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『竜宮ホテル 水仙の夢』村山 早紀 




『竜宮ホテル』シリーズ第三弾。
魔法の力に祝福されて不思議をまねく「竜宮ホテル」。不思議の目をもつ作家・響呼とあやかしの娘・ひなぎくのふたりももうすっかりホテルの住人として馴染んでいる。
ひなぎくが節分の夜に出会った不思議『水仙の夢』、響呼が縁あった小さな書店を訪れる『椿一輪』、白猫のおもちゃの幽霊がつないだ『見えない魔法』など、四編の物語収録。

『竜宮ホテル』シリーズ、新刊ずうっと楽しみに待っていました。
前回のお話が出たのは、2013年12月だったのですね。もうそんなに経ったのかあ。
この間にも村山先生の他シリーズの新作や過去の作品の復刊などいろいろたくさん読めて、寂しくはなかったのですけれど。
実のところ、現在刊行中の村山先生のシリーズものの中で、私がいちばん愛をそそぎ続きを待ちわびているのは、こちら『竜宮ホテル』シリーズなのです。

サブタイトルの『水仙の夢』なんて美しい言葉の響き。
今回の遠田先生の表紙イラストもため息が漏れるほど美しく深みがあって、ひなぎくちゃんがとてもとても可愛らしくて、喜びを胸に静かに頁を開き読みはじめました。
最初に登場人物紹介があって、少しお久しぶりな登場人物たちの名前を、いま一度再確認できたのが、ありがたかった。(まあ何度も読み返しているのでほとんどの名前はもちろんおぼえていたのですが、ひとり、キーパーソンのお名前を確認できて良かったなと、後々。)

今の季節にまさにぴったりな節分の物語からはじまって、季節を共有して読み進められたのはなんとも幸せでした。
すぐにクリスマスになり一瞬時間の流れに戸惑ったのですが、あとがきを読んで、そちらは納得。

響呼さんの優しい丁寧語口調、クラシックホテルの優美でゴージャスな描写(あくまでゆかしい描写なのがまたよい。シャンデリアとか)、響呼さん達のストイックで静かな誇りがうかがえる作家ライフ&編集者ライフ、遠田志帆さんの奥行きのある挿絵、等々、村山先生のお話の中でも特に格調高く端正で、古き良き少女小説という風情。
そういうものが読んでいると頁の端々からにおい立つように感じられて、ああやっぱりこの雰囲気好きすぎる……!と、読んでいてうっとり。
優しくてていねいな物語を読んでいると、私の心も静かに澄み渡り浄化されてゆくここちがしました。

響呼さんとひなぎくちゃんのふたりがホテルで同居している何気ない生活の描写が微笑ましく(ひなぎくの作る和風のていねいなあさごはんだとか、響呼さんがひなぎくの寝起きを魔法の糸のように感じ取るところとか)、ああふたりはもうすっかり姉妹で家族になったのだなあと、読んでいるとこちらも幸せで満ち足りた気分になれました。
ホテルの同居人さんたちもますますしっくり物語に馴染んできていて、今回直接登場がなかったひとたちであっても、確かな生活の息遣いを各場面に感じ取れて、嬉しくなったりね。

『水仙の夢』
節分の夜の、ひなぎくと青鬼の、夢のように美しく優しく幻想的な旅。ひなぎくの懐かしの水仙の花畑。
夜空を飛ぶふたりの場面と、柳さんが響呼さんに語った昔話を重ね合わせると、胸が締め付けられるような心地がしました。
ひなぎくのおとうさまのようだった、青鬼さんの物腰が、このふたりの心情が、想像するとたまらないです。悲しくやりきれない感情も水仙の美しい場面に吸い込まれて溶けていったような、いっそう印象的に思えました。
青鬼の娘の方も数奇な運命をたどったのだなあ。彼女のエピソードも読んでみたくなりました。
柳老人がまたひとつ新しい顔を見せてくれたな、と。読めば読むほど底の知れないお方です。
私の中では柳さんは『カフェかもめ亭』の銀の鏡の悲しすぎる少女の物語の語り手のイメージがいちばん強く、今回のお話はあの悲しみと、通じるものを感じました。
そして確かに柳さんと響呼さんは、立場を同じくしているな、と。影の部分が。
『カフェかもめ亭』といえば、満ちる先生のおつかいの紅茶、きっとここのお店のですよね!林檎の松の香りの紅茶素敵です。
そしてひなぎくちゃんのうさぎさん帽子姿が、想像するともう可愛らしすぎて、想像するだけでもだえています(笑)。
贈り主の嬉しそうな描写にもほっこりです。
そしてラストは千草庵。心にくい演出です。
このお話の読後感が残っているうちに、日の出前の世界を歩いて堪能しておかなければなと思いました。
あと、最初のひなぎくのこたつ賛美、住人総出の豆まきの記録もほっこり幸せでお気に入りな場面でした。

『椿一輪』
こぐま座書店に泉屋書店、また素敵な響きの名前。きりっとした仕事人の世界をまたひとつ新しく読めて楽しかったです。
響呼さんの出張、作家ライフの描写がまた楽しい!図書館での講演と聞けばよけいに熱を入れて読んでしまいます。
(たぶん私がこの図書館にいるとしたら講演会前後に椅子を倉庫から出し入れしたりそんなポジションだな……と入り込みすぎてそんな空想にひたりつつ読む)
椿の花とストーブにあたる猫、鮮やかな色が切り取られた描写が印象的で、しんと切ない気分に。
響呼さんの苦心の作のサインの行方に、ほわんと、優しい気持ちになりました。

『見えない魔法』
携帯電話の開発に携わっていた青年の語りがとても興味深く、彼の朴訥とした人柄がまたとても好もしかったです。
私自身は高校一年生のころに携帯電話を買ってもらい三、四回買い替え十数年使い続けていた人間で、振り返れば携帯にはなんてお世話になってきた人生だったのだろう。この『竜宮ホテル』シリーズの二巻目を読み終えたころだって、普通にガラケー使ってたよなあ。確かにスマートフォンの時代がこんなにわっと広がるなんて、もちろん想像もできなかった。
時の流れのはやさを感じて私も一瞬めまいがしました。
彼の挫折がだから本当につらかったですが、白猫のおもちゃの幽霊さん、ああ、良かった。
帰ってきたあと出迎えてくれた家族の描写も好きでした。

『雪の精が踊る夜』
響呼さんと愛理さん、満ちる先生の友情が、とっても好きだなあ!と思いました。
優しすぎて親を嫌えずどんどん弱っていく愛理さんの姿はとても辛かったです。世の中って本当にやりきれないこといっぱいある。
あとひなぎくちゃんの秘密の魔法のお勉強、なんだかとても好きでした。(なかなか恐ろしい事態をひきおこしましたが……)
『天気の本』というタイトルでようかいの子ども向けのやさしい魔法のテキストって、とても私のつぼにはまりました(笑)。
美鈴さん、思っていたより明るく愉快な方で、優しく愛情深くて、ひなぎくとお話している姿にほっこり。最後の「お疲れ様です」が良かった(笑)。愛理さんの母親のエピソードと同時に美鈴さんのエピソードも辿れたのは救いでした。
そして草野先生と響呼さんが語らう場面。
竜宮ホテルにいれば、響呼さんの先祖からの力は、やすらうのかもしれない。響呼さん、ずっとここに住んでいいのかもしれない。
確かに響呼さんは、幸せを受け取れるだけの善行は、十分すぎるほど積んでいるよな、と、私も深々と頷きました。
響呼さんほど優しくお人好しの人なんて、そうそういないよ。彼女の少々斜に構えた一人称語りではすぐには分からないけれど。
「何よりも寅彦が悲しみます」の台詞、響呼さんが考えているのより百倍くらい深刻さがあるよねと、勝手に深読みして想像してにまにましていました。
ここであとひとつ気になるのが、草野先生の奥さま、寅彦さんのお母さまがどんな方だったのか。
普通の「ひと」であったのかどうかも謎に包まれていて。なにせ竜宮ホテルですからねえ。

さて今回の話で唯一・最大に物足りなかったのが、寅彦さんの出番が少ないー!!というところでした(笑)。
知的で穏やかでテリア犬のような寅彦さんが私は大好きですし、私がこのシリーズでいちばん愛しているのは、響呼さんと寅彦さんの初々しく奥ゆかしすぎるロマンスの進展だったりしましたので……。
寅彦さん、大好きな響呼先生をもっとちゃんと捕まえておかないと、この街や全国各地にたくさん存在しているであろう先生のファンに、いつかかっさらわれてしまうんじゃないかしら。
と、特に第三話を読んでいて、私は真剣に心配してしまったのでした。
響呼さん全然自覚してないし。
第一巻の幸せと不幸せの問答をしていた出会いから、ふたりはきっと知らず恋に落ちていたのだと、ホテルで暮らす間に無自覚に愛をはぐくんできていたのだと、私は信じています(笑)。
これ以上お似合いのふたりはいないよ~。
本当に、次巻こそは、初々しく奥ゆかしい二人のロマンスっぽいエピソードに、期待してます!!
いや、その前に、寅彦さん自身のまともな出番を、待っています(笑)。
安斎先生との出番では、忙しい日々にますます心労が増えそうで心配ではありますが……。


村山先生の今年のご予定も盛りだくさんな感じで、読者としてはとても楽しみですが、先生も、お身体大切に、お健やかにいらしてほしいなと、切に思ってあとがきまで読み終えました。

あと、ブログ感想に書き損ねていましたが、新装版『天空のミラクル』も、読みましたよ!



焼きたてラングドシャとアップルパイが夢のように美味しそうで、小学生の女の子たちの友情と、大切なものを守るため立ち上がった少女の勇気が、心に響きました。
こちらも、続きが読めるのを心待ちにしています。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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