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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『なんちゃってシンデレラ』シリーズ 汐邑 雛  







おでんのからしを買いに出た和泉麻耶(33歳・職業パティシエ)は、交通事故に遭い、目覚めたときには、異世界のお姫様に転生していた。
12歳の美少女アルティリエ姫には、すでに年上の婚約者がおり、彼は国の王太子。つまりアルティリエは幼くして王太子妃殿下。
そのあまりに高貴な身分故にかつてのアルティリエは心を閉ざし、冬の湖で事故に遭い、そして現在も命を狙われていると悟った麻耶は、身を守るためにも夫のナディル殿下と仲良くしようと、「餌付け」をはじめるのだが——。


小説家になろうさんの小説の書籍化作品。現在2巻まで出ています。
私はWebの方で少し前から読んでいて、書籍化されているのに最近気づいて途中からは書籍で読み、そしてその続きはまたWebに戻って最後まで読んだところです。
(なろうさんの方は、こちら→『なんちゃってシンデレラ』)

主人公が33歳の元パティシエでおいしそうなお菓子が出てきそうだな……というのにつられて読みはじめてみました。
12歳の王太子妃アルティリエに転生した麻耶が、食に関心が深くて、そこがけしてぶれないのが好きでした。
ザーデ(緑黄色野菜、よもぎ系の味?)の焼き菓子とか、パンケーキサンドやその他諸々、異世界の食べ物と麻耶が馴染んでいる世界のお菓子事情が無理なくミックスされていて奇をてらいすぎない描写が好きです。本当にお菓子が好きで美味しいものが好きで食が身体の資本だとしっかり理解していて、色々創意工夫をこらすのが楽しくて仕方ないんだなー。と伝わってくる感じが読んでいて心地よい。私もこんなに上手にはとても作れないけどお菓子大好き人間なので思い切り共感できてたのしい!

主にアルティリエの可愛さ、お姫様生活にふんわり和めるおっとりした雰囲気の少女小説ではあるのですが、かっちり隙なく作りこまれたダーティニアという国の成り立ち、王家と貴族の血と愛憎絡み合う複雑な人間関係、何重にもはりめぐらされた陰謀の描写がとにかくすごいです。王宮陰謀もの少女小説が好きな方にはとてもおすすめです。
むしろそれ以外の要素が徹底的にシリアスだからこそ、シンデレラなきらきら豪華なお姫様生活の描写を、私みたいな若干ひねくれた読者でも素直にときめいて楽しめるのかも。

アルティリエ姫は絶世の美少女で王太子妃という最高位の地位で、かつ王家と貴族の複雑な事情が絡み合い国いちばん失われてはいけない至高の立場の女の子で、そんなお姫様に転生したらさぞかし甘い砂糖菓子のような少女小説になると思いきや、それゆえ常に命を狙われプレッシャーも半端なく、読んでいて直接的な甘さはあんまり感じない。
むしろかつて人形姫と呼ばれるまでに心を閉ざしていったアルティリエのことを思うと切なくて、胸がきゅっとします。
かつての寂しい、けれど真面目で勉強家で婚約者のナディル殿下を慕っていたアルティリエのことを、麻耶が自分の中に残るものをひとつひとつ丁寧にたどってゆく過程が、良かったです。
状況を冷静に判断しやってはいけないと言われたことはけしてやらない、色々わきまえたうえで自分の信念を持って振舞う33歳の精神を持った麻耶。
彼女の堅実さと経験に裏打ちされた落ち着きとすこやかな精神(そしてお菓子つくりへの情熱)が、なんかうまく言えないんですけど、読んでいてすごく好きです。
恋愛経験はほとんどゼロでその手のことには全然疎いところも可愛い!

彼女の年上婚約者のナディル殿下も、初対面の印象はうすら寒い笑顔を浮かべる完全無欠な美貌の君でしたが、生来優しさや愛情をちゃんと持っている人で、彼の部下や兄弟たちごく一部がそれをちゃんとわかって慕っている感じで。
そして、彼のそういう部分が、まっすぐに関わってきてくれるアルティリエを大切な存在とみなしてゆくことでだんだん色づき見えてくるのが、ああ、なんだかすごくいいなあ。

アルティリエとナディルが、少しずつ心通わせてお茶を一緒にしたりちょっとした城下町デートに繰り出したり、ふたりの距離感が微笑ましくてほっこりして好きでした。年の差カップル美味しい。
一巻目の、お庭の薔薇で言葉に出さずに気持ちを共有し合っていた場面が、なんだかとっても好きです。
意外と過保護で大人げないナディル殿下にときめきます。いつも年齢不相応に落ち着き払っているのにナディル殿下の前でだけ照れたりもだもだしたりするアルティリエも可愛いのなんの。
ふたりとも素材が最高級なのでふたり仲良しでいる姿はそれだけで絵になりいっそうときめきます。少女小説万歳。
アルティリエがなにぶん十二歳でロマンス的な要素はほぼ生まれようがないのですが、そこもいい!(笑)
アルティリエの肉体が幼い分、精神で愛し合っているといえばいいのか。究極の純愛ですよね。
お互いの身分と立場上、結婚相手を絶対に変えることのできないふたりが、こうして自然にお互いを唯一無二の伴侶という関係にたどり着けそうなのが、奇跡のような幸運なんだよなあと、読んでいて何とも言えないあったかい気持ちになりふたりを自然に祝福したくなってくるのでした。

アルティリエの侍女チームやナディル殿下の部下チーム、弟たちも、それぞれいい味出してます。
優秀すぎるほどに優秀な腹心の侍女リリア、頼りになります!彼女のつながりは……そっちか!わー、色々な意味で最強だな……。
読んでいくごとに侍女のひとりひとりにも個性が出てくるのがいいな。働く女性としての視点を持った麻耶ならではの、彼女たちの姿への分析が楽しいのか。
料理好きのアルフレート殿下とアルティリエが今後一緒に料理を作ったりなんて展開になるのかしら。
フィル・リンとシオン猊下がお気に入りキャラでした。いちばんはもちろんリリアですけどね!
ナディア王女殿下も可愛らしい方で好きです。
(これはWebの続きも読んでの感想ですが)ふたりの親世代も、今のふたりには正直枷にしかなってない気がばしばしするんですが、ただただ、大切な人を守りたいと願う人間だったんだなあと……。ユーリア妃殿下も王様も嫌えない。アルティリエの父親もね。
もう、今生きているアルティリエとナディルが幸せであるなら、いいのかなあと……。
エルゼヴェトの異母兄弟たちも、アルティリエの命を直接救ってくれたわけだし、全体的にむしろ被害者な感じがするので、今後美味い具合に進むといいなと思ってます。

Webの方の続きは全然これからが本番という感じがします。続きを読んでいくのがすごく楽しみ!
書籍版の続きも楽しみです。出ますよね。ね!
あとWebの方の番外編の、エルゼヴェトのお城出身の菓子職人の女の子のお話が、すごく好きでした。彼女視点でほんのり見えた未来が幸せそうで、ああ、本当に良かった。
ナディル殿下視点のお芋のタルトのお話もほんのり甘くて幸せ気分でした。

人間関係や設定がかなり複雑でお話としては全体的に大人しめで、読む人を若干選ぶお話かなあという気はしますが、私はとても好きです。
最初から心つかまれたというより、少しずつ読んでいくごとに、じわじわはまっていったというか。
Web版の続きを途中でやめられず全部読み切ってしまうほどに最終的にははまりました。
一度この世界に馴染むと、私は読んでいてすごく心安らぎます。安心して少女小説のきらきら感にときめける。麻耶とアルティリエの精神の健やかさとかわいらしさがよいのかな。

挿絵も華がある可愛らしさで雰囲気あってます。
あと書籍版は家系図と表紙カバー裏の各国の地図がとてもありがたいですね!


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ビーズログ文庫

タグ: 汐邑雛 

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