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『金星特急 6』嬉野 君 




アルベルトが聞き出した特急の目的地・グラナダにたどり着いた錆丸一行は、無事に砂鉄たちと合流を果たす。あとは金星特急の到着を待つばかり、根城にしたアルハンブラ宮殿で、錆丸たちはイェニチェリ達敵の追撃を避けつつ列車に乗る作戦を練る。
一方そのころ、兄の砂鉄に恋する彗星含む「許されない恋」をしている少女たちが、異界の金星の庭に集められていた。彼女たちは錆丸の蜥蜴ウェルの目を通して旅の一部始終を見せられており——。

※シリーズ未読の方はネタバレ注意です。


外の世界の凄惨さとうらはら、花と伝説に彩られた夢のように美しいアルハンブラ宮殿にて、皆がついに再会!!
変わらない絆と安心感、ちょっとずつ変わったあれこれが、読んでいてとても素敵だった6巻目でした。
金星の庭の女の子たちもストーリーにじわじわと関わりはじめた感じ。

錆丸の本来の年齢やすっかり青年のものになった挿絵の姿、どんどん強かになっていく精神に驚愕しつつも、もはやいちいち立ち止まっていられないほど物語が面白いのです。ノンストップで読破です~!

旅の最果ての地、という風情、グラナダのアルハンブラ宮殿の描写がとても素敵で憧れました。
花や果物や建物の仕掛けや、ひとつひとつが優美でうっとりため息もので、神話や伝説の世界に迷い込んだかのよう。
本物の王族のアルベルト兄妹や貴公子ユースタスがしっくり馴染んでいるのはもちろん、月氏の傭兵メンバーや錆丸たちも意外と雰囲気に溶け込んでいる感じなのが面白くもありました。だから要塞か。
この金星特急というお話がそもそもこの世とあの世の境に横たわっているような、神話世界のモチーフもありなお話で、重なり合うイメージがとても好きです。

さてヴィットリア王女がまさかこんな風にお話に関わってくるとはね。さすが殿下の妹(二度目)。
「殿下はでんか一人で十分」という錆丸の台詞に笑いました。
ヴィットリアが三月と夏草とひと悶着起こしたあとの錆丸の場の収集術がもう完璧で。あの三月をしょうがないおにーちゃん扱いしている錆丸すごい。
薔薇のお庭でのダンス、このときはあまり気に留めていなかったのですが、後々の展開を読んで、なんだか王女様も健気で切ないよう。
ふたりの仲良さげなダンスにショックを受ける金星と、寄り添ってなぐさめる女の子達も切なかった。

そして相変わらず自分の目の魔力に振り回され砂鉄とぎくしゃくしたままのユースタスの姿が辛い。
そんなユースタスの態度に真っ先に気づき砂鉄をたきつけにいった錆丸は、流石でした。アルベルト殿下本当に女子高生よりも恋話に目ざとい……。
ユースタスと錆丸のコンビは、錆丸が成長した今でもやっぱり、仲良し姉弟みたいで和みます~。
実戦訓練の後のご褒美のプリンは相変わらずで和みました。

砂鉄はね、無名との会話で「惚れている」とはっきり口に出した姿に、ときめきがとまらなかったです。
まさかあの砂鉄がこんなことを言い出すとは、一巻目の時点からは想像つかない……。
ユースタスが自分の顔を見ないのだけがよくない、それ以外はどうでもいい、とさらっと流してしまうおおざっぱさというかなんというか、砂鉄らしい愛情だなと思いました。
そのあとのユースタスと砂鉄のふたりの場面は、それはもう甘くて優しくて、ユースタスが抱えている苦しみもようやく少しは溶かされたようで、ユースタス、本当に良かったです。
幽霊騒ぎのオチはちょっと笑っちゃいました。ふたりの関係を誤解したままの夏草が気の毒だけど夏草らしくて可愛い……。

夏草と言えば、彼の活字中毒ネタがこんな伏線になっていたとは!読んでいてしびれました。
バベルの一族、世界語と純国普の犯した罪。この場の三人の語らいと覚悟がじんと胸に響きました。

雷鳥様と黒曜のふたり酒盛り。
ラストまで読み切ったあとに読み返すと、色々こみ上げてきます。雷鳥様の気持ちもなんか分かったような。

伊織お兄ちゃんと暁玲さんたち一行との再会も、嬉しかったです。
金星のことを分かっている味方って心強い。伊織さん、優男風情なのに月氏の面々にかこまれてもまるで色あせないのがすごい。
暁玲さんとユースタスの女子トークの場面もお気に入りでした。
射手座もお気に入りな女の子になってきました。夏草のネーミングセンスがさすがというかなんというか。

静かに残り少ない人生を受け入れ行動する花婿候補たち、戦火に巻き込まれんとする人々、そんな中で月氏達を出し抜いて派手な行動に出た錆丸に、これまたびっくり仰天。でも錆丸らしい選択だ。
めちゃくちゃ無謀なんでしょうけれど、メンバーの中で一人ひとり、誰がどこまで味方で敵なのか、冷静に見定めて情報の開示や行動を決めていく錆丸の成長っぷりとか、確かに協力してくれるバドルさんたちとか、大丈夫かしら、大丈夫かな、きっと大丈夫!とはらはらどきどきをおさめられないまま、次巻を読むんだ私!(そろそろ何を言っているのか分からなくなってきました。)

砂鉄とユースタスの幸せそうな姿にときめく一方で、ふたりの関係が進むほどに、砂鉄への想いに苦しみぬく彗星が、辛いね。
無名のプロポーズ作戦のエピソードはなかなか素敵でしたけれど。

番外編、まずはアルベルトの少年時代の初恋話。
口達者は相変わらずなものの、殿下にこんな純情な少年時代があったとは!(失礼)
そして確かに世間知らずさをプラスすると、ヴィットリアにそっくり。
博士の初登場シーンにはけっこう度肝を抜かれました。文化の違いだなあ。ほうっ。
はじめぎこちなかったエミリーとの距離を縮めていき共に研究にいそしむ姿がきらきらしていて、お祭りで若者たちの愛の言葉を収集する場面がとても好きでした。自分たち自身でストレートに愛を語らうより、このふたりの恋には、ふさわしい気がして。
初恋の終わりがまたやるせないです。エミリーの気持ちも分かるし、殿下の気持ちも切ない。

そしてユースタスが銀魚の力を得ることになったきっかけのお話。
アイルランドと妖精というと、なんとなく『伯爵と妖精』シリーズとか思い出してしまいます。
ユースタスのお家は、お兄さんまで、本当にろくでもないな……。
乳母のノラが本当にいいひとで、ユースタスへの混じり気ない素朴な優しさに、読んでいて泣けてきます。
ノラの用意した少女のドレスにおずおず袖を通すユースタスの場面がおもはゆくとても幸せでした。
ユースタスの食欲は、金星の力とは直接関係なかったんだな……とかどうでもいい(?)発見を。
じゃがいもパンケーキに羊のシチュー、大量のピクニックのごはんがとてもおいしそうでした。ココアは、ここで登場していたのか。


一昨日昨日と記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

タグ: 嬉野君 

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