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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『調香師レオナール・ヴェイユの香彩ノート』小瀬木 麻美 




調香師レオナール・ヴェイユは、若くして世界的大ヒットとなる香水を開発した天才的調香師。
その後は依頼者だけのための香を開発する、謎の多いプライベート調香師になっているという。
月見里(やまなし)瑞希は病床の母の願いのため、彼に依頼状を出すことに。
長野のアトリエへ導かれた瑞希は、浮世離れした美貌の青年レオナールと共に、亡き父が遺した絵画の謎とそこに込められた美しい愛情を解き明かしてゆく——。


パステルカラーの美しい表紙イラストが目にとまり、あらすじにも心惹かれ、手に取った一冊。
小瀬木麻美さんは、そうか、以前読んだ『デアラピス』の作家さんでしたか。

世界や時間をまたいでつむがれる、香水や薔薇や絵画はじめ芸術品、それらに込められた人々の愛情をたどりゆく物語。
描かれているモチーフがどれも美しくて品があってロマンティックで、読んでいてうっとりと雰囲気に浸れる物語でした。
とくに品種も様々の薔薇をはじめとしたいくつもの花々。むせかえるような薔薇の色や香りの描写や、どこまでも深く豊かに広がるイメージに、読んでいて圧倒されました。
読んでいると私の心までもが美しく豊かなもので満たされてゆくような。
なんというか基本上流階級の世界の物語で、せっぱつまったせかせかしている感じがなく、安心して美しい物語の世界に身をゆだねられる、というのが、良かった。海外の人が多いからか、良い意味で日本の常識にあまり囚われていない人が多いからか。読んでいて嫌な感じは全然しない。
あと作中に出てくる食べ物が何だかどれもとっても美味しそう!(重要)美味しいものは身体を整え心を豊かにしますよね。

謎めいた調香師の青年・レオナールの所作を、ヒロインの瑞希と共にどきどきしながら辿ってゆくのも、楽しかったです。
物腰柔らかな完璧な紳士で美しく賢くお金持ちで、スイーツに目がなかったり時々子供みたいな面も持っているレオ。
瑞希に対してはいつだって優しくて(多分他の人に対してはもっとクールなのだろうと思われる)、さりげないアプローチをかけているレオの態度に、ときめいて仕方がなかったです。
彼の香を色ととらえる感覚はなかなか複雑だけれど、その説明の描写も美しい花や香りの描写と連続しているような、読んでいて意味が完全に分かっているかどうかは置いておいて、ロマンティックで素敵だな。
レオの絵に瑞希がつかの間トリップしたことでふたりが絵の世界を共有したあの場面が美しくて良いです。あの少女の正体はいかに。
瑞希のレオと対になる能力といい、運命的な二人。
瑞希さん、彼女の苗字の月見里(やまなし)という珍しい響きにひかれました。

なんといってもふたりが瑞希の母の依頼で瑞希の亡き父の絵画の謎をたどってゆく前半パート『ローズ』が、とても好みでした。
若かりし日の景子さんと瑞穂さんがイタリアや日本で周囲の人たちにいかに慕われていたか、瑞穂さんが景子さんのことをどれだけ愛し真摯に将来を思っていたか、レオと瑞希が絵のモチーフを解き明かしてゆくごとに、そういうのがするするほどけるように分かってきて、読んでいてなんだか胸があつくなり震えました。
紅茶の薔薇なんてあるのですねえ。素敵。
景子さんに瑞穂さんの愛がきちんと届けられて、本当に良かったです。
景子さんという女性の凛とした生き様、母として瑞希を養い愛情深く育て上げてきた生き様にも、心惹かれました。まさに薔薇のイメージです。
祖父母との和解も嬉しかったです。指輪にじんわりときました。
最初に出てきた長野のオーベルジュの裕奈さんと春人さんの夫婦、それぞれが良い方でレオともよき関係を築き上げていて、好感が持てました。プロバンス風のコースがどれも素材の良さと裕奈さんの料理の腕の良さが伝わってきて、ああ、うらやましい、私も一度でいいからこんなに素敵なお料理をいただいてみたい。
鎌倉のお菓子屋さんの桜ゼリーも、なんだかこの物語の雰囲気にぴったりで、素敵です。おいしそう。レオの衝動買いにはびっくり(笑)。
南さんもすごくいいひとだな~。あまり突っ込んで書かれてはいないけれど母娘とあたたかなよき時間を共有してきたのだろうな、と思わせる雰囲気が確かにあって。
電話をめぐる瑞希とレオのちょっとした駆け引き?と恋心にきゅんときました。

後半パートの『ジャスミン』は、舞台を瑞希の留学先・ミラノにうつしてはじまりました。
「リナシェンテ」という百貨店の名前の響きがまず美しくてうっとり。
あまりにも分かりやすくレオが瑞希を追っかけてくるので笑っちゃいました。にこにこさりげないけれど何気に強引なレオのアプローチがときめきます。それでいて瑞希が引け目を感じない際もちゃんと考えているあたりが策士。
瑞希の下宿先の家庭料理もおいしそう……。そしてレオと瑞希がランチしたビストロのムース・オー・ショコラに心惹かれて仕方がありません。確かに、これだけのためにフランスに行きたくなっちゃう(笑)。
ジャスミン、茉莉花という漢字で書き表すと中学生の頃知ってから、ずっと好きでした。ストレートにジャスミンがモチーフになった恋と家族のエピソードになっていてこれまた好みでした。エジプトの歴史や伝承を紐解いてゆくのもなかなかなくて興味深い。
彰君、日本の男子高校生とは思えない世慣れた感じの子だなあ……。ここでもスイーツのおいしそうなこと。
大野夫妻の恋の始まりのエピソードがロマンティックで素敵だなと思ったし、色々あっても周囲の人たちの介入を経てあのレオの香でおさまった感じ。良かったです。百合さんの香がアクセントというのが良い。
大学の先生が出てくるからなのか、森晶麿さんの『黒猫シリーズ』と似たような雰囲気があるなあ、とちょっと重ね合わせてみたり。(香水も美学講義の対象になりそうですし。あとヒロインの瑞希さんと付き人がなんかイメージ的に似ている。個性的なヒーローに寄り添いほんのり色づかせる透明感がある芯の強い女性というか。)

香水は恥ずかしながらこの歳になってもまるで未知のものなのですが、こんなにじっくり時間をかけて香りを味わってゆくものなのかと、感心してしまいました。
レオの仕事が流石、すごいな。と何もひねりのない感想しか出てこないのがあれですが。

レオの家族のこと、そしてレオと瑞希の関係の進展など、気になることも多く、続編がまたいつか読めたら、嬉しいな。
上品で芸術肌の正統派少女小説という風情のお話で、お花や香水やじれったいロマンスなどがお好きな方、おすすめです♪


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 小瀬木麻美 

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