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『流血女神伝 暗き神の鎖』前・中・後編 須賀 しのぶ 




バルアンの正妃になったカリエ。
親友のナイヤが身ごもったのを知り複雑な心境になるカリエは、バルアンに誘われて、聖なる山オラエン・ヤムに共に登ることに。
やがてヨギナの総督になったカリエ自身にも、待望の子供が。
しかしそれは再びの過酷な試練のはじまりでもあり——。


『流血女神伝』、実は現時点で、『暗き神の鎖』、『喪の女王』、最後まで読み切っちゃいました。
私の先週一週間はまさに『流血女神伝』に捧げられました。
後悔はしていない。
だって面白すぎて途中でやめられなかったんですもの……。
一日に一気に四冊くらい読んでたりしたので、濃密な物語で頭の中がいまだ飽和状態です。

何らかの形で吐き出さねばこの熱い想いに区切りがつけられないので、まずは『暗き神の鎖』ザカール編から、まとまりのない感想を書き残してゆきたいと思います。
ネタばれ注意でお願いします~。


まずは上巻。カリエとバルアンは新婚さんで、悲惨な事件も特に起こらず、楽しく読めた巻でした。
というか、カリエとバルアンがけっこう普通に夫婦をやっていることに、驚きました(笑)。
いや、ヨギナ総督とか、色々な意味で普通ではないんですけれどね。
ふたりでオラエン・ヤムに山登りする場面がなんか好き。妃と小姓の間くらいの立ち位置じゃないかしら、カリエは。山登りに誘うこともそうですが、バルアンがカリエのことを他の妃とは全然別の次元で必要として大事にしているのは、確かなのでしょう。
カリエも待望の子供を授かり、幸せそうでよいものでした。
今度はカリエの親衛隊長になってしまったエドにびっくりし、しかしエドの立ち位置はカリエにとって本当に頼りになるなあ。
カリエと侍女たちの「私とマヤルの愛の軌跡、その全てを語る会」が激しく気になる。

この巻でむしろつらかったのは、ルトヴィアのドミトリアスとグラーシカ、そしてジェシーヌ。
ああ、まさかドミトリアスが、こんな状態になるとはな……(ため息)。
身一つで心追い詰めロゴナにやってきたサラが、愛を得た途端に豹変してしまったのが、『帝国の娘』から読んできた身には、辛すぎました。
何よりグラーシカの立場が辛い。グラーシカをばしばし傷つけるサラが辛い。見ていられない!タウラがいてくれて良かったです。




中編。
カリエの身にひたひたと迫る、ザカールの長老・リウジールの影が怖すぎる。
あのラクリゼですら歯が立たないとは。
お話の前半パートは、辛いこともあれどもヨギナ総督として立派にふるまうカリエの姿がよいものでした。
コルドさんとバルアンのカリエへの姿勢は、正直なんだかなあという気はしましたが……。
あと、ミュカとイーダルの王子様ふたりの、かみ合ってないけどなんだかんだ仲良さげな雰囲気が、笑えてお気に入りでした。
無自覚にカリエを熱く見つめるミュカの純情さが泣ける。
半分面白がってそうだけど、イーダルの友への忠告もなかなか好きでした。

そしてアフレイムがさらわれてしまい、またカリエは人生の転機、すべてを捨ててザカールに息子を取り返しにいくことに。
美しくて平和なヨギナの街は確かに、カリエを愛していましたので、辛い……。
ラクリゼとエドのふたりの揺るがない助力が非常に頼もしかったです。
カリエ達脱出後の、エドとサルベーンの仲悪そうなやりとりと扮装が、こんな状況下でも面白すぎました。
エドとソードの因縁の再会も、そうつなげるか!
まったく覚えていないエドが残酷だなあ……。ソードさんって常に不憫だな。

ヨギナの林檎パイが非常に美味しそうなのですが。



後編。
本格的にザカール編。
ザカール編自体は思っていたよりあっさり解決したなと思いましたが、でも読んでいて十二分に辛かった。
カリエに課された精神的責め苦が辛すぎたし、リウジールの育ちもラクリゼ以上に過酷なものだったようで、彼の性格のゆがみも本当、やりきれない。
ラクリゼとリウジールの両親の子供への執念じみた想いがひしひし伝わってきました。
最後の最後でラクリゼを救ったリウジールと、理知的なレイザンの姿に、少しは救われるものがありました。

そして、カリエ救出のため集い戦う人々の姿に、胸が熱くなりました。
(こんな状況下でもイーダル殿下ご指導のお芝居が面白すぎ……。淡々としたエドの覚悟がすごい)
というかとにかく、どんな異常な状況下でも、何の迷いもためらいもなくカリエを守り戦うのみなエドが、格好良すぎました。
カリエは頑張った。もう本当に頑張った。
神殿の崩壊でとっさに守ったひと、というのがね。色々見えてきますね。

しかしこの巻、読み終えて私がいちばんぐさりときたのは、ラスト、カリエとエドが逃亡したと告げられたときの、バルアンの絶望でした。
「赤き死の王」の伝説とヒカイの後悔に、読み終えて、なんだか涙があふれて止まらなかったです。
言っても詮無いことですが、そんなにカリエが大切だったのなら、彼女の手が離れてしまう前から、もっと、なにかさあ……。
カリエももう少し、バルアンに事情を説明できていたら……といっても、リウジールの子を宿してしまった彼女には、無理な相談だしな。子供を助けるためには、もうこれしかなかったんですよね。
せつない。
ともかくバルアンは、カリエというストッパーを、喪ってはいけなかったのね。
後宮でのナイヤが、カリエとの友情を未だ大事にしていて包容力のある素敵な女性に成長していて、とても救われる思いでした。

ルトヴィアのドーンとミュカ兄弟も、不穏な感じで。

神と人との関係が、重いさだめに縛られ惑い間違えつつも自分の足で運命を駆け抜けるヒロインの姿が、私の中で荻原規子さんの『空色勾玉』に、通ずるものがあったなというザカール編でした。
あと、最初から最後までリリアンが非常に格好良く頼もしかった。


ここ一週間強の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 須賀しのぶ 

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