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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード』荻原 規子 




大学入学を控えた春、はじめての一人暮らしをはじめた美綾は、迷い込んできたパピヨンを拾う。
そのパピヨンはある日突然、八百万の神であると名乗り、人間になるための感覚を学ぶために美綾の元にやってきたという。
大学で再会した元同級生、幽霊をめぐる騒動に、おかしな犬との共同生活。美綾の新生活は波瀾万丈で——。

中三のころ運命的に出会ってはまった『勾玉三部作』の荻原規子さんの新作。
タイトルと勝田文さんの表紙からして素晴らしい。
春、やわらかな桜色、そわそわ浮き立つような雰囲気、躍動感が。
買ってから読みはじめるまでに少々寝かせてしまいましたが、まさに春一番のぴったりの季節に読むことができて、良かったかもしれません。

荻原規子さんの書かれる文章は端正で読んでいて心地よく(そういえば「端正」ということばを知ったのも荻原さん作品がきっかけ)、物語も特に後半からどきどき夢中になって読んでしまいました。
何気ない日本語の使われ方や、特に自然界の描写がとても好きだなあ。
神様の設定のあれこれも軽いタッチで描かれているけれどさすがの深みを感じる世界観。


以下、ぼかしましたが若干ネタばれ感想なので一応ご注意くださいませ。


ヒロインの美綾が、真面目でやや世間知らずで自信なさげな女の子で、でもどこか素のままでひとを惹きつけるものを持っていて。
読んでいて自然に応援したくなる娘さんで好感度高くてとても良かったです。
新生活、周囲に流されかけたり考え方がやや甘かったり、大学一年生なんだからこんなものでしょうし、その中でも自分自身をしっかり持っていて、何があってもそこはけして譲らないいきりっとしたところがとても好きです。
若い娘さんがそれまでとまるで別の世界に投げ出され、惑い間違えつつも自分の足で踏ん張って駆け抜けて成長していく、この荻原さん作品のパターンが、私はやっぱり大好きだなあと、読んでいて嬉しくなってきました。
はねっかえりの気が強い女の子ではないけれど、真面目で少し古風なもののほどよく普通の女の子で実は芯の強い美綾は、今の私にとっては、歴代の荻原作品ヒロインの中でもトップレベルで好きなヒロインかもしれない。

そして迷い込みパピヨン犬、自称「八百万の神」のモノクロが、とっても魅力的!
普通の犬モードのモノクロもくりくり可愛らしくて犬がいる暮らしっていいなあとうらやましく思えてきたり。
神様モードのモノクロと、美綾のかみ合わない会話も、なんか、荻原さん作品らしい。私はけっこう好きです。
人間になる目的で美綾と共に暮らすというモノクロは、神様というものの美綾にとってまるで役に立たない存在ですが(苦笑)、微笑ましくいいコンビにだんだん思えてきて、何より後半に美綾を助けに駆け付けたモノクロは最高に格好良かったです。

美綾の新入生キャンパスライフも読んでいてとても楽しかったです。色々な意味で感情移入できました。
かつての同級生・有吉さんや澤谷くんとの再会、そして過去にまつわる幽霊騒ぎがメインストーリー、でしたでしょうか。
誰がどこまで味方なのか、どこまでファンタジーでどこまでが現実なのか、荻原さん作品なだけに読めなくて(笑)、ロマンスもスリルもありどきどきでした。
幽霊の正体、どこか無邪気でわるびれない悪意にぞっとしたり、かと思えば美綾を純粋に心配し助けてくれる身近な存在にほっとしたり。
若干あっさりと騒動の幕は下りましたが、読み終えた私も日々の憂鬱をはらえたような、さっぱり清々しい気持ちになることができました。美綾の気持ちの持ちようの変化、成長が感じられたのも嬉しい。
女子校時代からの友人の愛里さんも好きでした。彼女の友情は読んでいてほっとできました。
サークルの杉田先輩たちの対応も良かったです。こういう先輩方に見守られての生活なら、心強い。

澤谷くん、そつなく小器用で爽やかなイケメンくんで、若干うさんくささがぬぐえなかったのですが、結局いいひとでなんだかほっとしました。表面的には、美綾はもったいないことをしちゃったんだろうな。
いや、でも、それより例の、モノトーンの感じの良い青年ですよ。
勝田文さんの表紙イラストの彼があまりにイメージぴったりの青年で格好良さにうっとり。
正体は薄々感じていましたが、しかし彼となると、美綾の大学生活の恋は前途多難そう……。
私としては、大人の視点で美綾をさとし支えてくれた川森先生が好みだったのですが(笑)、まあそちらはないかな……。でも正体が正体だし、分からないですよ。応援します(笑)。

女子学生さんたちのお洒落な春服の描写とかすてきでしたし、生クリーム不使用のカルボナーラやゆでたての卵のサンドイッチがなんだかとても美味しそうで、そういう生活の描写も良かったです。
作りたてのたまごサンドは、確かに春の味という感じがします。

サブタイトルが「第一曲 子犬のプレリュード」ですし、続きが読めると信じています。とても楽しみです。
早春に幸せな読書のひと時を過ごせました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 荻原規子 

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