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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『鎌倉香房メモリーズ』阿部 暁子 




舞台は鎌倉。
人の心の動きを「香り」として感じることができる高校二年生の香乃。
祖母が営む香り専門店「花月香房」で、祖母と香乃のよき理解者・大学生の雪弥さんと、お店の手伝いをしつつ暮らしている。
そんなある日、店を訪れた老婦人の「消えた手紙」を探す手伝いをすることになり——。

オレンジ文庫の一冊。
香りをめぐるほんわりミステリー風味の物語。
もともと気になっていたこちらのお話、オレンジ文庫の一周年記念フェアがきっかけで手に取ってみました。

読む前に思っていたよりもずっと私好みの物語でした。
なんでもっと早く読まなかったんだろう!(『薔薇に雨』に続いて新年二回目)
京都と鎌倉しみじみ趣のある地、お着物の女子高生、ちょっと不思議系の謎解き、淡い恋の気配、等々白川紺子さんの同じオレンジ文庫『下鴨アンティーク』と共通する部分もあり、違う部分もあり、色々比べながら読むのも楽しかったです。
どちらの物語もそれぞれ安定した独自の世界を構築されているからこその、読み比べの楽しさだと。
贅沢な楽しみ方ができて満足。ふふふ。
どちらの「かのちゃん」もいとおしい女の子です。

引っ込み思案で自分に自信が持てずにおどおどしている香乃ちゃん、私にとってはごく自然に共感できて、がんばって……!と心から応援したくなるヒロインでした。
幼いころに特殊能力が原因で親との間に溝を作ってしまった傷を抱えつつも、困っている人を結局は見捨てられず必死に手を差し伸べる香乃ちゃんのお人好しで色々不器用な生き方がとてもいとおしい。
そして香乃ちゃんがつまったときにその都度絶妙なサポートを入れてくれる雪弥さんがまた素敵なヒーローなんですよ、もう。
穏やかで優しい着物が似合う知的な好青年……名前の可愛らしさ涼やかさもきゅっと私の心をつかみました(笑)。
アサトくんとの対話で薄々感じるものがあったものの、第三話での大学での姿が、香乃ちゃんの保護者役をしているときとはギャップがありすぎておかしかった!
香乃と雪弥さんの淡い関係も心ときめきますねえ。
ふたり、寂しい過去を言葉にせずとも心でつながっているような、そんな関係がとても素敵だなと思いました。

『あの日からの恋文』
恋文、というモチーフがすでに私の好みピンポイントで、老婦人糸子さんも素敵な方で、一話目から私の心をつかみました。
素直に態度に出すにはちょっと気恥ずかしいお年頃だけどお祖母ちゃん想い、そんなアサトくんがお気に入りキャラ。
香乃に淡い好意を抱きつつある彼をすっぱりシャットダウンする雪弥さんがおかしい。それでいてなんだかんだいいコンビしているアサトくんと雪弥さんが好き!全然気づいていない香乃ちゃんも!(笑)
手紙のシンプルなあの言葉も胸にひびきました。
自分の力を後ろめたく思う香乃ちゃんに雪弥さんが語りかける姿がまたよいラスト。
お祖母ちゃんの三春さんが思っていたより軽いノリのひとで、香乃ちゃんや雪弥さんよりある意味時代先乗りしているような、でも好きです!

『白い犬は想いの番犬』
お屋敷ものといいますか、ゴージャスな世界の住人の生活が垣間見られる、ある意味少女小説っぽいお話?
最初はみんながうっすらあやしげな印象だったのですが、読んでいく内にどんどんこのお家の兄弟、響己さんと直希さんが好きになっていきました。きっと正喜さんも悪い人じゃない。
犬のエカテリーナが良いお仕事してました。
最後に出てきたあるおひとの登場でまた読後の余韻が良かったです。
序盤の三人で囲むお好み焼きの場面も、雪弥さんのオリジナルお好み焼きが気になって祖母の話を聞いていなかった香乃ちゃんが可愛かった……。

『恋しいひと』
お店とそのお客さん、お店番としての香乃ちゃんと雪弥さんで世界が完結していた前半二話から、雪弥さんの大学へと、世界が広がりました。
なんといっても香乃ちゃんの「運命の友」チヨちゃんとの友情が、素敵ですね!!
地味系でちんまり似た者同士の女の子のがっつりゆるぎない友情が、まさに古き良き少女小説の香りがして大好きです。
高橋君を罵倒する雪弥さんに圧倒されました……高橋君の前向きさもすごい。
バナナミルクと抹茶ミルクのチョイスにほのぼの。
十和子さんとユカリさんのしかけたからくり。
なんだか高校生の香乃とチヨちゃんにしかけるには嫌な感じだな……と正直思ってしまったのですが、でも対等な女性として香乃に向き合った十和子さんの凛とした感じは、良かった。
結果生じてしまった香乃と雪弥さんとの行き違いに胸がじくじくしました。確かに本当のことは言えないけど、けれどなあ!
香乃ちゃんの想いに対して、相手の気持ちは対等な恋かと言われると確かに不透明で、彼女の女子高校生としてのせいいっぱいの恋心が切なくいじらしい。

『香り高き友情は』
香乃の妹・香凛ちゃんが登場。
香乃とはまた性格が全然違うけれど、香凛ちゃんお友達思いのいいこですねえ!
マイペースにお姉ちゃんを振り回しているけど根は素直にのびやかにお姉ちゃんも両親も好きで。ご両親が本当は香乃ちゃんのことをとても気にかけているのだとまっすぐに伝えに来てくれた彼女、とても良かった。
ちょうど読んでいた少女小説(『薔薇に雨』)で、ヒロインの特殊な境遇に気づいたとたん手のひら返したように冷たくなった家族の描写に心が痛んでいたので、香乃ちゃんのご両親や妹さんは今でも彼女のことを大切に思っているのだと分かって、よけいにとても安心しました。
真奈ちゃんの境遇には胸が痛くなりました。体当たりでぶつかってく香凛ちゃんのガッツがすごい。
なかなか女の子同士でこんなにまっすぐに友情を結ぶのは難しいように思います。なんだかひたすらまぶしくうらやましい。
しかし熱を出した身で単身真奈ちゃんを救いに走る香乃ちゃんは輪をかけて無茶ですねえ!結局は似た者姉妹ですね。
お約束で雪弥さんの的確な行動と救いの手がとても格好良かったのでした。
アサトくんも香凛ちゃんも大好きなので、ラストは嬉しかったです。うふふ。
響己さんのお店に……という、もどかしいふたりの方にも、ささやかな約束が交わされました。
純粋に恋ということばで表すには足りないような、それよりもっと大切な絆で昔からしっかり結ばれているような、このふたりの関係。
追っていくのがとても楽しみです。

鎌倉の街の描写、様々なお香や香りの描写もしっとり奥ゆかしく雰囲気よく楽しめました。
ひさしぶりに鳩サブレー食べたくなってきました。
『下鴨アンティーク』よりは若干会話が軽く現代ノリなのかな。
香乃ちゃんのちょっとずれた思考回路がときどき面白かった。全然気にせず合いの手をいれる雪弥さんの浮世離れ感がまたしっくり馴染んでるんですよね……。


今出ている続編も読みたいと思います。楽しみ~♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 阿部暁子 

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