Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡』石田 リンネ 




『おこぼれ姫と円卓の騎士』シリーズ第15弾。
レティの長兄フリートヘルムがついに革命を起こした。そこにはゼノンの影が。
女王になるはずだったレティは捜索の目をかいくぐり、一人逃亡する。
先の見えない不安と戦いつつも、どうにか己の騎士ふたりと合流。厳しさを増す追跡から逃れるため「白魔」と呼ばれる雪の山脈を超えようとするのだが——。

一見番外編と思いきや、最後にとんでもない爆弾が仕掛けられていた前巻。
その流れをくんでの、終始ハードでシリアスモードな一冊でした。
はらはらどきどき、でも読み応えあってやっぱりとても面白かったです!
レティが相変わらず最高に格好いいです。彼女の騎士ひとりひとりも頼もしくて格好良くて。
白く冷たく澄んだ雪と、クールビューティー王女様・レティは、視覚イメージ的に相性がいいなあ、と思った表紙。

ここから先はネタばれ感想です~。


フリートヘルム殿下は、クーデターを一度起こしてしまえば、もう、徹底的に貫く道を選んだようですね。
彼のその割り切りや野心もまた王の資質のひとつ、というのも確かに頷けるのですが、確かに彼には人を惹く強い力があるなと私も実感するのですが、なんだかなあ……。
政敵を徹底的に追い落とし弟を痛めつけかつての友の家族を人質に脅す彼の姿を読んでいると、複雑、というか、苦み走った感情がふつふつとこみあげてきました。
いや、もうはっきりと怒れてきました。デュークの言う通り、これまでレティがあんなに神経を張りつめひとつひとつ大切に築き上げてきたものを、すべて水泡に帰してしまうようなクーデターは、許せない。
デュークに語った「あのとき、俺はあいつを刺し殺せなかった」というのは、どういう意味だったんだろう。
王子の身分ではなく一度は騎士の身分を選ぼうとして、でも選びきれなかったということ?

そして、フリートヘルム殿下の影にいるゼノンがいちいち周到すぎて、読んでいてどんどん嫌~な気持ちになってきました(苦笑)。
レティ側の事情をどこまでつかんでいるのか底知れないところがあるのが本当に怖い。
このひとレティの最大の秘密・騎士王の力のこと、いくらか知ってるんじゃないの?とか今までを思い返すとなんかそんな風に読めたような気もするので、怖いです。薄氷を踏むような。

そんな王宮を脱出し、逃亡するレティ。
もちろんはじめての逃避行の中で、張りつめていっぱいいっぱいの中で精いっぱい冷静な判断をして行動していくレティが読んでいてはらはらですが頼もしい。
辛くもメルディとアストリッドと合流を果たし、そして次にはメルディとのふたり旅になりました。
レティとメルディのふたりそれぞれ得意分野を補い合いつつ、どんどん悪くなってゆく状況の下、ひとつひとつ着実に判断し、ときには非常に大胆な行動に出て目の前の困難を切り抜けてゆく様が、やはりこのシリーズらしくかっちりしていてとても良かったです。
メルディは本当に頭がいいな。しみじみ実感しました。
ゼノンという師匠を持ち、それでもメルディは師匠とは全然違う、人として大切なものの順位をよく知っている高潔な精神の持ち主で、そんな彼がレティの側にいてくれているということが、頼もしいったらないです。
ほどよい頼りなさというか脱力感も彼の味です。

レティの騎士王の力も、雪山に来てこそ、真価を発揮というか。
今までも地味に騎士王の力を使いこなす訓練を怠らずに来たレティだからこそ、いざというときこんなにスムーズに使いこなせるわけですよね。すごいです。
雪山の死線を切り抜けていく様がダイナミックで魅せてくれます。

ゼノンの策略に踊らされ無力をかこつレティですが、それでも今までの彼女を見てきて、彼女に救われ、彼女に王になってほしいと心から慕い、レティに夢を見た人々が確かに存在していて。(テレジアさんの協力は染み入りました。)
メルディの言葉の押しもあり、レティがようやく本当に「王になる」と自分自身で決意した場面は、銀世界の清らかさもあいまって、とてもいい場面でした。
(そして垣間見えるお人よしで無私な一面に改めて惚れ込んだり。ふふふ。
王位なんて遠かった心優しい王女様時代から今まで、こういう心の根っこの部分はまるで変わらずきたんだなあと思うと、いっそうレティがいとおしいです。)
アストリッドとの再会も感激の場面でした!あああ、本当に良かった!

一方離れ離れになったレティの騎士たちも、それぞれの場所で現時点でできることを冷静に判断しこなしていて、お互い信頼し協力し合っていて、頼もしかったです。さすがレティの騎士なだけはある。みんな。
フリートヘルムにもともと近かったデュークのレティへのかたい忠誠心が何より嬉しく染みました。
(それにしてもちらりと出てきたデュークの家族のあれこれがなかなか格好いいです。デュークの名前はこの家族あってこそだったのか……いつかこのひとたちのエピソードも読んでみたいと思いました。)
デュークと正反対というか、同じ派閥ながらもともとフリートヘルムと仲が悪かったウィラードとの会話も、対比がきいていてなかなか面白かった。アイリーチェの演技もお見事。
フリートヘルム殿下の方は、(当たり前だけど)ゼノンと完全な信頼関係を築けておらず心安らかでない感じなのが、ちょっといい気味です(笑)。
それにこのひと、ノーザルツ公のこともソレスのことも、その他国外でレティが築き上げてきた高貴な人々との絆や信頼関係のことも、ちょっと甘く見すぎだと思います。エピローグのあたりで確信しましたが。
彼の中ではレティはまだ頼りない心優しいだけの女の子のままなのかなあ……。そこが甘さになってるか。

グイード殿下もあとレオンハルト殿下も、なんとか無事でいてほしいですね。ほんと。

あとは、この巻の読みどころは、女子高生の恋バナですね(笑)。
レティが思い切って打ち明けた「好きな人」話に、とことん冷静に分析してレティの心情を慮るメルディが、メルディらしかったです。
そうか、デュークは「普通」か。まあ、客観的に見ればそうかあ。身分差とかしがらみは横に置いておいて、ちょっと力が抜けて楽にさせてくれる視点。
そのあとアストリッドと再開後のメルディとアストリッドの会話も楽しかった。このふたりの組み合わせやっぱりいいなあ。
報われない想いと薄々分かっているだろうに(たぶん)、悲壮感なくレティをきらきら慕ってデュークを先輩として尊敬するアストリッドも、やっぱりとても好きだなと思いました。

あとイルストラのシャルロッテ姫とレティのやりとりは、こちらは正統に(笑)、女の子同士の恋バナ。
シャルロッテ姫とのやりとりを読んでいると、女子力という面でも、人には向き不向きがあるんだなあと、改めて……。
デュークのあの「分かった」についての誤解をしっかり正してくれたシャルロッテ姫には、心からの拍手を贈りたいなと思いました。
駆け落ち事件でレティを振り回しまくった迷惑なお姫さまとばかり思ってました、ごめんなさい……。
花結びのお守りの効果がありますよう。
女王様として完璧に美しく着飾ったレティの姿を拝めるのはやっぱりうれしいです。これでこそレティ。

ゼノンの底知れなさは不気味なのですが、読んでいるうちにどんどん、レティとレティの騎士たちの頑張りが光ってきて、みんながいれば、この困難な事態だってきっと切り抜けられる!と信じられるようになってきたのが、とても良かったです。
きっとみんな幸せをつかめると願って!
次巻が非常に楽しみです。
ロマンスも進むと嬉しいです。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: ビーズログ文庫

タグ: 石田リンネ 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1611-7f065daa
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)