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『流血女神伝 女神の花嫁』前・中・後編 須賀 しのぶ 




ザカリア女神のさだめにより、ザカールの長老家に生まれる子は代々男児であるはず。しかし999番目の子として生まれたラクリゼは、女であった。
「呪われた子」として父に愛されず性別を偽って育てられたラクリゼ。文武に優れあらゆる評判高い彼女は、うちに激しい苦しみを抱えていた。
そんな彼女が十二のとき、結界を破って外から少年がやってきた——。


『流血女神伝』シリーズ、本編の続きが非常に気になるのですが、まずは外伝から読むと良いと聞いて、はやる気持ちを押えて、読みはじめてみる。
(番外編の『天気晴朗なれど~』は、取り寄せ中ですぐに手元に届きそうにないので、保留)
本編であちこち暗躍していた、ザカールの謎めいた最強の戦士・ラクリゼとサルベーンの物語でした。
この『女神の花嫁』で、彼らの子ども時代からの因縁、ザカールという特殊な地のこと、一から読みこむことができて、だいぶ理解が深まりましたし、何より彼らふたりの独立した物語としても、たいへん読みごたえがあり面白かったです。

ザカールの風習が、読む前に想像していた以上に異質なもので、こたえるものがありました。
本編では強く凛々しい大人の女性だったラクリゼが、辛い立場でもがき苦しんでいる様が、読んでいて哀れでした。
少年時代のサルベーンもまた、現在の姿とは全然違ってかわいげがあって(笑)。
ラクリゼの父親が、ラクリゼが思っているよりは妻と娘をきちんと愛していたことが、救いでした。
アルマとも、ちゃんと惹かれあって愛し合っていたはずなのに、なんて残酷な運命なんだろう。
ラクリゼを可愛がってくれていたミネアの最後は切なく辛かった。彼女が外で出会った大切な人の存在が。
ラクリゼの秘密を知らされてなお、彼女を慕うレイザンの行動が、泣けました。大巫女様も、けして愛がないわけではないんだよなあ。
この『流血女神伝』の世界は、子どもたちにつらく当たる親世代の人々の事情も徐々にきちんと書いていってくれるところが、私は好きだなあと思います。
きれいごとばっかりではないけれど、運命的に出会って心の距離を縮めてゆくラクリゼとサルベーン、良かったです。



中編。
最初の挿絵の場面から表紙のような関係になるまで一巻分。
カリエ同様、ラクリゼの人生もサルベーンの人生も、若くして波瀾万丈すぎます……。
最初の仲違いから三年間、特にサルベーンがこんなにえぐいことになるとは思わず、辛かった。
一方のラクリゼも、思わぬ挫折を得てから、人の家庭の優しさにはじめてふれて、生まれ変わる。
アデルカとその両親たちがラクリゼに与えた平和で優しい時間が、正直最初はちょっと戸惑ったのですが、じわじわと胸にくる。ラクリゼがこの場所を離れることになっても、それでもとても良かった。
変わり果てたサルベーンとラクリゼの再会から、ラクリゼが彼を暗闇から救い出す場面が、とても良かった。
ごく当たり前の夫婦生活をはじつかの間のひとときに終わってしまいましたが、涙が出るほど幸せで愛おしい時間でした。あのサルベーンがこんなにふつうに夫として父親としての感情を表にあらわしていたとは!
そして女神様の究極の選択。こんなのあまりに辛すぎる……。



後編。
こんなことになったら、確かにもうふたり、完全な幸せにはもどれないよなあ。
と、ふたりの気持ちがすれ違い離れていく様は、やるせない気分になりました。
サルベーンは、最初からラクリゼに女神を見ていたというのも、真実のひとつではあったんだろうなとは思いましたが。
ラクリゼとアリシアのきれいな感情とくらい感情ひっくるめた関係は、嫌いじゃなかった。なんだかんだラクリゼより大人の物事の見方をするアリシアが私は好きでした。ある意味彼女の生き方はザカールに近いような。
この物語のクライマックスは、カリエの祖国・ギウタ皇国の滅亡の場面。
エジュレナ皇妃とラクリゼの会話が印象的でした。
ルトヴィアでマルカーノス陛下が過去を追憶していたあたりのことが、ようやく、そういうことだったのかと。
エジュレナの気持ちも分かるけれど、確かにこれは、フリアナ様も辛いなと思いました。フリアナ様がアルを溺愛しカリエをあそこまで憎むのも、分からなくはないなあと。
過去はどうあれ確かに愛し合っていたギウタ皇帝夫妻の姿が、悲しくも美しかった。
サルベーンが最後にあそこまでした理由がよくわからない。難しい男のひとだなあ。つくづく。
エピローグを読んでいると、全く何も感じていないわけでもないでしょうに。
カリエを通して母と最後の会話をしたラクリゼの場面は胸がつまりました。
「女神の花嫁」なんて矛盾しているようなさだめは、何を意味しているんだろう。
そしてルカが最後まで格好良くていい男で涙しました。

アルマの人生を読んでいると、カリエの身の上に今後降りかかるであろう受難が、今から怖すぎる……。
ラクリゼはカリエの味方なのでしょうし、他にもカリエを守ってくれる人たちはいるけれども、でもなあ。そんな簡単なものじゃなさそうな気がするんですよね。

ちっちゃなカリエとエドも出てきましたし、ますます続きが気になる!

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カテゴリ: コバルト文庫

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