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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『犬恋花伝 青銀の花犬は誓約を恋う』瑚池 ことり 




人と犬の姿を持つ不思議な存在、花犬。その花犬を生涯の相棒として狩りをする花操師。
リンセイ族の花操師見習い・コトナは、かつて自ら育て共に生きてきた花犬ハルシとの辛い別れが原因で、現在の相棒セキとの関係がぎくしゃくしていた。
近く行われる花操師への昇格試験合格も危ぶまれる中、凶悪な花犬が出没し、花犬や花操師に大きな犠牲が出ているという話が広がりはじめ——。


コバルト文庫の新人さんのお話。
タイトルもあらすじもあきさんの表紙イラストも素敵ですし、ネット上で親しくさせてもらっている皆さまにも何度か直接おススメいただいていて、これはいつか絶対読まなければ!と、タイミングをはかって寝かせておいていました(笑)。
美しい少女小説の世界に急に浸りたくなり、手に取って読了。

淡く優しい色使いの、美しいあきさんの表紙イラストの雰囲気そのままの、とっても素敵なものがたりでした。
なんでもっと早く読まなかったんだろう!いや、読むことができて良かった。
皆さまに教えていただいた通り、素晴らしく私好みの一冊でした(笑)。

文章はとても自然ですうっと染み心に溶け入るような読み心地、どこか児童文学に近い感じの、実直な作りの異世界ファンタジー。
こういう格調高い少女小説は、確かにコバルト文庫ならではの作品だなと思いました。
コバルト文庫で今でもこういうお話が読めるというのは、なんだかとても安心できることだなあと。

私が何より惹かれたのは、この完成された世界観。
花を食べて人と絆を結び狩りをする花犬、花犬のために花を育て知恵を編み出し共に暮らす歴史を長く重ねてきた人々の暮らしのありよう。
作者さんオリジナルの各種用語で詳細にていねいに語られる世界観が、読んでいて本当に素敵でうっとりしました。
とにかく各種専門用語も花犬が食べるものも人が丹精かけて育て手間をかけるのも、すべてが何種類ものたくさんの花。花。
そのボリュームに読んでいて圧倒されました。
むせ返るような花の香りにずっと浸っていたくなる。

コトナとセキとハルシ、この三人のそれぞれの関係がとても素敵だなあと思いました。
コトナとセキがお互いすれ違い傷つけあっている姿は読んでいて本当に痛々しく辛くなりましたが、最終的には分かり合えて、セキがコトナに素直に好意を示し協力できるようになって、本当に良かったー!!
セキのひねくれ具合がなかなかのものでしたが、彼がこれまでたどってきた経緯を思えば無理はない……。
ハルシのことを忘れられない、ハルシがもういないことがどうしても実感できない、というコトナの喪失感も、これまたよく分かるもので。でもそれゆえにセキと上手く関係を築けないのが、辛かった。
コトナに気づかれないところでひっそり靴を噛むセキが不憫で泣けてきました。

コトナはコミュニケーションも行動も訥々と不器用で、不器用にまっすぐ進むことしかできなくて。
キサラ族の下に直接飛び込んでいったときなぞ「大丈夫なんだろうか……」とひやひやものでしたが、そんな彼女だからこそ、手を差し伸べる人がいて、傷ついても最後にはセキの元にたどり着き心を開かせられたのだろうな。
そんな彼女のふところはとてもあたかくて花の良い香りがして。セキとハルシがコトナをいっぱいに慕っている風なのがとてもすき!
そしてコトナとセキが悟ったかつてのハルシの勇敢さに改めて胸がいっぱいになりました。

キサラ族の凶悪な花犬は、ヤシロさんの昔語りを聞きつつ、フロリスを夢中になって食べている姿は哀しく胸が締め付けられました。
ゆがみ、人の醜悪な一面も、美しい物語の中ながらに、容赦なく心抉られる。
セキがコトナの元にやってこられてよかったなあ、幸せだったなあと改めて思いました。

このお話、脇役キャラも魅力的でした。
コトナに嫌味ばかり言うシャリジと飄々とした花犬スールの主従コンビが、読みこむごとにどんどん好きになってゆきました。
主人をいいようにからかって面白がっているスールが面白いわ~。シャリジのねちねちしたコトナへの嫌味をその都度スールがまぜっかえすので読み心地が重たくなりすぎず、そういう意味でも相性ばっちりなふたり。
シャリジは多分、好きな子ほどいじめたくなる男の子、というあれですね。と私は勝手に解釈しています。
嫌味を言いつつもまめまめしく心を配りご飯を調達しピンチのときには後方支援にきてくれて、素直じゃないな~いいひとだな。
あと話に出てくるコトナのお兄さんリクも、周囲の風当たりの強さも多分軽くいなしているような、なんというか大物そうな雰囲気で、妹大好き!な感じが端々から伝わってきて、実際に登場していないけれど好きだな(笑)。
コトナの師・ヤダケ老も好きでした。
ヤダケ老と二花の昔話がまた切なくて切なくて。

あと私、コトナがセキやハルシのご飯の花を用意していたり薬草を集めていたりする場面の描写が好きでした。
コトナが生き生きしている感じもあり、わくわくします!
コトナは適性的にはどちらかというと花育人なんだろうなあと思いつつ、かつてハルシを救い花操師への道が選択されたのも、またとてもコトナらしい。
それにそんなコトナだからこそハルシは成長できたのだし、セキは一人前に戦えるまでによみがえることができたのですし。
今後コトナは、セキやシャリジたちのサポートを得て、彼女らしい一人前の花操師へと、研鑽を重ねていくのだろうなと思いました。

あきさんのイラストは相変わらず美しくてとても満足。物語の世界観にもぴたりとはまっています。
特にラストのコトナたちの笑顔のイラストが最高でした。
コトナが身に着けている民族衣装風の服装もとても可愛らしくてお気に入りです。

タイトルから色々想像もしましたが、ロマンス色は限りなくゼロで、こういう少女小説も良いものです。
(あえてロマンスというなら私はシャリジに頑張ってほしいな……。)

作者さんのお話、ぜひともまた読んでみたいです。お待ちしております。


この一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 瑚池ことり 

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