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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『鳥居の向こうは、知らない世界でした。 癒しの薬園と仙人の師匠』友麻 碧 




孤独な女子大生・千歳は、二十歳の誕生日に、神社の鳥居を越えて「千国」という異界に迷い込む。
イケメン仙人薬師・零に拾われて彼の弟子になった千歳。口は悪いが面倒見のいい零師の下で修業し薬膳料理を作る日々を過ごすうち、次第に自分の居場所を見出してゆく。
しかしそんな中、夢で自分を探す家族の姿を目撃し——。

『かくりよの宿飯』シリーズや『浅草鬼嫁日記』を楽しく読ませていただいている友麻碧さんの新作。
薬膳メインの異世界トリップもの和風ファンタジー小説でした。

うわあ、このお話、ものっすごく良かった!!!
今まで読んできた作者さんのお話の中でいちばん好き!
世界観もキャラクターもすべてが慕わしく、読んでいて楽しくて心癒されました。お料理もおいしそうだし小物遣いも絶妙。
なにより、不遇な生い立ちの心根の美しい娘さんが、ひとの優しさに触れて生き生きとよみがえってゆくお話が私は好きすぎる。
現実世界の私がちょうど心の中に抱いていた寂しさとかやるせなさとか、そういう感情にダイレクトに響いてくる物語でした。
先週ちまちま読み進めてゆき読書が本当に楽しくて、ヒロインの弟の姉への愛情とかピアノとかいろいろなものが心にぶわっと押し寄せてきて、読み終えて涙があふれました。心が浄化されました。ほんとうによかった。

表紙イラスト、物語を読み終えた後で眺めていると、またじわじわきますね……。
千歳が美少女で零先生がイケメンで、千華街のはなやかであたたかみのある橙色の色味が絶品です。少し微笑みを浮かべたような千歳の表情がいい。


ここから先は若干ネタバレ注意でお願いします~。


中華風の日本といくらかつながりのある「千国」の世界観が、まずはとても良かったです。
異国情緒ふんだんで、どこか懐かしくてあたたかくて優しくて。
そんなにシリアス過ぎないきさくで親しみやすい描写は『かくりよの宿飯』にも通ずる作者さんの持ち味だなと思いました。
『星の王子様』やヘッセの作品の一部が引用されていたり黒ウサギが『不思議の国のアリス』ちっくだったり、いくらか文学的な香りがするのが、作品世界をより魅力的なものにしていて、また良し。
千国の初代の王様が日本人かあ。なんだかとてもときめく設定です。
華ランタンや着物や料理や不思議なお花や、各種アイテムの描写がとにかく読んでいて非常に楽しくて、ワクワクしました!
音楽を聞かせて育てる不思議の花のランタンで灯りをまかなっているとか素敵にロマンティックな設定。
あと豆狛という生き物の存在自体が可愛すぎる!
どこかのんびりとしていて異邦人の千歳もおおむねおおらかに受け入れる人々の気質、生活の描写も良かった。
まあ、王宮内の人間模様などは、シリアスそうでしたが。

ヒロインの千歳さんは産みの母を亡くして新しい家庭には馴染めず色々なものを諦めて生きていて、彼女の孤独に胸がきゅっと痛くなりました。
異世界に来てしまっても感情の起伏の乏しさで心が死んでいるような淡々としている感じが辛かった。
そんな彼女が零先生のお弟子になり、美味しくて身体によい薬膳料理や人に優しいお薬を作りだしていく毎日の中で、徐々に生気を取り戻して生まれ変わってゆく様が、読んでいる私も心癒されてほんっとうに良かったです!
優しさと賢さと勇気を備え、修行を怠らずに研鑽を積み重ね、やがて身に着けた自分の力で何度も人を救ってゆく千歳さんは、なんて素敵なヒロインなんだろう。大好きです。
黒髪ロングヘアの薄幸の美女設定も私好みストレートで美味しい(笑)。
千歳さんに零先生が買ってくれた千国のお着物はすっごく似合うだろうな!ふたりのお買い物場面好きでした。

毒舌で過保護なイケメンおじいちゃん仙人零先生も、読んでいくごとに味が出てきてにまにま(笑)。安本丹!を連発し修行の師としてはとても厳しいけれど、千歳のことをまるで孫娘みたいに大切にし過保護な零先生が本当にツボでした。遠足のおやつ……(笑)。
赤毛の爽やかなイケメントーリさんも大好き!笑顔で辛い境遇もやり過ごす彼の強さが痛々しくもあるのですが、同時にとても凛々しく惹かれました。
千歳と零先生とトーリさん、三角関係では全然ない三人がそれぞれ「家族」として楽し気な時間を共に過ごしている感じが、良かった~!一緒に千歳のご飯を食べている場面がどれもとても好き。
「家族」という言葉にじわじわ静かに感動している千歳さんが本当にいじましくていとしくて。
(ところでこの世界の人の寿命事情が若干気になる。零先生が特殊なのかな?)

男勝りで王女様の武官になった商家のお嬢様・花南さんも、花南さんが仕える主のいい意味で型破りなお姫様・蝶姫ちゃんも、千歳が仲良くなった女の子の脇役キャラもみんなよかったです。可愛らしくてきゅんきゅんです(笑)。
かつての零先生のお弟子緋澄さんも、なんだかひたひたと怖い人だったけれど、トーリさんの話を聞いていると単純に悪人という訳でもない気がします。(でもやっぱり不安感ばりばりですが……。)

千国の生活に馴染んできた千歳を揺るがしたのは、異国の少年エド君が運んできた「ピアノ」と見捨てられたと思い込んでいた家族の存在。
零先生の言葉もあり思い悩んでいた千歳は眺めていてまた辛かったですが、連れてこられた王宮で、大事な人と居場所を救うためにピアノを弾き「奇跡」を引き起こし、同時に自分の人生の選択をなした彼女、すごく良い場面でした。すべての描写が美しい。美しくて優しい。
その後での零先生と確かな家族となる会話もしみじみ良かったです。

このお話に何回か挿入される異母弟の優君視点が、また泣ける……。
千歳の母と父、優たちの母の三人の間で、過去にどんなことがあったんでしょうね……。なんにせよこんな大人の事情に巻き込まれ散々傷つけられ放り出された千歳が不憫すぎる。
異母姉を大切にできなかったことを後悔し、行方不明になった彼女を必死に探し、ただただ姉の幸せを願う優君の姿は、シンプルに胸を打ちました。
お父さんもなんか色々ダメだったけれど、千歳へのメールと毎夜の涙は、やっぱり切ない。千歳を大事に思っている家族がこちらの世界にもちゃんといたことが、物語の大いなる救いでした。
ラストで千歳の母の衝撃の事実が発覚し(まさかそうつながるとは思わなかった)、優君自身が異世界にゆく流れになるのかな?とても気になります。
優君は血のつながりにも疑問を持っていますが、耳のかたちとかの描写もあったし、まあ、血はちゃんとつながっているんじゃないかしらと私は思ってます。
千歳の生まれた場所は、でもきっと千国なんだろうな。名前が「千歳」だしな。お母さまの名前を貰ったのもあるだろうけれど。
そう考えると、千歳がこの世界で生きる選択をしたということにも、深みが増すというか。上手く言えませんが。

『かくりよの宿飯』ほどお料理メインではなかったですが、千歳が作りだす身体に優しい薬膳料理もまた、読んでいてすごく美味しそうで魅力的でした。身体に優しい料理は読んでいて心も癒されるなあ。
きんぴらごぼうを炒める順番もちゃんと修行の一環で、私も学ぶところが多いです(笑)。
きんぴらの卵とじとトマトスープ、土鍋ご飯の朝ごはん、白きくらげ肉あん入りでんぷん団子に薬草ゼリーのおやつの時間、はちみつミルク珈琲や杏仁珈琲、さいころポークジンジャーに塩レモンの肉団子スープで夕ご飯、みんなおいしそう……食卓を囲む場面がまた楽しそう。
あとリンネおばあさんのパイナップルケーキとか。私昔台湾のお土産でいただいたパイナップルケーキの美味しさに感動してから大好きなんですよね!食べたいなあ。
あと豆腐花みたいなエキゾチックな屋台のおやつもおいしそうだし、最初に出てきたトーリさんが買ってきてくれた肉ちまきもおいしそう。千華街を私も買い食いに繰り出したいです。
花と果実の飲物の清涼感もたまらなかったなあ。あとチョコレートはこちらの世界にも伝わっているんですね!蝶姫さまのパイナップルチョコレートすてきでした。
千歳が作りだすのは料理だけでなくお薬も重要で、使う人にやさしい日焼け止めの発想は、千歳ならではだなあと思いました。
彼女の薬草園を舞台にしたお弟子さんライフ各描写がとても楽しかったですよ。

どうやら続編も出るの決定みたいで、わーい!すごく楽しみー!!
ロマンス要素ほぼ皆無でも十二分に楽しかったですが、今後そういう展開になっても楽しいなあ。
個人的にはトーリさんと千歳がなかなかいい感じだったと思うので、そっと推してみたいです。お似合いですもの。
でも王宮のあのシリアスな人間関係はこれ以上関わると絶対きつそうですけどね……でも千歳は今回すでに正妃様にあんなことしてるし……大丈夫かな。なんにせよ、ちょっと波乱の予感がしますね。
零先生が忠告して隠してきた、千歳が異界人であることが、あの場で知れわたってしまったのが、どう転ぶのかな。

心の中の癒しの楽園として大切にとっておきたいような、そんな一冊になりました。
おススメです!


ここ一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

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