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『流血女神伝 喪の女王』全8巻 須賀 しのぶ 




カリエとエドは、囚われていたザカールから、イーダルを頼ってユリ・スカナ王国へ脱出。
全てをなげうって救出した息子を手放し、夫のバルアンからは命を狙われ、そして胎内にはリウジールの子を宿し。
一方ルトヴィアでは皇帝ドミトリアスを取り巻く情勢は急速に厳しいものになってゆき——。


『流血女神伝』最終章、『喪の女王』全8巻、読了。
先週の『暗き神の鎖』の感想を書いた時点でもう最後まで読み終えていましたが、ここまで感想を書く時間がなくて。
特に最後の6、7巻、8巻目くらいは、ほとんどすべての場所が読み応えありすぎて、何度も読み返しては浸り、を繰り返していました。

完結巻まで読み終えて、なんて素敵な物語だったのだろう。
もう単純に言葉で言い表せない充足感と感動に、ぼうっと身をゆだねることしかできませんでした。
シリーズの主要キャラクターひとりひとりを、心から、愛して笑って泣きました。

私、このシリーズを読みはじめる前に、主人公のカリエの人生については、実はうっすらネタばれを読んじゃっていたのですけれど。
『帝国の娘』で揺るぎない栄華を誇っていたルトヴィア帝国が、こんな結末を迎えるなんて、思っていなくて。
大好きな人たちの戦いと覚悟と誇りに、涙があふれて仕方がなかったです。
神と人の関わりの壮大な物語、あるいは骨太な歴史物語、いずれにしてもたいへん読みごたえがあって素晴らしかったです。


心のままに感想を書きつけるために、以下はネタばれありで、追記にたたみますね。

まずは一巻目。
ぼろぼろのカリエとエドを迎え入れてくれたイーダル王子の変人っぷり、明るさに救われる思いでした。アルガの突っ込みも楽しい。
カリエに面白い話をしろと言われてエドが引っ張り出してきた焼き豚の話に吹き出してしまいました。
エドとサルベーンの相性悪そうなコンビもだいぶ馴染んできた、かな。
カリエの評判がエティカヤはじめあらゆる場所で地に堕ちていて、確かに状況を外側から見たらしょうがないんですけれど、子どもを守るためにこの選択をするしかなかったカリエのことを思うと、読んでいて辛すぎる……。
レイザンを、バルアンがそばに置くことにするとは、意外でした。
いいひとだなレイザン……。リウジールがあんなひとだったからよけいに彼の人格者なところが光って見える。



二巻目。
カリエがたくましくお母さんをやっていて、名前のエピソードにもじんときました。彼女がサジェのことを心の中で未だ住まわせているのが、なんか、良かった。
不安要素は色々満載ですが、将来絶世の美女になるであろうセーディラがたのしみ!
アフレイムのときは思うように構えなかったカリエでしょうから、歌を歌ったりおしめを洗ったりセーディラの世話をしているカリエの姿も良かったです。
そしてカリエのことですのでまた波乱の予感の出会い。でもフィンル君すっごくいいこだな!
周りは敵ばかりになっているグラーシカの心情と立場が、読んでいてあまりに辛くやりきれない。



三巻目。
いきなり時間が進んだかと驚きましたが、過去編でしたか。
セーディラの名前の重なりが意味深ですねえ。
バンディーカ女王のたどってきた道が、聡明なひとりの生身の女の人の姿で、なかなか良かった。モデルがエカテリーナ女王というのに納得。
イーダル陛下とバンディーカがふたりで寄り添う姿も意外と嫌いではなかったです。薔薇の出会いのエピソードもなかなか。
しかしイーダルの父親は……。
どっちを向いても不穏な状況下、セーディラを可愛がるエドにとても癒されました。
修道院編で、ますます神様の物語になってきたなと。カリエは今度は修道女か……単なるコスプレで終わらせずきちんとある程度は順応するカリエがやはりすごい。
サルベーンもネフィシカもバンディーカも、カリエにとって味方なのかどうか分からず緊張。



四巻目。
表紙の彼は、イーダルのお父上?誰かしら。
ユリ・スカナの過去から続く闇の部分が明らかに。
イーダルの父親はやはりそうか……。そしてイーダルの本性がショック。でもこんな出生では歪まずにはいられないだろうなとも思います……。とりあえず、あの場面にいたのが軍人皇后グラーシカで良かった。
ネフィシカとバンディーカの確執もますます怖いし、グラーシカのまっすぐさ、高潔さが貴重すぎます。
ずるずる帰りそびれているグラーシカの現状も辛い。
バンディーカとカリエの会話場面が印象的でした。ジェローヴァ夫人が好き。
サルベーンの行動が相変わらず謎ですね!もっと息子を可愛がってやってほしいな。



五巻目。
ルトヴィアの凋落に読んでいて胸をえぐられました。アルが連れてこられてグラーシカと出会ったころの絢爛豪華なロゴナ宮から、なんて変わってしまったんだろう……。
ミュカが読み進めるごとにどんどん成長していて嬉しい。
しかし今となっては改革に失敗し独裁者となってしまったドーンの姿が辛すぎますね。あんなに己に厳しく高潔な努力家のドミトリアスだったのに、何かもうすべてがやるせない。
そして今回、サラがかつての彼女らしさをようやく取り戻していて、救われる思いがしました。宝石のエピソードも泣けました。
サルベーンもイーダルもバルアンも皆不穏ですが、変わらぬエドのたたずまいとカリエとの信頼の絆がとても良いです。
カリエとグラーシカの友情も、『帝国の娘』時代から、ふたりの立場は変われども、まるで損なわれていなくて、懐かしくうれしい。



六巻目。
こんな状況下でも損なわれていないドーンとミュカの兄弟の絆と国を思う心にぐっときます。
ミュカが女神の契約で失ったものとは。そしてドーンの女神との契約とは?
それにしても、潔癖で純情なところもこの兄弟そっくりですね……。ルトヴィアの頂点に立つ者とも思えない。なんか、マルカーノス陛下みたいな生き方ができたら、ふたりともいっそ楽だったんじゃないかとも思ってしまう。
そして、ラクリゼとリリアンが再登場で嬉しい!エドとラクリゼがそろうと安心感が全然違います。
サルベーンとラクリゼの二人の姿にもこみあげるものがありました。
サルベーンが「彗星」というのは、言いえて妙というか。
すっかりセーディラの父となり、彼の中のわだかまりだった母アリシアのことを赦したエドの場面も良かった。
エドの親ばかっぷりが微笑ましくて読んでいて非常に和みます。
カリエは相変わらずカリエで頑張ってて、グラーシカの変わらぬ友情と贈り物に泣けました。
それにしても、英語ひとつすらろくに習得できない私は、望まぬ流転人生のすえ何言語もあやつれるようになったカリエの人生を尊敬するしかない。 カリエに「甘い!」と鼻で笑われそう。



七巻目。
ついにルトヴィアに帰ってきたグラーシカが格好良すぎて、現状を見渡して胸が痛い。
カリエとリネ達の交流も良かったです。確かにリネのたくましさはちょっとカリエに似ている。
リネは絶対に元気にカリエとの約束を果たしてほしいです。
ネフィシカ様も、本来の優しいお人柄が次第に出てきて、好もしくなってきました。グラーシカと仲良し姉妹だったのもようやく自然に納得。
そして、フィンル君とアフレイムの出会いからも、何かが変わると信じたい。ナイヤがすっかり後宮内の愛情深い母になっていて、カリエへの変わらぬ友情と信頼にも泣けてきました。スゥラン姫も強くなったなあ。
どんな悲惨な状況になろうとも、淡々と戦い大切なものをまもろうとするエドの姿は、読んでいてほっとします。
あと、ギアスとオレンディアの二人の場面が、すごく好きでした!二人の過去には何があったんだろう。



八巻目。
滅びの道へなすすべなく転落していくルトヴィアと大好きな人々の最期に、読んでいて涙が。
特にグラーシカとオレンディアのふたりは何度読み返しても涙があふれる。
悪夢のようなガゼッタの地。確かにこれがザカリア女神の代償と言われれば……なんて残酷なんだろう。オレンディアの最期のモノローグがもう切なくて愛しくて。彼女の最期を知らぬギアス達の会話がまた切なすぎる。
そして、最後まで彼女らしく誇り高く散ったグラーシカ。
最後の夜のドーンとグラーシカのやりとりがとてもとても好きです。
グラーシカとタウラの絆も最後までとても好きでした。うわあん、本当にどうしてこんなことになっちゃったんだろう。
ネフィシカ様も、ようやく自分自身で愛する者のために戦わんとしていたところだったのに。やりきれない。
そして、イーダルが最後の最後で、母の闇から強制送還されてきて、本当に良かった!アルガが最強でした。彼女もまた、カリエとエドの二人の男女の情愛を含まないゆるがぬ絆に力を得ていたのかなと思ったり。
なんだかんだユリ・スカナの三姉弟が、最後まで大好きでした。
ドーンとミュカ、そしてカリエの兄弟の絆も大好き!
残された兄弟たちの、命をかけた国の終幕劇にも、胸が熱くなりました。
ぎりぎりの状況下で、これ以上ないほど上手くことを終わらせられたと思います。本当に良かった。
ドーンの最後の幕引きの場面もすべてが印象的で。
「化粧は勘弁してくれ、グラーシカ」という心のつぶやきを読み返すたびに泣いています。
ロイはね、なんというかね。最後の言葉が印象的でしたけれど。
そして最終章は、バルアンの人生の終末に切なくなりました。やはりヒカイの後悔が正しかったか……。
フィンル君やエアリシア達の人生が気になります。
アフレイムが母を憎んでいなくて救われる思いでした。『砂の覇王』の最後の記述から、カリエの名誉が損なわれていないっぽいので最終的には大丈夫だったんじゃないかなと思ってはいたのですが、良かった。
カリエとエドの二人は、エドが、人より情緒の成長が5倍くらい遅い、というのに納得……。そして本当にエドは堅気にしかなりようがないひとだな!
ミュカもイーダルも元気で頑張っているようで、良かったです。

少女小説にしてはちょっと珍しい性格をしていたカリエ、たくましくて朗らかで好奇心旺盛な努力家で、私はとても好きでした!!
野に咲く太陽が似合うまばゆい花のような娘で、エティカヤのディエーマという名前も、私は彼女に合っていたなあと思います。ミュカがあれだけ一途に忘れられなかっただけのことはありますよ。
もうとにかく、お疲れ様でした!としか。
カリエの境遇に合わせてエドも変わりまくりましたね。『帝国の娘』の冷酷な武人姿から、心和む子守り姿まで(笑)。
カリエとエド以外のお気に入りキャラは、グラーシカとミュカでした。
ああ、グラーシカ本当に最後まで凛々しく格好よかったな……何度読み返しても泣けます。
欲を言えばザカリア編をもうちょっと深いところまで読みたかったなという気はしましたが、あれでも十分辛かったですからね(苦笑)。
やはり私の中では荻原規子さんの『空色勾玉』と少し彷彿とさせる物語でした。神と人の交わるファンタジーは本当に素敵。

あと、教えていただいた須賀しのぶさんのサイトにあった外伝も読みました。
エドとカリエの関係も、落ち着くべきところに落ち着いたという感じで、良かったです。


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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 須賀しのぶ 

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