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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『隠れ姫いろがたり 雪の下』深山 くのえ 




皇女でありながら幼い日にさらわれ、十二年後に見つけ出され都に戻ってきたものの、馴染めず孤独だった純子(いとこ)。
そんな純子に教育係としてかかわるようになった兵部卿の宮・理登(あやなり)だけは純子を理解し、やがてふたりは愛し合うように。
しかし純子の生母である弘徽殿女御は、純子を右大臣家の息子に嫁がせようとしているようで。
それを聞いた理登は、ある覚悟をかためる。

深山くのえさん&あきさんの平安ものロマンス『隠れ姫いろがたり』シリーズ、二巻目にして完結巻でした。
完結ですか……正直に言うと、惜しい。
できれば色々なエピソードをもっと丁寧にじっくりゆっくりたどって堪能したかったです。せめてあと一巻分くらいは!
深山さんとあきさんペアならば、間違いなく素晴らしい物語になったんだろうけれどなあ。

ともあれ今回も安定の仕上がりの深山さん少女小説。あきさんの挿絵。
期待通りにとっても楽しめました。幸せいっぱいです。
表紙の寄り添いあうふたりの信頼と愛情あふれる表情としぐさにときめきます。
今の季節にぴったりのお召し物の色使いも素敵!

冒頭、手習いの先生と生徒という関係上でのやりとりから、ふっと恋人同士のそれへと空気が変わる瞬間に、早くも心臓をきゅっとつかまれました。
理登さんのささやく「いと」が、不意打ちにとても甘く響くのです。

純子さんと理登さんの、それぞれの美質はそのままに、お互いをまっすぐに信じ守りいたわり合う関係がまさに少女小説の王道と言う感じで、ときめきました。とても素敵でした。
愛想や表立った甘さは足りないものの、純子さんのためなら手段を問わず戦い、年下の恋人を包み込むように愛する理登さんがとても格好良くて、淡々と冷静沈着そうなイメージとのギャップみたいなものにきゅんとします。
本人が言うところの「恋をする覚悟」を、特に純子さんを宮中から救い出しかくまう場面ではひしひしと感じて、素敵です。
激情を持ちつつもそれを表にはおさえて大人なふるまいをつらぬく……格好いいなあ。
なんというか、平安時代の身分が高いヒーローって少女小説では動かしにくいんだろうなと、想像で。
(ん?でも『源氏物語』の若紫の光源氏の行動とか思うと、そうでもないのかしら)

純子さんの方もたゆみない努力の成果で、今では書も音楽も高貴な姫君のたしなみのようなものを着実に身に着けつつあって。
真面目でけなげで頑張り屋のヒロイン大好きです。いや、最初から大好きでしたけど!(笑)
市井育ちでお転婆なんだけど、お転婆過ぎずに健気で奥ゆかしい部分もある娘で、私はそのさじ加減が好み。
母の弘徽殿の女御の仕打ちは、事の真相を読んでも正直なんだかなあという感じでしたが。
それでも高倉や花野や玉絵たち、純子の心根を理解し味方でいてくれる女性陣がきっちりいてくれて、純子の日常はにぎやかで楽しそうで、読んでいて安心できました。
塗籠に閉じ込められるなんてまた王道パターン!(←褒めてます)しかし黙って閉じ込められるままに終わらず、結局は自分の足で逃げ出す純子さんが、とても純子さんらしくて良かったです。ここでお裁縫の腕を使うというのが良いです。
理登さんが身動きできなかったあと一歩のところを、少女の純子さんがちゃんと自分の足で動いて、残りの距離を縮めて飛び込んでいく、このふたりのあり方が、そうか、私は好きなのですねえ。(←今書いていてはじめて気づいた)
純子さんの方も変に照れずにまっすぐに理登さんに甘え素直な言葉を吐くので、微笑ましくて。
そうだ、理登さんの名前よびのおかげで、ようやく「純子さん」を「いとこさん」と自然に読めるようになりました(笑)。

理登さんと直輔さんの友情も良かった。
直輔さん関連のエピソードはできればもう少し読みたかったです。特に最後の番外編に出てきた彼の北の方が気になる。
高倉も含めて、そういう人間関係だったのね。
あと下級女官の花野ちゃん、登場人物紹介イラストに可愛らしく登場している割に実際の出番はそんなにはなくて、お気に入りの娘だったのでもっとエピソードほしかったなあ。彼女だけは純子の女房という立場ではないから、仕方ないんでしょうけれど。
今回の作品は二巻でさっくり完結しているからか、いつもの深山さん作品らしい脇役たちのほんのりロマンスエピソードがほとんどないのがちょっと寂しい……。
前の斎院様も、素敵な女性だと思ったのですが、見せ場が少なくて惜しい。
でも純子さんの兄宮とかは、正直、直接登場せぬままで、良かったかなあと思いました(苦笑)。

純子さんがさらわれた昔の事件の真相エピソードも、ちょっと駆け足だったかなあ。
弘徽殿の女御の心情がほとんど語られないままで、彼女の生い立ちや夫や息子への気持ちやもう少し何か踏み込んでいたならば、彼女の行動、少しでも理解できたのかなあとか思ってしまいました。
母にあんなに冷たく否定されるのは純子さんにはあまりに辛い。理登さんが純子さんの心の支えとなっていて、本当に良かったです。
そして確かに、この勢力図では東宮様は哀れだな……。東宮様、今後も息災でいてほしい。

後日談の幸せそうな家族の姿に満足。お幸せに。
「見たこともない他人の妻など、どうでもいい」なんて旦那さんの台詞にちょっと笑えました。でも確かにそうかもね!
旦那さん似のお嬢さんのお顔もちょっと拝みたかったです。

思えば平安ものといっても、ヒロイン、ヒーロー共に宮様という身分なお話は今まで読んだ覚えがなく、深山さん作品のこういうちょっと珍しい工夫のある設定は好きだなあ。
桜嵐恋絵巻の宮様と白菊をちょっと思い出してしまいました。ふたりあれからどうなったのかしら。
そして相変わらず平安の貴族の生活や衣食住やひとつひとつの描写がていねいに描かれていて不自然なところもなく、安心してロマンスにうっとりひたれるところも、とても好きなのでした。
また深山さんの平安もの読みたくなってきました。

あきさんの挿絵も言うに及ばず素晴らしいの一言です。
141頁の仲睦まじげなふたりの表情が特にお気に入り。

少女小説っていいなあ、平安時代のお姫さまものも本当にいいなあ、としみじみひたれる、幸せな読書のひとときでした。


この一週間くらいのそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

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