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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『緋色の聖女に接吻を~白き翼の悪魔~』葵木 あんね 




舞台は退廃の進む聖都ラミーニャ。
死の間際に、悪魔・バルキネスと契約することで生き延びた少女・アリーチェ。
彼女は育ての親の復讐のため、史上初の女教皇となることを誓い、司祭枢機卿として教皇候補に上りつめる。
アリーチェが契約したバルキネス、彼の正体は神の怒りをかい地上に堕とされた元天使だった。
彼が天界に戻るためには、聖なる刻印「神の接吻」を持つ人間を探さねばならないのだが——。

あきさんの表紙イラストの麗しさとあらすじに惹かれて手に取った、ルルル文庫の一冊。
復讐のため枢機卿にのぼりつめた十八歳の少女と、彼女と契約した元天使の悪魔のふたりが繰り広げる、野望と恋のファンタジーロマン。

いかにもな退廃的、影のある設定から、はじめは私、もうちょっと重たいお話を想像していました。
ちょうどこのお話を読みはじめたタイミングが、現実世界で悲しく沈んでいたときで、「しまった、こんな暗そうなお話今読みはじめるんじゃなかった、もっと元気があるときに読まなければ」と、思ったのですが。
でも読み進めていると、読みやすく心地の良い文章で、物語の世界にもするすると抵抗なく入ってゆけて。
そして読んでいるうち、悲しい境遇であがくアリーチェの心に自然に寄り添えて、予想外にたっぷりあった優しい少女小説ロマンス成分にも癒されて。
ラストも後味よく、読み終えるころには私の心もふわりと浄化されたかのような、いくぶんすっきりとした気持ちになれたのでした。

主役ふたりがいかにも悪役な設定の割に、なんだかんだ人が良くて純情で、重たくなりすぎないでいるところが良かった。
最初の場面から、外では存分に陰謀策略をめぐらせ悪役面している一方、バルキネスには年相応の少女の素顔も見せるアリーチェ。
つんつん勝気で少女らしく潔癖なアリーチェと、アリーチェには過保護で甘い保護者のようなバルキネスの会話が微笑ましい。
ロマンス成分も多めで楽しめました。メレンゲ菓子が甘いこと。
(あきさんの挿絵の色っぽさに比較して特にアリーチェの方が甘い気持ちにほぼ無自覚なので、あくまで初々しく微笑ましい雰囲気に留まっているところが、またいい感じ)
アリーチェの重たい復讐の誓い、ぎらぎらした野心の裏の気持ちも、事情を読んでいくごとに、十分理解できるもので。
まさに聖女のようであったドナのエピソードは辛い。
そして彼女の実の親のエピソードが、そうつながるのか、という思いでした。
彼女を娘と知らぬ相手の仕打ちにうちひしがれたアリーチェに、バルキネスが辛抱強く付き合い目を開かせた場面が、印象的でした。

アリーチェが親との確執を乗り越え、民のためにもてる権力も知恵も度胸もすべて使ってなりふり構わず戦う、特に後半部分の姿が、びしっと決まっていてとても素敵でした。
賢く強く心優しい少女の成長物語の王道パターンともいえる。私こういうのやっぱり大好き。
神に絶望し復讐を誓っていた少女が、その戦いの過程で、信仰への自分なりの答えを自然に見出してゆく様も、共感できるものでした。
(そして彼女が利用しようとしていた清廉潔白なメネスタ枢機卿の、信仰と人となりのエピソードが、割と容赦なくえぐい。この辺は変にふわっと甘くごまかさず書ききっているのも、宗教に関わるひとの物語として読み応えあって、好感持てました)

そんな彼女を献身的に支え助け共に戦う元天使の美しき悪魔バルキネス、彼自身の物語も劣らず魅力的。
(変装が自由自在でなんか楽しい)
ひとりの少女への、悪魔の一途で献身的な愛情が、シンプルに胸を打ちました。
バルキネスの弟天使・シュザエルの登場もありつつ、アリーチェの危機も共に乗り越えつつ、想いが通じ合って良かった。挿絵の場面が美しかったです。「接吻」というタイトルながらにくちづけの場面があまく印象的。
アリーチェの戦いが終わってからのふたりの関係の行く末も、思わずほろりと涙ぐんでしまう、良いものでした。
アリーチェのその後の生涯のエピソードも、ふたりらしくて心温もる。

ロマンス成分はふわりと優しめながら、世界観はとてもしっかりしたお話。
あきさんの美しく艶のある絵とお互いよく引き立て合っていて、こういう少女小説は読んでいて幸せです。
アリーチェの勝気で可憐な美少女っぷりが本当によく出ていて目の保養でした。バルキネスの悪魔なんだけれど人の良さを消し切れていない、境目ぎりぎりの黒い美貌と色気も、あきさんの画力にかかればさすがとしか言いようがありません。うっとり。

私好みの少女小説でとても良かったです。
作者さんの別作品もまた今度読んでみようかな。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 葵木あんね 

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