし抱えることになった良鷹に、翌朝ふわふわマヨネーズのたまごサンドを届ける真帆さんの必死の思いと朝の空気と生気が、たとえようなく尊かったです。
このふたりも、お似合いに見えるけれど、恋愛にはまだまだ遠そうなんだよなあ。
恋人を通り越して、そこそこの年月を連れ添った夫婦として、ろくでなしの旦那さんに世話をやかされっぱなしの奥さんという風情が……。少なくとも真帆さん、こんなことしてたら、良鷹さん以外のひととは絶対結婚できない気がする……。
鹿乃のラブレター騒動をまだ引きずってて落ち込んでいる良鷹さんがまたうっかり可愛くて魅力的で悔しいですね(笑)。鹿乃と真帆の打ち明け話も気になる。

ちょっと重たくなった読後感に嬉しかったのが、巻末に収録されていた、これまでの雑誌掲載時の御山ひわさんのイラストギャラリー。
こちらのイラスト全部大好きで、文庫には入らないのがもったいないなあとずっと思っていたので、これは嬉しいサプライズ!
鹿乃ちゃんはじめ女の子はみんな可愛いし、慧さんも良鷹お兄ちゃんもたいへん格好良く目の保養です。お着物の柄までイラストで眺められるのは良いですねえ。

とても満足な一冊でした。和風モダンなときめきを堪能しました。
シリーズ既刊フェア対象本になっているようですし、未読の方は、この機会に手に取ってみられてはいかがでしょう。
私のブログを読んでくださっていてなおかつ少女小説お好きな方でしたら、きっとお気に召されると思いますよ。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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