Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『東京すみっこごはん 雷親父とオムライス』成田 名璃子 




年齢も職業も異なる人々が集い手作り料理を食べる共同台所「すみっこごはん」。
夢をあきらめかけた専門学校生、妻を亡くしたがんこな老人、勉強ひとすじの小学生。今日も誰かが誰かとご飯を作り、みんな一緒に食べてゆく。
そんなすみっこごはんが、街の再開発の対象地区に含まれているとのうわさが。
すみっこごはん解散の危機に、常連の皆は動揺する——。

『東京すみっこごはん』シリーズ第二弾。
一巻目のお話がとても好きだったので、続編が出てくれて嬉しいです。
あざやかな黄緑色に食材に作品のキャラクターたちに、可愛らしくていかにもおいしそうな、眺めているだけでちょっと元気がでそうな表紙がやはり良い。

現代日本で生きる人々が内に抱える辛さや寂しさが、ふくふくとおいしそうな家庭料理で、そっとほぐされていく様がいいなあと思いました。
田上さんや金子さん、柿本さん、丸山さん、楓ちゃんに純也くん、奈央さん、前作のレギュラーメンバーも引き続きすみっこごはんでご飯を作り食べていて、なんだかほっと安心できる風景でした。
柿本さんの渋柿対応もよきスパイス。
素人が、レシピの通りにひとつひとつの手順を踏んで、みんなの協力も得つつ、ていねいに作っていくお料理。
すみっこごはんに集う人々の優しさも相まって、読んでいると、疲れた体と心にしみいるよう。癒されました。
(なんだかこの辺『甘々と稲妻』というまんがに通ずるものがあるような)
あとごはんの描写が、ほんとうに!おいしそうで!
唐揚げも筑前煮もハンバーグもミートローフもおいしそうでしたが、今回の私的ベストは、なんといってもオムライスでした。

『本物の唐揚げみたいに』
沙也さんの何をやっても上手くいかない辛い立場が読んでいてひりひりとせまってきてこちらも息苦しくなりました。
金子さんの料理人として、年上としての沙也さんへのアドバイスが、素敵だったな、と思いました。
現実にはやっぱりたしかな未来は見いだせないままでも、それでも友情が再び結びついたのは、良かった。
揚げたてジューシー唐揚げはなにかの魔法がかかっているみたいですね!
沙也さんと金子さんがちょっといい雰囲気かなとか思ったけれど、そこまでには至らないのか。惜しい。(?)

『失われた筑前煮を求めて』
章タイトルがはまっていてお気に入り。
私も筑前煮、大好きなんですよねえ。そして私も絶対に母の味と同じに作れない……。
癖がある頑固なご老人有村さん。すみっこごはんに行って、はじめはまあ案の定あれこれぶつかっても、意外にみんな有村さんのこと嫌っていなくて、すっと馴染んでいっている感じなのが、良かった。なんだかんだいいひとなんですよね。
おじいちゃんっこの楓ちゃんと有村さんのペアがいい。
亡き奥さん・初恵さんのことを、本当の本当に大切に愛していたんだろうなというのが端々から伝わってくるのも、良かった。
「ちょちょいのちょい、ですのよ」という初恵さんの台詞が今にも聞こえてきそうな。
隠し味の種明かしとその理由にまた胸の奥がつんとしました。

『雷親父とオムライス』
『失われた筑前煮を求めて』と連続したお話。
勉強漬け、危険を排除した安心な食品漬け、でがんじがらめなんだけれど当人はそれをあたりまえと思っている秀樹くん。読んでいてなんだかな……と思いつつ。本人はとても素直で賢いよいこで、すみっこごはんのみんなとの交流も楽しそうで、良かった。
特に有村さんと秀樹くんの関係がいいですねえ。有村さんの悪い笑顔……。
純也君も交えての「おでかけ」がとても楽しそうで、その後のお別れが、悲しくて切なくて仕方がなかったです。
楓ちゃんと純也君の気持ちも辛い。
秀樹君が有村さんと一緒に作る「オムライス」の場面がすっごく美味しそうで楽しそうで、私もオムライス食べたい!
お肉に小麦粉をまぶすとか、レンジでバターライスを作るとか、さりげない一工夫が光ってる。これくらいなら次に自分でも試せそう。
最後にたまごをえいやっとひっくり返した田上さんが最高に格好良かったです!!

『ミートローフへの招待状』
前作からのレギュラーメンバーのひとり・主婦の田上さんが主役のエピソードで締めくくり。
再開発の件ですみっこごはんにもスパイが?疑惑の中、旦那さんと二人でミステリー仕立てで調査をしていく田上さん、頼もしくて輝いてました。ここの夫婦も仲良さげで憧れてしまいます。
田上さんがすみっこごはんの常連になっていった理由もさりげなく書かれていて。
田上さんが作る家庭料理はふくふくあたたかくてたっぷりしていて本当に美味しそうですよ。
スパイの正体は、なんとなくこのひとかなあ……と思っていた通りでした。
でも確かに、常連さん一人一人がそれなりに怪しい要素を備えていて、ちょっと焦っちゃいましたよ(笑)。
有村さんの息子さんに確かに父の血を感じる部分があって、楽しい気分になったり。
ミートローフも手毬寿司も手間暇かけて作った豪華な家庭料理でしめくくり。最後には明るい話題も出て、優しい気持ちでページを閉じることができました。


ここ最近の食べ物系小説のなかでも、かなりお気に入りの作品です。おすすめ。
暑さや忙しさにへとへとになった心がこの作品でだいぶ癒されまるくなりました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 成田名璃子 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1595-af20455c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)