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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『流血女神伝 帝国の娘』前・後編 須賀 しのぶ 




ルトヴィア帝国の国境ほど近い山村の猟師の娘・カリエは、狩りに出た森の中で見知らぬ男に攫われる。
カリエが連れていかれたのは、見知らぬ城。そこでカリエは、皇位継承権を持ちながら重い病にふせっているというアルゼウス皇子の影武者となるべく、カリエを攫った青年エディアルドによって厳しい訓練を課され——。


十年単位でずっと気になっていたものの、シリーズの壮大さになかなか手を出しかねていた『流血女神伝』シリーズ。
とにかくがっつり読み応えのある少女小説を読みたい!という気分がここ最近継続しており、ちょうどかつくらの最新号が須賀しのぶさん特集だったのもあり、ついに読みはじめてみました。

とにかくお話に勢いがあって、分厚いのに文章はすらすら読みやすくて、読みだしたらもうノンストップでした。
面白かった~!!少女小説らしい華やかな雰囲気もがっつり骨太ストーリーもそこはかとないときめきの序章みたいなものも、皆楽しめてとても良かった。

主人公のカリエは十四歳のごくふつうの村娘、皇子の身代わりとしていきなり攫われて、それまでの暮らしとはまるで違う重苦しい陰謀渦巻く世界に放り込まれて厳しくしごかれて、味方なんて誰もいなくって、非常に理不尽でシビアな境遇に。
そんな中でも修行に耐え抜いて、生き生きとした皇子役をやがて完璧にこなすようになり、不安や不満は内心もちろんあるものの、己の知識や世界が広がったことに喜びを感じるカリエの姿が、世界をみつめる彼女のまなざしが、読んでいてきらきらまぶしくて、とても好きでした。
北の地から宮廷にやってきて、まさに重苦しい冬からあたたかく軽やかな春にお話が転調したような、お話の瞬間というのか(実際は少しずつの変化だったのでしょうが)、読んでいて実感できたのが、良かった。

とはいえ貴族社会は影のいけ好かない部分も数多くあるわけですが(フリアナさまやゼカロ公が筆頭ですし)、けっこう客観的にものごとを見られるカリエと、彼女のことをなんだかんだ細やかにサポートしてくれるエディアルドの存在あって、身代わり生活も意外と危なげなく落ち着いて読めた印象。
そう、エディアルドですよ。
カリエへの厳しく冷たい態度と、ほんの少し彼女自身への情が見え隠れする彼の姿が、読んでいくごとに不思議と好もしくなってゆくのでした。
こういうどこまでもストイックな性格の騎士さまは私、嫌いじゃないよ。(そして努力を惜しまぬ前向きで賢い少女との組み合わせ、嫌いじゃないに決まってます!美味しすぎる!)
カリエにさしだしたホットチョコレートの甘いぬくもりの場面がとても好きでした。

あと颯爽としたグラーシカ王女とアル(カリエ)の友情も、読んでいて楽しくて好きでした。グラーシカ王女格好いいなあ!色々な葛藤も飲み込んだうえで強くあろうとしている姿勢が。カリエに優しく教え諭す姿勢も。
サルベーンが出てきてから、またお話と人間関係に混沌としたものが。
カリエの惚れっぽさがなんかやっぱり少女小説だなあ、と実感(笑)。
彼女のこの気質が、物語に今後どのように影響してゆくのか、気がかりです。
サルベーンはそれはもう全然只者じゃない感じがしますし。(それにしてもカリエの性別はばれていないのにサルベーンに恋する乙女の態度のままで周囲が苦笑しつつ納得してくれているサルベーンの人たらしぶりがすごすぎる……。)

そして後編も。



今度は四人の皇位継承権を持つ皇子様たちの共同生活編。
四人の皇子様がまたそれぞれキャラがたっていて魅力的で(本物のアルゼウスも含めてね)、みんな仲が悪いんだか良いんだか……という関係がいつしか心地よくなってきていたので、ラストでみんなの関係が崩れてしまったのは、切なくて辛かった。

ミュカが、初登場時の印象は最悪だったのにも関わらず、カリエをライバルとしてどんどん成長していってくれて。そしてカリエの真実を見抜き、それでもなおいざというときカリエを守った姿が、最高に格好良く惚れ惚れしてしまいました。
結果負傷してしまったミュカがやりきれない。カリエとミュカの間でゆるぎなく結ばれた絆はとても好きだけれど、罪悪感にかられるカリエの姿にも、残酷としかいいようがないです。なんとかミュカ、復活してほしいな……。
ドーン兄上もシオン兄上もそれぞれ好きでした。この二人の絆も美しいけどああいう事件のあとではやはり悲しい。
ドーン兄上とふたりお忍びにでかけるアルの場面は、まだ平和で楽し気で良かったです。

エディアルドとカリエの、全然甘くはないけど確かに何かの絆が芽生えてきている関係が、とても良いですね。
カリエの失踪後、再会したふたりの場面が、挿絵込みでとてもとても好きでした。美しい。
本物のアルゼウスが絡むと結構大人気なく、ときにカリエにたしなめられることもあるエドのギャップも、人間味があってちょっと面白い。
後半部分でカリエへの扱いと自分の感情を持てあまし葛藤するエドが印象に残りました。
本当にこのふたり、これからどうなっちゃうんだろう。

カリエの出生があまりに謎めいていてとても気になる。
「花嫁」ってどういう意味なんだろう。ラクリゼの正体や意図とは。サルベーンは何をたくらんでいるのか。

挿絵も凛々しく格好良く素敵でした。
本文で受ける印象よりも挿絵でみるとカリエが幼いような感じがして、カリエはまだほんの十四歳の子どもなんだよなあ……と、彼女のすでに波瀾万丈の人生に、胸をつかれます。

期待通りにとても壮大な物語の幕開けといった感じで、早く続きを読んでいきたい!!わくわくします。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 須賀しのぶ 

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