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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『金星特急 2』嬉野 君 




金星特急には途中乗車も途中下車もできない、逆らえば樹に姿を変えられる。
次々と困難に襲われる中、錆丸は砂鉄とユースタスに助けられてばかりの己を不甲斐なく思い、強くなりたいと願い始める。
上海に続いて金星特急の次の停車地は、密林のど真ん中。
金星の所望する「王の火」を求めて、密林に分け入る錆丸たちだが——。


さくさくいきます。二巻目の感想。
といってもすでに最終巻まで読んでいる状態で、今後の展開をすべて踏まえたうえで、内容を思い返し感想を書いているので、色々混ざってたりするかもしれませんが、ご了承ください……。

生死隣り合わせの過酷な道中で、錆丸、砂鉄、ユースタスの三人が、旅の仲間としてしっくり馴染んできている雰囲気なのが、読んでいて嬉しかった2巻でした。
とはいえまだ完全に信頼し合う仲間とまでは言えず。会話やふとした仕草に、ぞくりとしたり、かと思えばコントだったり、印象が定まらなくって、はらはら目が離せない!
錆丸の成長のきざしと、砂鉄とユースタスのふたりの関係の微妙な変質が、ポイントでした。
旅路の各地の描写も生き生きとても魅力的で印象に残るものばかり。
私も高校の世界史の図説が大好きで、特にシルクロードの交易の箇所がロマンをかきたれられて大好きで、この物語を読んでいるとこのワクワク感も存分に味わえてとてもいいです!

密林での行軍は、また過酷な環境ながらに、砂鉄の尋常でないサバイバル能力に感心しきりだったのと、ユースタスの食欲旺盛さと砂鉄との攻防が面白すぎて……。
あの食べられる赤い花束、プロポーズ!なにげに印象的でお気に入りでした。むしゃむしゃしているユースタスでほとんど台無しでしたが。
バクを捕まえてきて砂鉄に怒られるユースタスもおかしかった。本当に迷コンビ。
棕櫚王と錆丸の交流は、殺伐としたストーリーの中で、つかの間純粋に楽しそうで心温もるもので。真実を聞かされると切なかった。
あの漢字の読み取り云々のエピソードにはどきどきします。上海でもそうでしたが。
ユースタスの謎めいた能力が見え隠れ。砂鉄がユースタスのこういう力を認めているのがちょっと意外でもあり。

そして三人を置いて発車してしまった特急、吐蕃国の物語へ。金星特急、動きが本当に読めなくてシビア。
「シャングリラ」という言葉の響きと、扉絵イラストの三人それぞれの表情がとても好きなお話。
フランス兵のアンリさんのシャングリラへの心情が迫ってきて泣きたくなりました。
今度の試練は高地越え、狼との戦い。そして砂鉄とユースタスの決裂。
ユースタスの瞳と心根の清らかさに吸い込まれそう。ここで若いお母さんを助けずにいられない彼女の情を思うともう、なんともいえない。
「絶望は愚か者の結論」ユースタスの言葉を胸に必死に頭をめぐらせ、砂鉄と取引した錆丸、結果なんだかんだ全員の命を救った砂鉄、色々事情はあれどもこの三人組やっぱりいい!とラストまで読んでようやく胸をなでおろしました。解決してないこと山積みなんですけれどね。
ユースタスの秘密がぼんやり見え隠れしてきました。秘密以上に、ユースタスが抱えている孤独や影の正体が気になってきました。

番外編は、本編の裏側、錆丸視点では語られなかった、砂鉄とユースタスのやりとり。
ふたりの緊張感をはらんだ大人のやりとりにどきどきしました。そこはかとなくしたたる色気にぞくぞくしました。
『砂糖椰子・蜜・極楽鳥・氷砂糖』のタイトルが秀逸ですべてをあらわしている。
鳥の脂と砂糖椰子の樹液が焼けた甘い香りのディナーが想像するだけでおいしそうで、ふたりきりの場面を思うと、それ以上のおいしさも感じます。
あとは山越えの場面での、ユースタスの「お願い」と「氷砂糖」のやりとり、砂鉄のぶっきらぼうな優しさと色香がもう、たまらないですね!繊細な挿絵込みで名場面です。

カラー口絵の背中合わせのふたり、扉絵のユースタスの表情、ユースタスの性別がゆらぎはじめている微妙なラインで、どこまでも清らかなのだけれど独特のほんのり色香が漂う美しさ、たまらないです。
強いところと危ういところを併せ持つユースタスがとてもとても好きだなあ!(食欲込みで)とはっきり思いはじめた巻でした。


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カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

タグ: 嬉野君 

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