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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『傍観者の恋』ナツ 




レイチェルは、病弱な大親友アリシアのそばにいるために、そして何より片想いの相手でアリシアの弟・ノアと別れたくないために、ノアにかりそめの結婚を持ちかける。ノアが姉のアリシアに禁断の想いを寄せていると知りながら。
報われない恋心と罪悪感に苦しみながらも二人のそばにいられて幸せなレイチェルだったが、次第に変化していくノアの態度と言葉、幸せに笑いながらも確実に弱っていくアリシアに、レイチェルの心は乱れ——。

小説家になろうさんの書籍化作品。
ナツさんの作品は『ナタリア姫と忠実な騎士』『リセアネ姫と亡国の侍女』など何作かを読ませていただいていてとても好きで、この『傍観者の恋』もずっと気になっていたお話だったところに、書籍化の情報が。
しかもイラストあきさんじゃないですか!
改めてあらすじを読んでみるとたいそう心惹かれる感じで、そして実際に目にしたあきさんの表紙イラストがあまりに美しく、この組み合わせは、やっぱり読むしかない。

実際に読んでみて、期待以上にすごくすごくステキなお話でしたー!!!
書籍を大切に大切に最後まで読んで、ネット版も一通り読んでみて、そして書籍版をもう一度読み返して、ずっと浸っていました。
落ち着いて品のある文章と作品世界がまず良いです。
異世界ファンタジーですが不思議要素は全くなく、どこかヴィクトリア朝っぽいアッパーミドルの階級の世界のお話と言うか。
私は読んでいて大好きな『赤毛のアン』シリーズの世界を重ね合わせていました。
表紙イラストのイメージもあるのかもしれませんが、どこかセピア色がかった、懐かしくてあたたかい作品世界の雰囲気が、とても好きだなと思いました。

じれったいすれ違いの恋、契約(年の差)結婚、そして女の子の友情もの、私好みの要素がぎゅぎゅっと詰まっていて、さすがナツさん!と読んでいて何度もうなずいてしまいました(笑)。
なにより女の子の友情ものですよ!私、『リセアネ姫と亡国の侍女』のダブルヒロインの友情がなにより大好きだったんですよー!!(力説)そんな私が、かたい絆で結ばれたレイチェルとアリシアのふたりを、気にいらないわけがない!!
ほわほわ甘く幸せなばかりのお話ではなく、胸を切られるような切ない展開もあり、読んでいて辛くて何度も涙がこぼれそうになるのですが、その切なさもすべて内包した大きな幸福感がひたひたと胸に押し寄せるラストが、本当に良かったです。


ここからはちょっとネタバレありの感想を。


ヒロインでお話の語り手のレイチェルが、読み込むごとに心優しく素敵な女の子で、ノアとアリシアを心から愛し大事にしていて、彼女が偽りの生活に苦しみ悩んでいる様が辛くて辛くて、もう。
そして偽りの生活に苦しみ報われない恋をしているのは、ノアもまた同じという。
なんだかこう書いていると辛いばかりのお話にも思えるのですが、アリシアとレイチェルとノアが三人で暮らしている様は、なんというか、まぶしくて優しい光で満ちていて、お互いがお互いを心からいとおしみ大切にし合って生活している様も心の底から真実で。
読んでいる私もきれいなもので心を満たされるような気持ちになれました。
もちろん嫉妬もするし暗い感情も抱くのですが、それでも暗い気持ちを自分の心の内に秘めて、実際には相手の幸せを思って行動するレイチェルが、尊いです。(まあそれがさらなるすれ違いの要因になってゆくのはもどかしいのですが……。)
レイチェルやノアの場合、いちばん憎むのは、醜い気持ちを抱く自分自身なので。もう本当にそんなに自分を痛めつけなくていいから……!と読んでいて何度思ったことか。

アリシアはレイチェルとノアが愛し崇拝するように美しく優しく穢れをしらぬ完璧な天使だけれど、誰より天使なのはレイチェルだと、私は思いますよね。なんというかアリシアとはまた違うタイプの、生身の普通の女の子としての、奇跡のような心根の美しさの持ち主。
レイチェルの一人称からはなかなか見えてこないけれど、読みこむうちに、アリシアとノアの姉弟が二人とも、世界で一番レイチェル大好き!!になった理由がよーく分かってくるというか。
あきさんのイラストのレイチェルが本当にいいですよね。そばかすの散った顔立ちの素朴な愛らしさよ。
湖遊びに出かけた先で不甲斐ない弟にしっかりしてよ!とたしなめるアリシアの一連の台詞がとても好きだなあ。
私ももう本当にノア、しっかりしてくれー!!と思いながら読んでいたので、アリシアはよく言ってくれました。
ノアも優しくて穏やかな美貌の理想の王子様で、私好みの大好きなヒーローだったんですけれどね。年下なのを気にして彼女を守ろうと必死に頑張る姿も格好良かったし。ただやっぱり私はレイチェルの味方でレイチェルの立場で読んでしまうので、ノア、もうすこししっかり……(以下略)

アリシアが他界し離婚しようとするノアのことを案じてやせた身でふらふら行動に起こすレイチェルはもう見ていられなかったけれど、雨降って地固まったようで、吹っ切れたノアとようやく心通じ合わせられて、本当に良かったです。
ノア視点でのエピソードの、彼の気持ちの変化の様がまたいい。姉に思慕を抱いていた彼が、共に暮らしレイチェルの優しい心根に接するうちに、しだいにレイチェルをひとりの女性として愛するようになってゆく様が、とても自然に書かれていて、ああ、なんだかとても素敵です。
アリシアのことを「姉さん」と呼んだノアとそれを受け止めたアリシアの二人の場面も好きでした。
(もっともノアは自覚する前からレイチェルのことを意識していたのだと思いますけれどね。ブライアンのことを初期から敵視しているし、レイチェルを悪く言う友人はあっさり遠ざけるし、いろいろ)
後半になってくると、ノア、レイチェルのこともう好きすぎだよね……といっそ気の毒になってくるくらいでしたが。これで想いが通じていないのだからもどかしいったらありません。

ナツさんのお話で私が好きな要素のひとつが兄弟姉妹愛、家族愛なのですが、やっぱりこの作品でも。
特にいい味出していたのはオースティンでした。レイチェルとノアをいじりつついじめつつ、他人が二人にちょっかいを出すときっちり制裁を加えるとか、最高なお兄ちゃんじゃないですか……(笑)。マリアン嬢の件のオースティンのやり方は鮮やかすぎました。
ふたりが一番つらい時にあえて厳しいことを言ってたきつける役目を買って出てくれるのもいいですね。
レイモンドとオースティンとノアの三兄弟のお買い物風景、さぞかしうるわしいんだろうなあ。想像するだけでうっとり。
レイチェルとそのお父さんのふたり家族のあたたかなきずなも良かったです。
あとアビーとトマスの忠義者使用人夫婦も好きだったし(やっぱり奥様命になりますよね、それは)、マリアン嬢もなんだかんだいいひとだったし、ノアを大人の余裕でからかっていたブライアンも茶目っ気があり格好良くって好きでした。(イラストが格好いい!)

本編がシリアスだった分、後日談で甘々エピソードを補充できて、幸せでした。ふふふ。
でもあれが自分たちにとっての新婚旅行だったから!というのは譲らないレイチェルがいて、やっぱりレイチェルいいなと思いました。
ラストのアリシアの手紙もとても良かった。本当に、「手紙って素敵ね。声は記憶から薄れていくけど、文字は残っていくのだもの」(314頁)
「お茶のほしい人はだあれ?」とレイチェルが微笑んでおずおずと手をあげるアリシアの二人の姿が、目を閉じれば思い浮かぶような。

あきさんの挿絵がまた秀逸なのです。単行本サイズなので美しいイラストが大きなサイズで堪能できてさらに眼福。
いちばん最初の、ブライアンに敵意を燃やすノアと必死に間に入っているレイチェルの困り笑いの表情と、あといちばん最後の、ノアの告白をいっぱいに目を見開いて聞き入っているレイチェルの表情、この二枚が特に私のお気に入りでした。
あとドレスや髪形や各種装飾品の細やかな描写がさすがお見事。
表紙イラストの三人、あとがきを読んでいて、そうか、これは本来ならありえない幸せなショットなのか……と改めて見返すと、またじんとくるものがありました。

ウェブ版のお話も少し展開が違ったり後日談エピソードがあったり、こちらも楽しませていただきました。

正統派少女小説、じれじれ両片思い、女の子の友情ものがお好きな方にはとてもおすすめ♪
これはふだんネット小説を読まれない方にもおすすめしたいです。

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カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

タグ: ナツ 

この記事に対するコメント

同感です。

こんにちは、おむらです。感想拝読しました~ほんとにおっしゃるとおりで(^^ 女子好き+あきさんのイラストでもう満足度かんぺき以上です!
今後もこういう作品に出会いたいものです~。

URL | psycheN #mQop/nM.
2017/04/02 21:07 * 編集 *

Re: 同感です。

>おむらさん
コメントありがとうございます。

わーい、お久しぶりですー!!(と言いつつブログの方はずっと読ませていただいておりましたが……。)
ほんとうに、こういう物語を私は読みたかったのです!と膝を打つ感じで、大満足でした。
そうそう、女の子好きにはたまらなかったです(笑)。それでいて正統派ロマンスもしっかり楽しめるところも。

あと、そちらのブログの方でご感想書かれている『オランダ坂の洋館カフェ』今私も読んでいるのですが、私もこの作品すごく好きです♪

URL | ゆり #SvKcs0as
2017/04/08 18:11 * 編集 *

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