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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『鎌倉香房メモリーズ 4』阿部 暁子 




花月香房のアルバイトを辞め、香乃の前から姿を消した雪弥。
真意を知りたい香乃だが、積極的に動くこともできずに落ち込んでいた。
そんな中、香乃は同級生の家でもある寺のクリスマス会に参加することになり、そこから思いがけない人間模様に触れることに——。

前巻のラストで起こった事件が衝撃的すぎた『鎌倉香房メモリーズ』の4巻目。
春夏秋と続いて今回は冬の物語でした。
げみさんの表紙が雪の寒色系で香乃の着物姿も見事に調和していて美しいです。うっとり。
距離を隔ててひとり背を向けている雪弥さんの構図が寂しい。

やはりというべきか、雪弥さんの生い立ちの事情は重くて辛いもので、読んでいてひりひりしました。
頑なに心を閉ざし遠ざかろうとする彼に、彼の周囲で心配する人々の心を必死に届けた香乃ちゃんが、今回もう本当に頑張った!
引っ込み思案でおどおどしているけど、底抜けにお人好しでいつも人の気持ちを慮る、いざというときには肝が据わっていて大胆な行動も辞さない香乃ちゃんには、何人もの人々が救われているのだなと。
香乃の特殊能力を抜きにしても彼女の人柄はたぐいまれです。ちょっと感動してしまいます。
シリアスな場面でもなんかちょっとずれているのも彼女の味ですね。
そしてそんな香乃の隣にはやっぱり、冷静沈着で頭が恐ろしく回る、毒舌家だけど根は心優しい雪弥さんが、いてくれないと!

雪弥さんのお話と並行して語られる、香乃の同級生・殿岡くんと彼の母親のふみ先生のお話も、かなりシリアスで切ないお話でしたが、香乃ちゃんと雪弥さんとその周囲の人々のあたたかさに、救われました。
あと高橋君とチヨちゃんの友情がそれぞれ素敵すぎて胸がきゅうっとしました。

『五文字の言葉と遠ざかるひと』
雪弥さんと連絡が取れなくなり落ち込む香乃ちゃんに、とにかく、高橋君とチヨちゃんの友情が、染み入りました。
「かば野郎」は最高ですよ、チヨちゃん。叫んだあとささっと隠れる動作も可愛すぎる……。
読めば読むほど似た者同士の、内気で古風でちんまり可愛らしくて情にあつい香乃ちゃんとチヨちゃんの親友二人が好きすぎます。
57頁あたりのふたりの恋バナ的やりとりがもう本当にかわいい!
こうチヨちゃんにずけずけ冷静に分析されると、雪弥さんもただのヘタレさんですね。おかしかったです。
チヨちゃんにクイズでびしびししごかれる高橋さんの図もつぼにはまりました。本当にいいひとだな高橋さん。
チヨちゃんにしては強気だなと思っていたら、そんな放蕩者のおにいさんがいたんですね……。なんか、らしいです。
そしてお寺さんの息子の殿岡君が登場。うわあ、このタイミングで何気に手ごわそうなライバルが出現した!
(といっても香乃ちゃんの気持ちが揺らぐわけもないのですが。)
もっとストーリー的にライバルっぽく書かれるのかなあと思っていたら、まあ実際はあっさりしていたのですが、何も書かれていないけれど、雪弥さんは気が気じゃなかったと思います。「アキラさん」の名前だけであんなに嫉妬した雪弥さんだからさ……。

『クリスマスと丘の上の家』
お寺でのクリスマス会もなんだかにぎわいが伝わってきて良かったです。
ふみ先生は雰囲気から本当に素敵な方で、私も読んでいるだけでファンになってしまいそう。
あきらさんも元気そうで良かった。
あとみずきさんと和馬氏と香乃ちゃんのお食事会、みずきさんと和馬さんの力関係が読んでいて面白すぎました。
「私は鎌倉市民の味方なの」と去り際の台詞が格好良すぎる。
というか和馬さんはいったい過去に何をやらかしているんだ……。まあ、ふざけているだけではない複雑な事情がどっちにもありそうですね。
そのあと香乃が会った宗一郎さん。思っていたより普通の孫をいつくしむおじいさんだったかな。
雪弥さんにつらく当たったという上のお兄さんも、和馬さんも、この家の人々は、私が思っていたよりはきちんと血の通った、プライドが高くて不器用かもしれないけど情けを解するひとたちで、雪弥さんのことを案じていて、それがこのシリーズらしくもあり、読んでいて少しほっとしました。
雪弥さんの過去の事件を知って、今あなたはどう思っていますか?と聞かれた香乃ちゃんの大真面目な返しが、すごく好きだなあ。香乃ちゃんだなあ。

『罪と毒』
ついに雪弥さんのところへ一大決心して訪ねていき、正面切って切り込んでいった香乃ちゃん。
言った!よく言ったよ香乃ちゃん!
雪弥さんが心に抱えていた闇は、おじいさんが語った話よりも一層深くて、心がえぐれましたが(お母さんが絡むと一層辛い……)、全然ひるまない香乃ちゃんがとても良かった。あの弁が立つ雪弥さんが香乃ちゃんに最後までのまれっ放しでしたもん。
「雪弥さんがちょっと腹黒くて秘密主義で隠していることたくさんあることくらい、小学生の頃から知ってるよ」にはちょっと笑えました。人の良い香乃ちゃんでもそんなに昔から気づいていたのか……。
彼が、花月香房から姿を消した、本当の本当の理由に、彼の香りの息苦しさ悲しさに、胸が詰まりました。
十和子さんではないけれど、雪弥さんが、香乃ちゃんのことを、どれだけ大切に想っているのか、見せつけられて。
そして香乃と雪弥さんのラストの場面が尊くて、ああ、良かったです。
ここで反復横飛びが出てくるのは確かにちょっと意味が分からなくはある……(笑)。

『約束と冬の終わり』
お正月の咲楽家の人々がにぎやかで楽しそうで良かったです。
香乃が両親と和解できたのは本当に良かったな。お父さんもお母さんもなんだか妙に味があって、ああ、香乃ちゃんの親なんだなあとなんとなく納得できてしまうのが、おかしかったです。姉とは百八十度違う強気なマイペース少女香凛ちゃんもやっぱり好き!
雪弥さんが笑顔でいられるのなら、たとえそれが私の側でなくても構わないという香乃ちゃんの信頼の形が、なんて素敵なんだろう。
この二人はお互いのことを、「恋愛関係」というくくりを超越しているように思えるくらいに、大事なんだなあ。
そしてラスト。ようやくふたり、あるべき姿に帰ってこれたのだなとしみじみしました。
良かった。本当に良かったです。安心しました。
香乃ちゃんに完全に押し負けててどんどん譲歩していく雪弥さんというのが新鮮です……(笑)。
ふみ先生の事件のことも、雪弥さんと香乃ちゃんが協力し合って事情を紐解いてゆくといういつもの形で進んでいって、雪弥さん本当に頼もしいなと改めて思いました。
ふみ先生も辛いし、殿岡君とお父さんも辛い。
手紙の偽りに最初は罪の意識を抱いていなかったというのがリアル。そう、私もそういうことある。
最後のお父さんの飾らないけれど実直な告白に、救われました。
それにしても香乃ちゃんのお祖父ちゃんは、ありとあらゆるところで大活躍しているな!
彼が過去にどれほど人さまのこんがらがった事情を解きほぐしてきたことか。三春さんがベタ惚れなわけですね。
樒の毒という素材がこのシリーズらしく丁寧に素材として使われていて、寒々しくならず、悲しくて切ないんだけれどどの場面でもほんのり人のぬくもりを失わないでいるのが、いいですね。

春夏秋冬で物語は完結するのかもとちょっと思っていましたが、たぶんまだ続編でますよね。ね?
雪弥さんの実父がまだ不気味にそびえたっているので、次は彼にスポットが当たるのでしょうか。
もうどんなことがあっても香乃ちゃんと雪弥さんはお互い手を放すことはないだろうなと、安心してみていられるのが、嬉しい。
(個人的にはもうちょっと恋愛色が強くなってもいいのですよ……笑。)

今年の初夏にちょうど鎌倉に旅行に出かけたのですが、読んでいるとあちらこちらでかの地の記憶が「生きた」ので、一層物語を楽しめたような気がして、良かったです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 阿部暁子 

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