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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『君の名は。』映画鑑賞の記録 

先月からネット上で評判がよくずっと気になっていたものの、流行りもの……ということでなんとなく観るのをためらっていた『君の名は。』連休中についに観てきました。

きれいな映画でした。
観終えてずっと余韻にひたっていたかった。何事も壊したくなかった。

自然の描写が美しくて慕わしい。
夜空と星の美しさよ。
三葉と瀧、周りの人々も、みんないい!

映画を観てすぐに書籍版とアナザーサイドの物語も読んでしまいました。
それぞれ映画で語られなかった部分を少しずつ補いあっていて、一つの作品世界をいっそう深く胸に落とし込むことができて、良かったです。
映画で私が特に感じたのは「自分ではどうしようもなくぽろぽろ欠落していく記憶への恐怖」だったので、なんというかその分、文字で書かれた物語を自分の手元に置けるっていいなと思いました。





以下、私の思いっきりネタばれ忘備録メモです。
本当に考えなしに好き勝手に語っていますし映画と書籍版の感想が何の説明もなく混じり合っているのでご了承ください。

飛騨の糸守町の自然の描写がそれはもう素晴らしいです。美しい。
息がつまりそうなほどの郷愁、慕わしさ。どこまでが三葉の心でどこまでが瀧の心で、どこまでが私自身が感じる心なのか。
みんなが話す方言も何とも言えない味があって好きでした。
ちょっと関西っぽい言葉は私の地元の三重の言葉とも通ずるものがあったりして。

同時に東京の街の描写も良かったです。特に瀧と入れ替わった三葉の生まれて初めて見る都会のどきどきわくわく高揚感が!
確かに都会の男子高校生はなんて洗練されていてさらっと優しいのかと思いました(笑)。即席たまごコロッケサンドがおいしそう。
そして奥寺先輩のキュートな笑顔と大人な心配りの魅力といったら!
瀧よりむしろ三葉の方が仲良くなり心酔していった感じなのも分かりました(笑)。三葉という女の子を知る前の瀧君には奥寺先輩はちょっと大人の女性すぎたんでしょうね。

さて、時間と記憶ネタの話って私もともと大好物なんですよね。美味しいです。
そこに幸せで切ないロマンスが入っていれば言うことなし。恋の甘さもすっきり爽やかな甘さで私にはちょうど良かった。
夢でお互い入れ替わるふたり、最初はコメディータッチで軽いノリもしましたが、中盤からのシリアスモードへの転換が、もうすごく私好みで鳥肌がたちました。物語がどこに向かいどう収束していくのか最後の最後まで読めなくて。
もともと私は昔から、毎日あった出来事が、そのときの自分の感情が、時を経るごとに自分の記憶からどんどん消えてゆき「なかったもの」になってゆくのが怖い、と思う瞬間がときどきあって(その傾向を強めたのが北村薫さんの『スキップ』『ターン』『リセット』)、それで今でも日記をつけていたりするタイプの人間で。
大切な人の記憶の欠落の恐怖感はすごく共感できたし、二人がスマートフォンで日記や伝達で文字に留めていっていた行為も、よくわかるなと思いました。(結局三葉の書いた日記は文字化けして消えていったのですが……あの場面の絶望感たるや。)

そして実は私、小さいころ、「宇宙」が好きな子どもだったんですよね。子ども向けの本を何冊も読んで。
当時、隕石落下、超新星爆発、ブラックホール、宇宙のそういうダークな事象が、子ども心にすごく怖かった。
いつか地球は滅びてしまうんじゃないか?って。
だからあの彗星が悲劇をもたらしたものだというストーリーに、私向けの物語なのか?的な驚きを感じました。(そういうお話だとは本当思っていなかったので。)
でもねえ。あの夜空を流れる彗星は、どの場面でも、まがまがしさは不思議と感じず、ただ幻想的で美しくて。
糸守のあの湖が、宮水の組み紐、受け継がれる不思議な力が、膨大な時間のスパンを感じて、途方もない心地がしました。
すべて合わせてひとつの神話のようです。

宮水の伝統的なもの色々も、当事者の三葉ちゃんには確かにわずらわしく辛いこといっぱいあったと分かるのですが、はたから眺めている分には、あの雰囲気がとてもゆかしく香り高くて私はとても好きでした。
古代日本史、神話もの好き人間は、転びますねえ。これは。
一葉おばあちゃんの静かでまろやかな語り口とたたずまいもよかった。(修行の場面ではとても厳しそうなお祖母ちゃんだなと思いましたが。)
入れかわった瀧と四葉と一葉おばあちゃんの三人で、神域に出かける場面がすごく好き。自然描写も美しく、お祖母ちゃんの「むすび」のお話も興味深く、口噛みのお酒の場面は異界の空気をじかに感じて。女三人家族としてさりげなく大切に思いあっている関係性も好き。
組紐を編む場面も好きでした。

たぶんちょっと頼りなくて女の人に慣れていなくてでも心優しい男子高校生であった瀧君が、三葉と入れ替わりふとつながりが途切れた彼女を探しに飛騨までやってくるところから、彼のひたむきな頑張り、想いの深さがずんずん伝わってきて、たまらなくなりました。きっと彼は自分の中の何かが変わり、成長していったんだな。
糸守町を探し当てたものの、その町は三年前彗星で滅びていた、探しひとの女の子もこの世からいなくなっていた……なんて事実に、愕然としました。
濃厚な死の気配が。つらい。
ラーメン屋の親父さんもいいひとだし、奥寺先輩と司君もいいな。瀧君はいい人たちにかこまれてるし、三葉がむすんだ人間関係の結果でもある。

口噛み酒を飲み三葉と奇跡の再会を遂げるという流れも、まるで神話の一部のよう。
三葉ちゃんが嫌がったのも分かるけれど!そしてあそこで三葉の髪のことを上手く言いつくろえない瀧君が瀧君らしくてすごくいい!(笑)確かに三葉の黒髪ロングヘアは最高ですよね。あのていねいな編み込みヘアスタイルは私もつぼです。
手のひらに書いた言葉が名前ではなく「すきだ」の告白だったのも、泣けます。
入れ替わりを経るごとに、文句を言いあいつつもいつしか楽しんでいて、ふたり、惹かれあっていたんだな。
ああ、なんて可愛らしくて美しくて絶望的な恋なんだろう。
三葉の名前が記憶からどんどん欠落していってしまう場面の瀧君の絶望がまざまざときました。
カタワレ時、たそがれ時、あなたは誰?
万葉集の和歌のことばが、糸守の方言が、まさに星が落ちてきた千年もの昔と時代的につながりを思わせるのが、気づいたときにしびれました。
三葉の巫女装束と宮水の古風な雰囲気が、イメージをさらに重ね合わせてくれています。

瀧君、三葉ちゃん、テッシーにさやちゃん、皆が力を合わせて町を救おうと奔走し、もうだめかと絶望的になった上での、舞台の転換。
(そして、その裏には外伝で読んだ三葉の父と母の物語があったと知り、再び時間の流れの果てしなさと宮水の組紐と女たちが受け継いできたものの尊さに、こみあげてくるものが。女系の名前のつながりも何気にすごい。)
ふたり呼び合うラスト、幸せの予兆を感じるふたりに、ああ。じんわりきました。言葉にできない思いが。
テッシーとさやちゃんらしきふたりの幸せそうな会話もまた良かった。きっと瀧君もその後、ふたりに自分自身の姿で再会できるのでしょう。

本物の巫女で神楽舞もお役目もこなす三葉と、絵やなにか工芸を特技とする瀧のふたりは、それぞれ象徴的なお役目を持っているような、なんかそういうところも神話みたいです。
そうか、あの世へ永遠に隔てられてしまった三葉を瀧が代償を払い連れ戻しに行くというモチーフが、『古事記』『空色勾玉』そのものなのか。
特に三葉は普通の女子高生でもありながら、半ば生まれながらの異能を持つ巫女姫なんだよなあ。美味しい設定だ。
二葉お母さんとお父さんが語り合う星と龍と組紐のイメージも重なり合い。

あああ、なんだか本当にいい映画だったなあ。今も反芻してはもだえています。ごろごろ。
普段あまり映画観に行かない私ですけれど、この映画、もう一度観に行きたいな。というか行こう。(決意)

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 新海誠 

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