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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『金星特急 3』嬉野 君 




錆丸たちの車両に、言語学者にしてロヴェレート国の王子・アルベルトが新たに加わった。
次の金星特急の停車地は、草原のど真ん中、砂鉄の属する傭兵集団・月氏の幕営地。
傭兵の入れ替わりの祭り「羊追い祭」の開催期に居合わせた花婿候補たちは、強制的に祭りに参加させられることに。
腕に覚えのある傭兵に挑戦し勝利しなければ、金星特急の出発には間に合わない。錆丸は窮地に陥る——。


「サファイアの騎士」ユースタスの制服姿がきりりと凛々しく格好いい3巻目。
アルベルト殿下初登場、月氏の皆さまも一気に初登場、そして謎の場所に世界各地から集められた女の子達も初登場。
少女小説らしく(?)女の子キャラも一気に増えて、華やぎました。男性キャラも色々豪華でますます華やぎました。
展開がシビアなのは変わりないのですが。
さすがこの砂鉄の属する傭兵集団。情け容赦がない。
とっつきやすそうな人たちもいるけれど、ぞくりとするところは本当に怖い。

尋常でない学者魂で好奇心旺盛で口達者でひねくれ者のアルベルト殿下。また強烈なひとが登場したな……。
あの試験合格のために取った手段があまりにあっさり気負いがなくて、ひええーと肝が冷えました。
何事もなかったかのように月氏の人々の間をひょいひょいフィールドワークしていく彼、この巻の時点では正直、ざわざわ感を完全にはぬぐえなかった気がします。

アルベルトの登場で、ユースタスが金星特急に乗ることになった事情もうっすら見えてきました。
またなんて理不尽な乗車理由……。誰を恨むでもなく心から王女殿下の心配をするユースタスの心が、どこまでも優しくて美しくて泣きそうです。
ちらりと語られるユースタスの過去エピソードは、やはりどれも寂しい影があり、心が痛みました。
錆丸とユースタスの距離はすっかり縮んできて、姉と弟、ある場面では兄と妹のようなふたりのじゃれ合いは、読んでいて微笑ましかったです。
あ、もう書いちゃいましたが、ユースタスの性別の秘密もはっきりと明かされましたね。
雷鳥様格好いいな!あの砂鉄のなんとかかんとかの話をユースタスにいきなりふる雷鳥様、最高です(笑)。

そして砂鉄が金星特急に乗った理由も明らかに。そういうことか!
なんかこんな凶悪な顔して(笑)、妹思いのいいお兄ちゃんだったんだなあ、とイメージがだいぶがらっと変わりました。
黒曜との確執も、彗星への愛あってこそでしょうし。
このシリーズの登場人物の中では比較的、まともな家族愛に恵まれ育てられてきたひとだったんだなあ。
とはいえ彗星自身の恋の向かう先がね。これは辛い。目を覆いたくなります。

三月、夏草、無名、鎖様、射手座、月氏のメインキャラの皆さまと初顔合わせ。
月氏の名前制度が、確かに人の名前には奇妙なものかもしれないけれど、微妙なちぐはぐさ、無機質な響きがこの月氏集団らしくてみんな印象に残ります。天のものと地のものかあ。人の名前が私のつぼにぴったりはまる物語は得難いです。
三月がこの時点ではだいぶ普通の、ただの女好き軟派男に見えます……。夏草作の、遊牧民風の料理がおいしそう。
無名さんは、優秀で苦労性で報われないいいひと、という印象でした。
いちばん得体が知れなかったのは鎖様でした。可愛らしく情にあつく素敵な女性だったのですが。
あと雷鳥様に惚れてしまいました(笑)。女ったらしっぷりがすごいです。

錆丸の特異体質が判明する場面にもひやりと胸が冷えましたが、それ以上に、「砂鉄に謝れ!」と黒曜に叫び泣いた錆丸の姿が強烈で、心の底から相手にそう伝えたかった錆丸がもうとてもとても愛おしくて。
なんか、月氏の集団も悪いところじゃないなあ……と思いはじめたところで、また大ピンチ!!

同時に、まだ男性恐怖症を拭い去れないのに、なんとか砂鉄を慰めたくてチョコレートを渡そうとするユースタスがそれはもう健気で可愛らしくて……。この時点では雷鳥様のみ見抜いていたのかな。砂鉄とユースタスが微妙に惹かれあいはじめているのを。
この時点では、あそこのタイミングで殿下が入ってきて、ふたりにとってよかったな。
ユースタスの天然で世間知らずなところをさんざんからかわれている姿は、かわいそうだったけれど貴重な和み場面でした。
いや、和みと言えば、プリン!確かに、そこでプリンが出てきたら、砂鉄が怒りだすのも分からなくはない。

番外編はアルベルト視点の『白鳥はかなしからずや』。
実は私、若山牧水のこの歌、中学か高校の教科書で読んで以来心ひそかにお気に入りなものだったので、タイトルで目にした瞬間心ふるえてしまいました。
いろんな民族色あふれるこの物語で、ふと使われる日本語の古風な響きが素敵すぎて、ちょっとこれだけで惚れ込んでしまいます。
海の青にも、空の青にも~のくだりが、ユースタスの瞳の色にぴたりとはまって、どちら側にも染まりきれない、どこまでいっても孤独な貴公子ユースタスの立ち位置が、改めて哀れで切なくて、涙が。
この歌に、こんな素敵なお嬢様のイメージを私に与えてくれて、とても嬉しいです。
薄幸、心優しく健気、凛々しい系の美女という、最高に私好みのヒロイン像です。(孤独の果てに最終的には幸せを得られたという余韻がまたいい!
そしてあの挿絵の、錆丸にあやされてるユースタスとからかう砂鉄のふとした視線の交錯の場面が、少女小説的にとても美味しくてどきどきしました。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

タグ: 嬉野君 

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